12/フィニの帽子

その日、天気が良いのでマリアはファントムハイヴ邸のローズガーデンで久しぶりに絵を描いて居た。



絵を描くのは3年ぶり。



真っ赤な薔薇を慣れない手つきでキャンパスに描く。









「うわ〜ん」



フィニがそばで泣いている。




「どうしたの?」


「帽子が木の枝に引っかかっちゃったんです」





庭にある大きな木を見上げると、麦わら帽子が引っかかっている。




「坊ちゃんにいただいた大事な帽子なのに」


「そうなの?私が取ってあげる」






ハイヒールを抜くと器用に木に登るマリア。


「セバスチャンさ〜ん、坊ちゃん!」




フィニが泣きながらセバスチャンとシエルの元へやってきた。




「マリアさんが…」

「姉さんがどうした?」









セバスチャンとシエルが外へ出ると、フィニに言われたとおり大きな木の頂上にマリアがしがみついていた。





「あとちょっと…」





「姉さんやめろ!今すぐ降りて…」




マリアが手を伸ばすと帽子に手が届くが、マリアが乗っていた枝がボキッと折れてしまう。


マリアは木から落ちる。






木から落ちたマリアをセバスチャンが絶妙なタイミングで受け止めた。





マリアはセバスチャンに抱きかかえられている。





目が合うマリアとセバスチャン。




「全く…マリア様は無茶ばかり致しますね…レディが木登りなど、はしたないですよ」



セバスチャンが呆れた顔で言う。



「うるさいわね!降ろして」





セバスチャンはマリアを降ろす。





「フィニ、はい」




フィニに帽子を被せるマリア。



「ありがとうございます!」



フィニは笑顔でお礼を言う。

マリアはローズガーデンへ戻る。



筆を持つが先程のセバスチャンと目が合った場面を思い出す。




セバスチャンの呆れた顔。





なんだかムッとする。
イライラする。





「何がはしたないよ!」




荒々しいタッチで絵の続きを描く。


シエルはふと、昔もマリアが木登りをし、落ちて、ヴィンセントに受け止められて、レイチェルに酷く叱られてマリアが家出をして屋敷中が大騒ぎになった事を思い出した。


「変わってないな、姉さんは」


シエルは嬉しかった。
昔と変わらない姉に。






数日後



「マリアお姉様〜」

エリザベスはマリアに抱きつく。


「リジー、元気だった?」


「元気よ!マリアお姉様は?」


「私も元気よ」




マリアは微笑む。





「マリア、元気そうで」



フランシスがやってきた。



「フランシス叔母様も、今日は来て下さってありがとう」






ファントムハイヴ邸にて、マリアが帰宅したのを祝うパーティーが開かれた。


「いらっしゃいませ、侯爵夫人、エリザベス様」

「いやら執事!なんだそのだらしない髪型は!」


フランシスに髪を引っ張られるセバスチャン。






それを見てクスクス笑うマリア。






シエルとセバスチャンはフランシスに怒られ髪型をオールバックにする。





「クスクス…フランシス叔母様は、だらしない髪型は嫌いですものね」






笑いながらセバスチャンを見るマリア。








一瞬、セバスチャンとマリアの目が合う。