「じゃあ行ってくるわね」
「姉さん、気をつけるんだぞ」
「行ってらっしゃいませ、マリア様」
「セバスちゃん!アタシにも行ってらっしゃいを」
「グレルさん、マリア様をよろしくお願い致します」
一礼するセバスチャン。
馬車に乗るマリアとグレル。
夜、ファントムハイヴ邸へ帰宅するマリア。
「遅かったじゃないか。姉さん、どこまで行ってたんだ?」
「内緒」
笑顔のマリア。
次の日の朝
「えー!グレル、行けなくなったの?」
受話器を持って落ち込むマリア。
「シエル、たまには一人で出かけてもいいでしょ?」
「危ないからダメだ。セバスチャン、お前、姉さんと行って来い」
目が合うセバスチャンとマリア。
「御意」
セバスチャンとマリアは二人で出かける事になった。
馬車の中の二人。
「マリア様、どちらへ行かれるのですか?」
「秘密の場所よ」
馬車は駅へ着く。
列車を乗り継いで遠い街へ
入り組んだ道をしばらく歩くと一つの森があった。
「ここよ」
二人は森へ入る。
青々と茂った木々や泉がありとても美しい。
泉は太陽に反射し、キラキラ輝いて居る。
美しい花もたくさん咲いている。
水を手ですくうマリア。
ゴクリと飲み干す。
「いけませんマリア様」
「平気よ、こんなに澄んだ水ですもの」
ひょっこりリスや兎が出てくる。
「可愛いわ」
優しい笑顔でリスや兎を眺めているマリア。
それをじっと眺めて居るセバスチャン。
マリアの笑顔がなんとなく気になる。
「…ランチの時間ですね」
セバスチャンはそう言うといつの間にかサンドイッチやら紅茶を用意する。
レジャーシートに座り、サンドイッチを食べるマリア。
「…ありがとう…」
「いいえ」
小鳥の囀り、泉の音しかしない。
セバスチャンとマリアは見つめ合う。
「ここはね、私が小さい時に見つけた秘密の場所なのよ…」
「そうですか」
「…どんぐりや花をね、ここで見つけてシエルに持っていったの。お父様とお母様には怒られたっけな」
『いつもいつもマリアは一人で屋敷を飛び出して…心配したよ』
ヴィンセントとレイチェルはマリアを叱ったが、優しく抱き締めようといつもしていた。
ヴィンセントとレイチェルを思い出した。
「どうかされましたか?」
セバスチャンと喋って居ると、顔が暑くなる。
何なのかしら。
慌てて紅茶をすするマリア。
「大丈夫ですか?マリア様」
「大丈夫よっ!」
何故だろう、何故か恥ずかしい。
「寒くなってきました。お体に障ります。帰りましょう」
「えぇ」
道を歩いて列車に乗る。
「遅かったじゃないか!」
「遠くまで行ってたから」
その日の夜。
庭のベンチに座ってマリアは猫と遊んでいる。
するとセバスチャンがやってきた。
「夜風に当たるとお体が冷えますよ」
「ガウンを着ているから大丈夫よ」
猫はセバスチャンに飛びつく。
「セバスチャン?」
「はい」
「今日は…ありがとう」
「いいえ」
見つめ合う二人。
夜風がふわりとふいて月が二人を照らした。