“自分に正直になりなさい”
マダムレッドによく言われていた言葉だ。
私が素直になれないのを、マダムレッドは知っていたから。
「アンタって可愛いモノが好きなんでショ?」
グレルはそう言うと棚に置いてあったテディベアを手に取る。
「別に…好きじゃない」
「マダムレッドから聞いてるから全部知ってるのヨ、アタシ」
確かに私は本当はレースとかフリルとか可愛らしいものが大好き。
でもマダムレッドみたいな格好いいレディにもなりたい。
「私の…キャラに合わないじゃない」
「キャラとか関係ナイワ!さぁ、行きまショ!」
グレルに腕を掴まれる。
勢いよくロンドンの街へ走り出す。
洋品店へ行くとグレルはマリアに、レースがたっぷりあしらわれた真っ赤なワンピースを選ぶ。
靴屋へ行くと、真っ赤なストラップシューズを選ぶ。
雑貨屋で薔薇がついたカチューシャ。
全部グレルが買ってくれた。
二人はファントムハイヴ邸へ戻る。
「マリア、アンタ着替えなさいヨ」
さっきの可愛いワンピース。
「私これ似合わ…」
「いいから!靴はコレヨ」
「ハイヒールじゃないと落ち着かないわ」
真っ赤な大人っぽいスーツを真っ赤な可愛らしいワンピースに着替え、大人っぽいハイヒールは少女らしい可愛いストラップシューズに履き変えた。
「次はメイクネ」
グレルはマリアのメイク道具を取り出す。
「アンタにはこんな大人っぽいメイクまだ早いワ」
跳ね上げて描いて居たアイラインは綿棒で消される。
たっぷり塗ったアイシャドウも消され、つけまつげは外され、真っ赤なルージュもコットンで拭き取られる。
アイラインはなし、ベージュのアイシャドウにマスカラを少し塗り、リップはリップクリームを多少塗ったナチュラルメイクになったマリア。
「グレル、これってすっぴんみたいじゃない?!」
「アンタ位の年齢はこれ位でいいのヨ」
そう言うと薔薇のついたカチューシャをマリアの髪に飾るグレル。
大きな鏡にはいつもと違う私が映る。
「アンタ、こういうのが好きなんでショ?」
「…うん…」
無理矢理背伸びして大人びていたマリアは歳相応の可愛らしい少女になっていた。
「…」
鏡に映る自分をじっと眺めるマリア。
「マリア、“好き”になったら“好き”なのヨ。アタシだって天敵の悪魔のセバスちゃんが好きだもの…もちろん本命で一番はウィルだケド」
美容院に行きそびれて地毛に戻った亜麻色の髪に真っ赤な薔薇のカチューシャが映える。
「自分…らしく…」
マリアは言った。
その日のディナーの時、いつもと違うマリアの姿にセバスチャンもシエルも使用人達も驚いた。
「姉さん…」
「な、なに?」
緊張気味のマリア。
セバスチャンはイメージチェンジしたマリアを見つめていた。
汚れのない、美しくも可愛らしく高貴な魂…
私が気になるのは、魂だけでしょうか?
マリア様はとても魅力的です…
あの時の笑顔…目が奪われそうになります。