マリアは薔薇の刺繍をしていた。
自分の気持ちに気付いて以来、何だか気分が落ち着かない。
“好き”ってこんな気分なんだ…
それと同時にメイリンの顔が浮かぶ。
『マリア様はセバスチャンさんの事が好きですだ?』
『セバスチャンさん、今日もかっこよかったですだ』
私は嘘はつけない。
メイリンに正直に自分の気持ちを伝える事にした。
その日の夜。
マリアの部屋でマリアとメイリンはお茶をしておしゃべりしていた。
「マリア様?どうしたですだ?」
「え?」
「さっきから様子が変ですだよ…」
「あの…あのね…」
マリアは立ち上がって深く頭を下げる。
「ごめんなさい!」
メイリンは驚く。
「どうしたですだマリア様」
涙が零れそうになるマリア。
「メイリン…ごめんなさい…私…私ね…セバスチャンの事が…好き…なの…」
自分が全て悪いのに泣いてしまったら、メイリンに失礼だ。
そう思って涙を堪えていたが、涙が零れる。
「泣かないで下さいですだ。やっと言ってくれたですだ…」
全て分かっていたメイリンは優しく微笑んで、マリアの肩に触れた。
「メイリン…これからも私と仲良くしてくれる?」
「あたりまえですだよ」
「本当にごめんなさい…」
「マリア様は何も悪くないですだ。ワタシ、マリア様を応援するですだよ」
メイリンが去った後、マリアは大泣きていた。
マダムレッド…“好き”って辛いのね。
“好き”になると誰かを必ず傷つけてしまうのかしら…
コンコン
マリアの部屋の扉をノックする音。
マリアは涙を急いで拭く。
「はい」
セバスチャンが入って来た。
「失礼致します。灯りが見えましたので。もう遅…」
セバスチャンを見たら涙が止まらなくなった。
泣き出すマリアを見てセバスチャンは驚いた。
セバスチャンは手袋越しにマリアの涙を拭った。
「どうされましたか?マリア様…」
不思議と、彼女の涙の理由を知りたくなった。
マダムレッドのヴィンセントに向ける切ない笑顔を思い出しながら、心の中でマリアは叫んだ。
誰かを…犠牲にして成り立つ"好き"って何なのかしら…