ガシャン!
割れるティーカップ。
「申し訳ございません」
シエルに深く頭を下げるセバスチャン。
「どうした?お前らしくないぞ」
ここ数日間、セバスチャンの様子がおかしい。
普段は有り得ないミスをよくする。
今まで見た事がない。
姉さんもぼーっとしているし。
何なんだ。
ぼーっと外を眺めているマリア。
「…さん…」
ふっと我に返る。
「姉さん、大丈夫か?」
「…シエル、いつから居たの?」
「さっきから居たぞ」
姉さんもセバスチャンも何なんだ?
シエルはまだ二人には気付かない。
マリアの家庭教師の時間。
セバスチャンは普段通りマリアに勉強を教える。
マリアも一生懸命勉強する。
ペンを落としてしまうマリア。
ペンを拾おうとすると、偶然、二人の手と手が触れる。
「…ごめんなさい…」
「いえ…」
「今日の夜、猫ちゃんの所へ来て」
「かしこまりました」
悩んだ末にマリアは自分の気持ちに素直になることにした。
マダムレッドの言葉を思い出して。
メイリンの優しさを思い出して。
背中を押してくれたグレルを思い出して…
真夜中。
庭のベンチで猫と戯れるマリア。
しばらくするとセバスチャンが来る。
猫はセバスチャンに飛び付く。
「マリア様、夜風がお体に障りますよ」
「ガウンを着てるから大丈夫よ…」
いつものやりとり。
「…」
二人の間には沈黙が続く。
しばらくするとマリアは口を開けた。
「…セバスチャン…」
「どうなさいました?マリア様」
「好き」
「私、貴方の事が好きよ」
セバスチャンは目を点にして固まる。
シエルは真夜中に目が覚め、ふとカーテンをめくると庭を見るとマリアとセバスチャンが居た。
「何してるんだ?」
しばらくするとセバスチャンは
「申し訳ございませんが私は使用人。マリア様の気持ちにはお応えできません…」
そう言った。
「そうよね…今のは聞かなかった事にして……ごめんなさい…」
マリアは走ってその場を後にした。
ぽつんとセバスチャンが立って居た。
次の日の朝。
シエルはマリアの部屋を訪れる。
コンコン
「はい」
ドアを開けるとマリアはトランクに荷物をつめていた。
「姉さん、どうしたんだ?」
「しばらくタウンハウスに行くわ」
「なんで突然」
「私ね…セバスチャンの事好きになっちゃったの」
「姉さん?!突然何を言うんだ」
「驚くわよね。でもフラれちゃった」
マリアは悲しそうに笑う。
シエルの中で一瞬マダムレッドとマリア重なった。
「じゃあね、シエル」
マリアは馬車に飛び乗った。
馬車の中から外を眺めるマリア。
涙が零れる。
何でこんなに辛いんだろう。
期待してたのかな?
悪魔が人を好きになる筈ないじゃない…
タウンハウスに行ったら、勉強に集中しなきゃ。