29/悪魔の気持ち

タウンハウスに来てから一週間。



ソーマとトランプをするマリア。



「大丈夫か?マリア 」


「え?」


「ずっと元気がなさそうだからな…俺でよかったら話を聞く。兄として妹の力にならないとな」


「…ありがとう。ソーマ」


「マリア様、チャイをお持ち致しました」


「アグニ、ありがとう」






ソーマとアグニの優しさが心地よい。


「ソーマもアグニもありがとう」

優しく笑うマリア


シエルも二人の事は嫌いじゃない。寧ろ好きだと思うの。
だから、シエルと仲良くしてくれてありがとう。
面と向かっては恥ずかしくては言えないが、そう思ったマリア。





姉さんがタウンハウスへ行って一週間。



どんどんセバスチャンの様子がおかしくなる。




「セバスチャン、お前姉さんの事をどう思ってるんだ?正直に言え」


「…魅力的なお方ですね…」


「だったらなんで姉さんを傷つけた?」


「傷…つけた?」




悪魔に恋愛感情は理解できない。




「姉さんは傷ついたんだぞ!お前のせいで!」


「私の…せい…ですか?」






目を丸くするセバスチャン。






姉さんの悲しそうな笑顔が頭に浮かぶ。






マダムレッドの悲劇が重なる…


一時でいい。



きっと一時の恋愛感情。




ひとときの恋愛でいい。姉さんが笑ってくれるなら。






一番傷つかない方法…








ファントムハイヴに居る限り、姉さんは危険な目に遭う確率が高い。
でもセバスチャンが一緒なら…







「命令だ、姉さんの傍に居てくれ」


"居てやれ"ではなく"居てくれ"
命令ではなく頼みだった。



僕が姉さんにできる事







勉強しようとするが頭に入らないマリア。


机に伏せる。






今頃セバスチャンは何してるのかしら…





そんな事を考えているうちに眠りについてしまうマリア。










コンコン…





目の前の窓ガラスを叩く音で目が覚めた。



「誰?」



眠い目を擦ると窓ガラスにセバスチャンが映る。





「セバスチャン!」

窓を開けてセバスチャンに近付くと抱きかかえられた。



ふわりと浮く体。




「なにっ!」



「一緒に来て下さい」





真夜中、屋根から屋根へ飛び移り空を飛んで空をめがける。







とても高い高い時計台に付く。





とても月に近い。





好きな人の顔が月に照らされてよく見える。







「何なの?」

「…目を閉じて下さい、マリア様」



セバスチャンに言われた通り目を閉じるマリア。





冷たい空気か漂い、黒い羽が宙を舞う。






「目を開けて下さい」








目を開けると






本当の姿のセバスチャンが目の前に居た。





カッ…



歩みよるヒールの音。




「…これが、私の本当の姿で」


「アンダーテイカーの本で見た通りの悪魔ね!」



マリアは目をキラキラ輝かせ、人差し指でセバスチャンに触れた。

マリアの反応に驚くセバスチャン。



「ガッカリされないのですか?」


「えぇ。だって悪魔ですもの」



セバスチャンはマリアの手を取る。




「マリア様、私はたくさんの罪を犯して来ました。この汚れた私にマリアのようなお方は不釣り合いです」


「シエルの命令?同情なんかいらないわ」


「いえ、違います」


「じゃあ何?」


「私の気持ちです」


「貴方の気持ち?」


「私は嘘を吐きませんよ。…私はマリア様の事が気になります。マリア様に興味もあります」


「本当?」


「本当です」







スッといつもの姿に戻るセバスチャン。





「こんな私でよいのでしたら…マリア様のお傍に…」



正直、マリアに興味はあったが、恋愛感情などない悪魔は映画や小説で見た台詞を言うのが精一杯だった。





月が紅茶色の瞳を照らした。




強い風が吹く。