37/許可

「おはようございます」
セバスチャンがマリアの部屋に入ってきた。

眠そうな目を擦るマリア。

「おはよ…」

紅茶を注ぎ、薔薇の模様が描かれたティーカップをセバスチャンはマリアに差し出す。

「ストロベリーローズ」


「左様でございます」


ストロベリーローズの紅茶はマリアがとても気に入っておりセバスチャンが時々出してくれる。


紅茶を飲み干すマリア。


「美味しかったわ、ありがとう…さて、支度をしなくちゃね」

「メイリンをお呼び致します」



メイリンに身支度を手伝ってもらうマリア。

「マリアさん、今日のドレスも素敵ですだ!」
気合いの入った真っ赤なドレス。

「ありがとう」

「…マリアさん、今日は頑張って下さい、応援してるですだ!」

「メイリン!」

マリアとメイリンはよく夜な夜な話をしていて、セバスチャンからプロポーズされた事、近いうちにシエルに報告をする事を伝えていた。

マリアはメイリンを抱き締めた。


「本当にありがとうね」

「私は何もしてないですだよ、仕上げはセバスチャンさんだから呼んで来るですだ」

メイリンは笑いながら部屋を後にした。


「失礼致します」

セバスチャンが入って来る。


「本日の髪型は?」

「巻き髪にしてコームでまとめようかしらね…」

「御意」


マリアの亜麻色の絹糸のような長く美しい髪を優しく結うセバスチャン。

マリアはドレッサーの鏡の前でメイクをする。

淡いピンクのアイシャドウを瞼に乗せ、マスカラを塗り、ベージュのリップを筆に取る。


鏡越しにセバスチャンはマリアの顔をふと見る。


本当に美しくなったな、と思うのであった。


「何か変?」

「いえ、とても美しいですよ」

頬紅を塗りすぎたように顔が紅くなる。

「そ、それより!今日は大切な日なんだからねっ!」

「えぇ、分かっております。今日は坊っちゃんにご挨拶をする日。先程アーリーモーニングティーをお持ちした際にお話があるとお伝え致しましたよ」


「ありがとう」



緊張する。おそらく反対はしないはず。
少し不安な顔になってしまう。


「さぁ、朝食ですよ、マリア様」


不安な顔だったのかセバスチャンは優しくマリアをエスコートしてくれた。




『坊っちゃん』

『何だ?』

『本日、大切なお話がございます』

シエルは起きた時にセバスチャンに言われた言葉を思い出した。



「おはよう、シエル」

「おはようございます、姉さん」


何故か姉は執事にエスコートされて広間にやってきた。



「いただきまーす!」

上機嫌に朝食のパンとスープを頬張る姉の左手の薬指にはダイヤモンドの指輪が輝いている。


ー何で僕が動揺と緊張をしているんだー



「どうしたの?シエル、具合が悪いの?」

「いえ、大丈夫です姉さん」

「シエルどうしたの?そんな畏まって」

「いえ、何でも…ゲホッゲホッ」

シエルは紅茶をむせた。


「坊っちゃん!」「シエル!」

セバスチャンとマリアがシエルの元に駆け寄ってきた。


「何でもない」




昼過ぎ、シエルの仕事が一段落し、紅茶を飲みながら書類に目を通していた。


コンコン…
ガチャ


「失礼致します」


セバスチャンが一礼をする。

「よろしいですか?」

「あぁ」


セバスチャンに応接室に案内される。


セバスチャンが扉を開き、中に入ると





マリアがソファーに座って居た。




セバスチャンは紅茶の用意をする。


マリアとシエルの紅茶注ぐとマリアの隣に座る。

「失礼致します」


セバスチャンが座ると同時にマリアは物凄く不安そうな顔をし、セバスチャンの手を握る。


「大丈夫ですから、ね?」



今までには見た事のない優しい眼をしたセバスチャン。





少し間が開く。


セバスチャンは立ち上がる。


「坊っちゃん、マリア様と結婚させていただきたく思います」


そして、頭を深く下げる。



マリアも立ち上がる。


「シエル、お願い。私はセバスチャンじゃないと嫌なの」





「認める。ただし、セバスチャン、お前、姉さんを裏切るな。幸せにしろ!絶対だ!」

「もちろんです、マリア様を世界一幸せに致します」

「ありがとう、シエル!」


マリアはシエルに抱きついた。

「ファントムハイヴの血を引く姉さんはそばに居た方が安全だし、何より『セバスチャンじゃなきゃ死んでやる!』とか『認めてくれないならドルイット子爵か劉に嫁ぐ』、『駆け落ちする!』とかとんでもない事をやったりするからな…」


シエルは疲れた顔で言った。



「そんな駄々こねないわよ!」


セバスチャンがクスクス笑った。


「何よ!セバスチャンまで笑って!!」

「安易に想像できてしまいまして」

「何よ!」


マリアはセバスチャンの足を思い切り踏んだ。


「何ですか、先程まで緊張してあんな不安な顔でしたのに」

セバスチャンが意地悪な笑みを浮かべる。


「緊張なんかしてないわよ!」


マリアは顔を真っ赤にする。


二人の喧嘩が始まった。


シエルは呆れて頭を抱える。


「僕は部屋に戻る。あとは二人でやってくれ」



シエルは応接室をあとにした。



「セバスチャンのバカ!!シエルが呆れちゃった…」


セバスチャンはマリアを強く抱き締めた。



「良かったです、認めていただけて」



その言葉に安堵したのかマリアは今度は涙を流し入れ始めた。





「セバスチャン、二人で…ううん、みんなで幸せになろうね」


シエル
タナカ
バルド
フィニ
メイリン
スネーク
例の彼女


葬儀屋
グレル



そして今は亡き
ヴィンセント
レイチェル



マダムレッドの顔がマリアの中で浮かんでいた。