興味
激しくぶつかり合っている霊圧を感じながら、ついに始まった争いを見つめる。
死神の格好をした旅過の少年と六番隊隊長の戦い。
興味が無い訳ではないが、なんかこちらはこちらで深刻な様子が見て取れた。
「よぅし仕方ない!それじゃいっちょ、逃げるとしようか、浮竹!」
「お……」
京楽の声が聞こえて視線を向けると、彼は浮竹の肩を掴んでその場から消えてしまった。
自分は一体どうすればいいのか、と一瞬悩むが…
「……」
総隊長が三人を追っていったのを確認して、京楽たちの後を追うことにした。
「えっ、鈴村四席!?」
「んだあの瞬歩……速過ぎだろ…!?」
そんな会話がされていたとは知らずに。
―――
「結構離れたね」
「ああ」
京楽と浮竹がそこに着いたすぐ後、コウが目の前にたどり着く。
「……見失うとこだった」
「「!?」」
京楽の隣に立って睨み付けると、二人は目を見開いて驚いていた。
「鈴村…!?」
「コウちゃーん…駄目だろ?付いてきちゃ」
だってあのままあの場にいてもやる事ないし、置いてけぼりは嫌だったんだもん。
それが言葉にせずとも分かったのか、二人ともため息を吐いて苦笑う。二人の後ろでは、遅れてやってきた伊勢が膝を付いて息を整えていた。
「七緒ちゃんビ〜リ〜」
「た、隊長たちが早過ぎなんで……す!?な、何で鈴村四席まで居るんですか!?」
「……」
「知らないの〜?コウちゃんの瞬歩の腕はピカイチなんだよ〜」
「そ、そうではなく…………あっ」
伊勢の視線を追いかけた先にいたのは、既に到着して岩の上に座っていた総隊長だった。
「……さすが、お早いお着きで」
「昔から、逃げる悪餓鬼に巻かれたことは無いんじゃよ。来い、童(わっぱ)共。もう拳骨では済まさんぞ」
一歩ずつ近づいてくる総隊長。
初めて感じるその霊圧は、他の隊長とはまた違う……。なんと言うか、すごく重々しい。
実は、これに興味があって京楽たちに着いてきたんだよね。そんなこと言ったら、京楽に怒られるかな。
「京楽」
「ああ、わかってるよ」
そろそろ伊勢が危ない。
総隊長の霊圧、いや、これは威圧感かな。よく分からないけど、座り込んで息もだいぶ上がってるからそろそろ限界なのかも。
「大丈夫だ七緒ちゃん、しっかりして」
「はっ、はっ、はっ……」
ふわり、と総隊長との前に入った京楽が、伊勢を抱えて瞬歩で消えた。
戻ってきたのはほんの数秒後で、もう近くに彼女の気配はない。
「一度に随分と遠くまで行けるようになったもんじゃの」
「……どうも」
褒めてはいるけど、総隊長の威圧感はいまだ消えないまま。
でも思ったほど苦しくないからまだ大丈夫。
「ほらコウちゃんも早くここから離れようね。危ないから」
「やだ」
「……おいおい」
優しく微笑みながら言われたけど、スパっと断った。
総隊長もなんかこっち見てるみたいだけど、私は別に何ともないし。そんな心配することでもないと思う。
「お主……」
「?……はい」
突然話しかけられ、少しだけ身構えて答える。
それと同時に、隣にいた京楽が険しい表情で半歩前に出た。
「これだけの霊圧の中に居りながら、何故そのように平然としておる」
「……」
さっきの伊勢も、こんな感じだったんだろうか。まるで突き刺すような視線と霊圧を受け、少し眉を潜める。
でもまだ平気かも。京楽も前で庇ってくれてるし、ね。
「本当に平気なのかい?コウちゃん」
「うん、とりあえずは……」
総隊長から視線を離さず問い掛けてきた京楽。すごく心配そうに言うから、思わず苦笑してしまった。
別にそこまで心配しなくても大丈夫なのに。
「まあ良い。いつまで堪えられるか見物じゃのう」
一瞬だけ張り詰めた空気が和らぎ、優しげに微笑んだ総隊長。
何が言いたいんだろう、と奇怪な表情で見つめていたんだけど、
もう私に用はないのか、総隊長はまた京楽たちに視線を向けた。
「女に弱く振る舞いは軽薄じゃが、思慮深く誰よりも真実を見通すことに長けておった、春水」
「へぇ」
「なんだいその意外そうな顔は」
別に意外だなんて思ってない。
そうじゃなくて……
「身体は弱いが、勘考で人望厚く常に皆の中心であった、十四朗」
総隊長まで認めてるなんて、やっぱり二人とも凄かったんだな、って思っただけ。ていうか学院からの初めての隊長って……この二人、どんだけ長生きなの。
二人っていうか、総隊長も入れたら三人か……。
「自慢じゃった、我が子のように、信じとった……」
総隊長がいつも持ってる杖が光りだした。
まぁ、杖持ってる割には足腰しっかりしすぎだし、普通に予想はしてた。
あれが斬魄刀なんだろうな。なんて思いながら見ていたら、やっぱり杖の中から刀身が現れた。
「元柳斎、先生……」
「何も言うな。もはや問答は埒も無し」
総隊長の言葉って何か難しくて良くわかんないな……なんてその場に合わないことを考えてながら、風で顔にかかる髪がうっとうしくて耳に掛ける。
二人の霊圧も少しだけ上がり、そしてそれぞれ刀を握った。
「コウちゃん、やっぱり……」
「嫌」
「困ったねぇまったく」
「良いのか、京楽」
「まぁ、言い出したら聞かないからねぇこの子は」
視線は総隊長に向けたまま京楽はため息を吐く。浮竹も心配そうにしてるけど、嫌なものは嫌。
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