ロックガール、闘う

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デカブツはヨタヨタと歩きながらこちらを見ている。
手に握られた棍棒は、割れたパイプから溢れた水でびちょ濡れだ。

「なんだっけコイツ、図鑑で見た!」
「トロールよ…!でも、どうしてここにっ!?」

トロール。
そうだ、トロール!
知能は低いけど力持ちで、いや、暴力的!
そして知能が低いゆえ──何をするのか予想ができない!
確か魔法生物の図鑑にはそう書いてあった。

「ま、まずい!!」

トロールが再び棍棒を持ち上げた。
確実に狙いはあたしたちだ!!

どうしよう。
どうしよう!?
このままじゃあたしも、ハーマイオニーも無事では済まない!
どうする?こんなときは、どうする?!
考えろロックスター!考えることを放棄するということは、諦めだ!それはすなわち、死ぬってコト!

(あたしにできること、)

『エリンは盾の呪文を知っているかい?』

ふと、セド兄の姿が頭をよぎった。
そうだ、

(守りなら──!!!)

天高く掲げられた棍棒が、
あたしたち目掛けて振り下ろされたとき。
あたしは咄嗟に杖を構え、そして力いっぱい叫んだ。

(いちかばちか…お願い!)

「“プロテゴ”!!!」

あたしの友達に、手を出すんじゃない!

杖の先から透明な壁が生まれる。
振り下ろされた棍棒がその壁にぶつかり、そして跳ね返った。

(できた!!)

あたしもハーマイオニーも無傷だ。
盾の呪文、魔法の基礎が出来上がっていないのになんとかなったのは…血のおかげなのだろうか?だとしたらエーカー家万歳!
調子よすぎるけど!

と、喜べたのは実際3秒あったかないかぐらいである。今はそんな喜んでる場合じゃないってか!
あたしの盾で攻撃できなかったことによって、トロールが殺気を込めてあたしを睨んでいた。
や、やば…いよいよ怒らせた!

「エリン!!」
「ハーマイオニー!!」

灰色の巨体越しにハルと、ハリーとロンが見えた。えっ、なんでここに?!
もしかしてあたしたちを探しに?
聞きたいことは色々あるけどそんな余裕はまったくない。あとであとで!

「こっちに引きつけろ!」
「やーい、ウスノロ!」

ハリー、ロンが飛び散っていた蛇口やパイプを掴み、トロールに投げつける。
カツン、とパイプがぶつかったトロールは再び棍棒を振り上げたが、今度の目標は──

「ロン!!」
「ハリー!」

慌てて杖を構えるが、間に合わない!

(くっそぉ…!!!)

「プロテゴ!!」

さっきと同じように透明な壁がロンとハリーの頭上に展開される。
ガン!!と壁に弾かれた棍棒が宙を舞い、トロールの足元に落ちた。
プロテゴの出処はハルだった。ハルが両手で杖を構えている。

トロールは諦めていないのか、棍棒を拾おうとしたけど、それより先にハリーがトロールに飛びかかり、頭を押さえ込む。
その隙にハルがあたしとハーマイオニーの前に壁のように立ち塞がる。杖は構えたままだ。

「ロン!何か呪文を言って!」

トロールに振り回されながらもハリーが叫ぶ。
ロンが杖を構えた。

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

ロンの魔法を食らった棍棒がふたたび宙を舞う。
天井まで上がったかと思った瞬間、糸が切れたかのように落ちる。落下地点はトロールの頭──。
1秒経たない間にズシャン、と嫌な音がひとつ。
頭に棍棒を食らったトロールは目をまわし、よたよたとのたうち回ったあと、ドシャン!!ととても大きな音を立てて倒れた。
目標、沈黙。

「これ…死んだの?」
「いや、ノックアウトされただけだと思う…」

ハリーが恐る恐るトロールに近づき、様子を確認する。
死んではいないが、伸びていることは確かな様子。あー、一安心か…よかった…。
あたしはそっと胸を撫で下ろした。

「エリン…」
「ハ、ハル…」

急いでここまで来たのか、髪の毛やローブがよれよれ(ハリーとロンもだけどね!)。いつものしゃんとしたハルはそこにはいなかった。

「こ、…」

こ?

「この、バカッ!!!」
「ぎゃー!?」

ハンサム、お怒りである。
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