ロックガールの組分け
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大広間は、ここが魔法の世界だと体感するには充分すぎるくらいだった。なんかもう、キラキラしている。
先輩たちの眼差しも、天井の星空も。
「ろうそくが浮いてるよ〜おもしろーい!ほんとにほんとに魔法界なんだなー!」
「散々魔法のギターを弾いてるくせに…」
ハルがため息混じりにそう言っている間に、マクゴナガル先生が四本足のスツールの上につぎはぎだらけの帽子を置いた。なんだろうあの帽子、すっごいボロボロ!
すると なんと!そのボロボロな帽子が歌い出した。
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私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ暗だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツの組分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん!恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
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「ねえねえ!!帽子が歌ってんだけど!あたしもいいかな?!」
「良くない!」
ギターを取り出そうとしたらハルに手を掴まれた。ちぇっ。
まあ…この空気は歌う空気じゃないかぁ。
どうやら組分けはあの帽子を被るだけでいいらしい。
なーんだホントに簡単じゃん!やったぜ。
最初にハンナ、という女の子が名前を呼ばれ、椅子に座った。帽子を被ってから少しすると、帽子は高らかにこう言った。
「ハッフルパフ!」
大広間の右側から大きな拍手と歓声上がる。おお、こういう感じなのね!
ハンナはハッフルパフのテーブルにぱたぱたと駆けて行った。
同じようにしてあとの人たちもどんどん組分けされていく。
「エーカー・エリン!」
「おおっ?!」
ついにあたしが呼ばれた。
うひゃ〜!ちょっと緊張するかもしれない!心臓のBPMハンパな!
「行ってこい」
「うん」
ハルに背中を押され、あたしは帽子の元へ歩く。
あー、微妙に視線が刺さるなぁ!こりゃ新入生だけじゃなくて先輩たちにもさっきの騒ぎを見られていましたな!!アー!
ちくしょう次はあたしのギターと歌で注目を浴びてやる。
椅子に座ると帽子を被せられる。思ってたより大きいなこの帽子。
「やあ!君はエーカーの子だね」
「おー、そうですそうです。なんかうちの家有名っぽいですね?」
「護りのエーカー。魔法界では有名だ」
「へぇ〜…そうなんだ?」
「さて、君の寮だが… 」と帽子が言ったので、あたしは「レイブンクローは?」と聞いてみた。
「レイブンクロー。ウーム、それもいいだろう。だが君には勤勉さが足りないから苦労するぞ?」
「えぇー?!ダメ?」
「ダメではないが、他をオススメするね」
「そっかぁ。じゃあ…どの寮の人とも仲良くやれそうなところでお願いします!友達たくさん欲しいから!」
「ならばもう決まったも同然…君は---ハッフルパフ!」
帽子がそう叫ぶと、ハッフルパフから拍手と歓声。歓迎ムードだ、よかった。
「ありがとうございましたー!」
あたしは帽子を脱いでハッフルパフのテーブルと小走りする。ハルの方を見ると、ハルはこちらを見て笑っていた。よかったな、と口が動いた気がする。あたしはやったぜ!という思いを込めてウインクした。
シェリルさんと同じレイブンクローになれなかったのは少し残念だけど、どの寮とも上手くやれるところを選んでもらったはずだからきっと、大丈夫だろう。
あたしの次に呼ばれたのはハルだった。同じファミリーネームだもんね。
ハルは見事、シェリルさんと同じレイブンクローに決まった。
汽車の中で話していたことと同じ結果になったなぁ、と思った。ハルがレイブンクローで、あたしは違う寮。
「ハル、おめでとう!」
あたしはハッフルパフの席から、レイブンクローに向かうハルに大きな拍手を送った。ハルがこっちを見て笑った気がする。
「ねぇ、あなた彼と同じファミリーネームだけど兄弟なの?」
「ううん。あたしとハルは従兄妹だよ!」
「へえ、そうなの。私はハンナ・アボット。これからよろしくね!」
「あたしはエリン!こちらこそよろしく!」