「メシュティアリカ」

 ヴァンは憐憫と愛情をこめて妹の名を呼ぶ。

「兄さん!」

 部屋に閉じ込めた妹は「ここから出して!」と幾度目になるかわからぬ言葉を浴びせた。
 ヴァンはその都度ティアに自分を理解してもらおうと言葉を尽くし、リグレットと共に妹を説得していた。

 その日々は、今日をもって終わる。

 妹がルークに想いを寄せていることは知っていた。
 それを知りながら、今からヴァンはティアの心を引き裂くような言葉を口にする。

 おそらくティアは酷く傷つくだろう。しかし、何も問題ない。
 その悲しみは、やがて怒りへと転化して、ヴァンの思想に同調してくれるのだから。

「ルークとお前の仲間たちは、お前ではなく、お前のレプリカを選んだようだ」
「――え?」

 ティアの表情が凍りつく。
 うそ、と動揺を露にした言葉を呟いた。
 ヴァンは憐憫がこもった視線を妹に注ぐ。自分の言葉が真実だと思わせるように。

「嘘ではない。ルークは、お前の仲間たちは、お前のレプリカを選んだのだ」
「うそ、うそよ、そんなの、そんなの…っ私は絶対に信じないわ!」
「ティア、お前のレプリカはミリアという名を与えられて、ルークと仲睦まじくやっているようだ。どうもルークはミリアが好きなようだな」
「そんなの絶対うそよ! 私を動揺させようとしているんでしょう、兄さん! 私は、私は、絶対に兄さんの言葉を信じたりなんかしないわ!! みんなは、ルークは私を…」
「ティア」

 動揺を、猜疑心を、悲しみを、怒りへと転化させてしまえ。
 ――理由なら与えてやる。

「可哀想なメシュティアリカ」

 ティアは両手で顔を覆った。ヴァンは手を伸ばすと、小刻みに震える妹の身体をやさしく抱き締めた。自分がティアの味方であると、妹に信じ込ませるために。

「あのレプリカは、――ミリアはお前の居場所を奪ってしまった」

 抱き締めた妹の身体の震えが止まる。
 ハッとティアは息を詰めて、「あのレプリカが…」と憎しみに染まった声を吐き出す。

「ルークたちは騙されているのだ。お前が目を覚ましてやると良い」
「――そうね、そうだわ…ルークたちは騙されているのよ」

 私が目を覚ましてあげなくちゃ、とティアは呟いた。
 ミリアを憎んだティアは、ヴァンが何も言わずともミリアを殺害せんと行動するだろう。

 ヴァンをファブレ公爵家で殺害しかけたときのように。

 ティアは一度思い込むとすぐさま行動に出る。思いつめると特にそうだ。
 ヴァンに自分の性格を利用させているとも知らず、ティアは兄の言葉に踊らされる。ティアの中では、自分がいるはずの居場所を奪ったミリアは悪だと認識された。
 ミリアへの殺意を明確にする妹を抱き締めながら、ヴァンは愚かで愛おしい妹を哂っていた。




END.

テ ィ ア が 敵 に な っ た !

(1)ティアと戦う
(2)ミリアではなくティアを仲間に戻す 

どちらか選んでください。
ドSな選択肢だけど何故かこれを見てる皆さんは前者を選択すると思う私がいる。

2012.08.27 初出

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