ノエルが運転するアルビオールでルークとナタリアはバチカルに戻った。
ルークは王城前でナタリアと別れて、ファブレ公爵邸に足を踏み入れる。玄関に入るといつものようにメイド達がゆったりと頭を下げてルークを出迎えた。
執事長のラムダスが着替えをしてからルークに応接室に行くように告げる。そこでシュザンヌ達が待っているという話だった。使用人達の顔は珍しく強張っており、ルークは違和感を感じた。
いつもとは異なる固い雰囲気に、ルークは身を強張らせながら部屋に行く。着替えはベッドに置いてあった。白地に金の刺繍が施された堅苦しい衣装だ。ランバルディア勲章授与式に着ていた衣装に似ている。ルークがサッと腕を通すとメイドが次々に現れて髪を整えていく。アッシュのように前髪を撫で付けられワックスで固められ、首元にユリのような香水を吹きかけられた。
かしこまった衣装に困惑を覚えながら部屋を出て、庭と廊下を抜けて、玄関に戻り、応接室の前に立つ。ドアを守っていた白光騎士団の兵士が中にいるシュザンヌ達に声をかけ、入室の許可が下りたことを確認して、ルークは中に入る。
「アッシュ?」
応接室にいたのは、両親とアッシュの姿だった。
それに、見慣れない壮年の男性が数人いる。
アッシュは六神将の衣装を脱いで貴族用の衣装を纏っていた。黒地に金の刺繍が入った衣装だ。前髪も後に撫で付けているのは同じだが、後髪は珍しくゴムで纏めて胸元に垂らしている。ルークと揃いの衣装だった。アッシュが此処に居て、色違いの衣装を着ている。二重の意味で驚くルークをシュザンヌは穏やかな笑顔でアッシュの隣に座らせた。
「さて、ルークが来たので早速話を始めましょう」
シュザンヌはルークに見慣れない人達――貴族議会の重鎮達と挨拶をさせる。互いに挨拶したところでシュザンヌは本題に入った。
「先日、インゴベルト陛下が貴族議会により王位継承者決定権を失うこととなりました。これにより、王権制度は一時撤廃、次期国王の座は空欄となりました」
「な……!?」
声を挙げたのはアッシュだった。ファブレ公爵は無言で眉を顰めて、ことの深刻さを理解していないルークただ一人目を瞬く。
「どういうことですか、母上。ナタリアの夫が次期国王になるはずでは……」
「それは、ナタリアが真実、インゴベルト陛下の実子になった場合に限りです。ナタリアは残念ながらお兄様の血を継がず、その出自は市井。王位継承権を持つ資格はありません」
シュザンヌはきっぱりと告げる。アッシュは口を閉じた。
「ルークは王権制度の教育を受けてこなかったから、詳しく説明します。王権制度は、元々キムラスカのテリピヌシュ4世が確立した法典で生まれたものです。それまでは王位継承者を決める最終権利は貴族議会が握り、対立する貴族同士による継承権の分散で、王室は荒れていました。暗殺、毒殺、ありとあらゆる手段で王位継承権を持つ王族が命を落とすことになりました。この事態を憂いたテリピヌシュ国王陛下はテリピヌシュ法典を生み出し、この法典により貴族議会による継承権の分散を抑制することに成功したというわけです」
シュザンヌは渇いた口を紅茶で潤す。
「テリピヌシュ法典の内容は画期的なものでした。宮廷法、継承法が盛り込まれ、現代の王権制度の基礎を作り上げました。テリピヌシュ法典の継承法の内容ですが、――王位継承者第一位は原則国王の長男。長男に何かあれば次男、いなければ王室の直系の男子が王位を継ぐ。また、男子の後継者がいない場合は、王女と結婚した者が王位を継ぐ。と、書かれています」
「……だから、ナタリアの夫が次期国王になるって言ったのか」
アッシュの言動を理解したルークが頷く。シュザンヌも頷いた。
「そう、インゴベルト陛下には王子がいないから、ナタリア王女に王位継承権を与えられたことになっていますが、これは本来ナタリア自身が王位につくわけではない、王女の配偶者が王位につく資格を持つということです。だから、……インゴベルト陛下も、ファブレ公爵も、預言を重視して、お前をアクゼリュスに送れたのでしょう」
ナタリアの配偶者が王位の資格を持つなら、繁栄の預言の前では、王位継承権第三位のルークの存在はかすんだ。ルークの死を代償に、未来のキムラスカはナタリアとその夫の国王による繁栄の治世が続くと信じていたのだ。
アッシュもルークもぐっと黙り込んだ。決して納得できるものではないが、軽い扱いをされていた理由が理解できてしまったから。
アッシュは誘拐前に受けていた擬似超振動実験を思い出す。高位の王位継承権を持つ子供にするにしては無体な仕打ちの数々を認められるわけがなかった。あれがなければ、アッシュはヴァンの甘言に踊らされず、今とは違う未来があったはずなのだから。決して今の自分を卑下しているわけではないが、親元から離されて、その場所を奪われて、悲しみと苦しみの中で七年間をもがき生きた自分を憐れむ気持ちはあった。
ルークもそうだ。死の預言をヴァンから教えられて。国王からは濁した預言の内容しか教えられず、死地へ送らされた。自分の死を望む人物がいる。それだけでも、今まで温い環境で育ったルークにはショックだったのに、まさか叔父と父親が結託して、自分が死んで欲しいと思っていたなど到底受け入れられるものではない。あの頃のルークはヴァン以外自分の話を尊重してくれる者はおらず、孤立無援の状態で、死ぬかも知れない恐怖と立ち向かわなければならなかったのだから。
アッシュとルークは二人して黙り込む。
ナタリアと、その夫。二人の繁栄の未来を築き上げるために、二人の命は軽んじられたのだ。
「とても恐ろしく、嘆かわしいことです」
シュザンヌが話をその言葉で締めくくると、今度は貴族議会の者達が声をあげた。
「……預言が外れ、ナタリアが偽姫だと判明して良かったと我々は考えております。もし外れなかったら、キムラスカ王族の正当な血筋は途絶え、本来キムラスカ王室とは無関係の者が、王権制度を利用して王室を乗っ取っていたことでしょう。ナタリアが偽姫だと暴露したモースに感謝しなければなりません。……そのモースだとて、インゴベルト陛下が預言の通りに動かなければ、ナタリアが偽姫である事実を口にしなかったのかも知れませんが」
「私がモースの立場なら、ルーク様を亡き者にしてナタリアが王妃についてから、彼女を脅迫するための手段として偽姫の情報を最大限に活かすでしょうな」
背筋を冷やす未来を回避できたことを喜んだ。
「彼女が偽姫だと判明した際には、王位継承権は失われて然るべきものでした。ですが、インゴベルト陛下は彼女を王女として受け入れてしまった」
「あ……それは、俺がインゴベルト陛下に、」
ルークはナタリアを受け入れるよう、インゴベルトを説得した身だ。
「ルーク様のお言葉はお聞き致しました。親子として過ごした時間は変わらない。その言葉に問題はありません。問題なのは、王権制度を鑑みることなく、王女としてナタリアを受け入れたインゴベルト陛下にあります」
インゴベルト国王の批判とは恐れ多いが、それを許してしまったのは現国王だと皆が苦い顔をする。
「我々だとて、非情なことは言いません。ナタリアを王女ではなく個人として娘にするなら問題はなかった。だが、ナタリアはキムラスカ王国の王女として国家の会談に参席し、ランバルディア勲章授与式においては王位継承権第二位になったルーク様を見下ろしてました。彼女にその権利を許した事実こそが、インゴベルト陛下が王権制度を軽んじている証拠にほかなりません。キムラスカ王族の尊い血筋さえも軽んじているようにしか見えない。――貴族議会は、インゴベルト陛下の治世における王権制度を否定するしかありません」
ルークもアッシュも言葉を呑む。事態の大きさに呆然とするしかなかった。
シュザンヌは小さく溜息を吐いた。
「……ほんとうに、インゴベルト陛下が申し訳ないことをしました」
「シュザンヌ様のせいではありません」
「あれでも実の兄です。……長子を理由に簡単に国王になれてしまったことが、お兄様にとっての失敗だったのでしょう。ルーク、アッシュ。よくお聞き。貴族議会の者たちは、インゴベルト陛下の治世において王権制度を撤廃すると口にしています。つまり、次代の王になれば王権制度が戻る可能性があるということ。そして、血筋を尊ぶ貴族は、あなた達のどちらかを王にしようと考えています」
「……さすがですな、シュザンヌ様」
まいったように貴族議会の者たちは一様に笑う。
「ルーク様、アッシュ様、どちらが王になっても、もう一人はファブレ公爵を継ぐことになりましょう」
「……だが、待ってくれ。俺とこいつの間には大爆発現象が、」
「そうだ。それに俺は……レプリカだ」
「貴族議会は、ルーク様達の関係性を知った時にレプリカについて調べると同時に研究チームを立ち上げています。ルーク様は生まれは被験者と異なりますが、生殖能力などは被験者と変わらないと研究者達が太鼓判を押しています。ジェイド・バルフォア博士が告げた劣化というのも個人の差に収まるので、ルーク様が王位を継いでも問題ありません」
「研究チームは大爆発現象回避のために全力を尽くしてくれています。すでに解決の目処は立っているとのことなので、もう間もなく懸念は解消されるでしょう」
ルークとアッシュは二人して息を深く吐き出した。自分達が気にしていたことの問題を解決しようと、たくさんの人達がいつの間にか水面下で動いていた。有り難くて、これまで張り詰めていた緊張の糸がほどけていくようだった。
「……そうか。そうなのか」
特に、アッシュは。ルークと己どちらが生き残るのか、大爆発現象において殺されるのは被験者だとばかり思っていた。母の手下に捕まってファブレ公爵家に連れ戻されるまでは、いつ己の命が切れるかわからない不安から、ヴァンと早く決着をつけるべくエルドラントに特攻まで仕掛けようとしていたのだ。その不安が一気に解消して肩の荷が下りた。
「……王になるのは、アッシュが良いと思う。アクゼリュスにいた一万人の住民を殺した俺が王なんて、どう考えたって、無理だ」
「……それは俺への皮肉か?」
「は?」
「お前が一万人の住民を殺害しているなら、俺はどうなる? 六神将、鮮血のアッシュとして俺は七年間生きてきた。ヴァンの命令を受けて数多の人間を殺害してきたんだ。タルタロスで、お前も俺の蛮行を見てきただろう」
アッシュはルークに視線を向ける。ひたり、とアッシュの翡翠の眼に睨まれたルークはタルタロスの出来事を思い出す。血に染まった廊下、倒れるマルクト兵の姿。鼻に留まり続ける錆びた臭いに、次第に小さくなっていく剣戟と、そうして迎えた静謐。
その地獄を作り上げた一人が、自分だと、アッシュは自ら口にする。深い悔恨と共に。罪人が懺悔するかのような重々しい声の響きに、場は静まり返った。ルークとアッシュ。皆が二人の会話を見守る。と、同時に、彼等の眼はどちらが王に相応しいか見定めていた。
「けど、それは命令だったんだろう」
「……俺は、私欲で人を殺そうとしたことがある」
シュザンヌが厳しい眼を向けたが、アッシュは俯くことも顔を背くこともしなかった。
アッシュの脳裏に浮かんだのは、国境の砦でルークを襲い、ルークのフォンスロットを開けるために軍港をアリエッタに襲わせたことだった。私欲以外の何物でもない行動だ。アッシュは弁解することはなかった。
「……お前はヴァンが言うまま、アクゼリュスの住民を殺そうとして超振動を使ったのか?」
「ちがう! 俺は……俺が超振動を使ったのは、ヴァン師匠がアクゼリュスの障気を中和できるって言ったから……、俺が障気を吹き飛ばせば、住民も、……俺も! 助かると思ったんだ……! ヴァン師匠が、俺が障気を中和して英雄になれば、俺の死の預言を覆せるって。それで、ダアトに行こうって……」
ルークは両手で頭を押さえて俯いてしまう。一同の顔つきが険しく染まった。ルークがユリアの第六預言の全貌を知っていた。死の預言を教えて、怖がらせて、言い包めたのか。ルークを誘導して罪を犯させたヴァンに殺意が湧いた。
「……お前は、アクゼリュスの住民を救うために超振動を使ったんだな」
アッシュがルークの口から聞いた話を噛み締めるように言った。
ルークはハッと息を飲んで、小さく頷いた。
「俺は……お前が、ヴァンの言うまま、考えなしに超振動を使ったと思っていた。――タルタロスで初めて俺がお前を見たとき、お前は剣を持つ意味さえ知らず、人を殺していたから。だから……俺は、お前がそういう考えなしの人間だと思っていた」
ルークは歯を食いしばった。タルタロスで初めて人を殺した瞬間を思い出した。あの肉を断つ感触と、人が死んだときの形相を夢で何度も何度も反芻した。
ルークにとって、7年間の軟禁生活で覚えた剣術は暇つぶしでしかなかった。だから、チーグルの森で木刀から真剣に武器を変えても、それがどういう意味を持つのか、理解していなかった。人を殺すことになるなんて、想像さえ、していなかったのだ。
「……いや、アッシュの言うとおりだ。俺は……剣を持つことが、どういう意味を持つのか、わかっていなかった。考えなしだったんだ」
「アッシュ、ルークの教育は……」
「わかってます、母上。さっきのこいつの言葉を聞いて。こいつは、王権制度が何なのか、理解していなかった。……厳しい教育を受けたわけではないのでしょう。俺が剣術を習いはじめた頃も、母上は心配そうにしていましたね」
アッシュは懐かしむように言った。その言葉を受けて、シュザンヌもありし日の記憶を思い出す。人にとっては、なんてことはない思い出だ。ファブレ元帥の子にして王女の婚約者として、護身術を兼ねて剣術を習うことになった息子の無事を祈り、怪我をしないように願うと、息子は大丈夫だと、心配性がすぎる母を安心させるように笑った。なんてことはない、ただの日常の一こまの思い出が、シュザンヌの心を抉った。
覚えている。息子と過ごした日常の中で得た、大切な思い出の一つだった。だが、あれから7年以上の歳月が経過している。その間に、シュザンヌはアッシュだけではなく、ルークと共に得た思い出があった。
母が大切にしまっていた記憶を、息子は。
アッシュは擦り切れるほど思い返したのだろう。
ただの日常だった記憶を、母と過ごした記憶として、何度も何度も思い返しては懐かしんだのだろう。
シュザンヌの手元から離れていた七年間、自分の方が否定されるかも知れない、そんな臆病な心でシュザンヌたちの前に姿を現すこともできずに、それでも親を忘れないように何度も思い返したのだろう。
7年間の歳月が、本当に悔やまれた。
シュザンヌは、アッシュの成長を見守ることができなかったのだ。
7年間共に過ごしたルークも大切な我が子だったが、アッシュも、シュザンヌが病弱な体で命を賭けるような思いで、腹を痛めて産んだ大切な子だ。
シュザンヌは大事な息子たちが寂しくて辛い夜に、抱き締める権利を持っていたのに、奪われてしまったのだ。
「……ええ、そうね」
覚えていたのね、とシュザンヌが言うと。アッシュが忘れるわけがありませんと答えた。その返事が嬉しくも切ない。いっそ忘れていたほうが、七年間息子は幸せに生きることができたのかも知れない。良くも悪くも、忘却は救いだから。忘れていなかったからこそ、シュザンヌはこうして息子と再会することができたが、再会のために、どれほどアッシュが眠れぬ夜を過ごしたか考えるだけで悲しくなるのだ。湧き上がりそうになった涙を堪えるために、シュザンヌは膝の上で手を握った。今は、泣く時ではない。
「……ルークは、どうせアクゼリュスで死ぬのだからと。歩行訓練や言語、それら基本的な教育は受けていましたが、それ以上のものは……」
シュザンヌの話を聞いて、アッシュは突然笑い出した。
「は、ははは! これは傑作だ!」
「……アッシュ?」
アッシュは狂人のような哄笑をした。部屋の中にアッシュの笑い声が響き渡り、皆が呆然と彼を見つめた。
「まるで飼い殺しじゃねえか! ……ああ、そうなんだろうな。飼い殺しなのだろう。俺が本当に記憶喪失でここに戻されていたら。俺はこいつと同じ目に合わされていたってわけか。っははは! 国に死の預言を押し付けられて、ヴァンを信じて、国に利用されて…………――ふざけるなっ!!!!」
アッシュは拳をテーブルに叩き付けると椅子から立ち上がった。ルークはハッと息を飲む。ルークが味わった境遇は、アッシュが受けるはずだった境遇だ。
「……俺は王なんざごめんだ。インゴベルトの後など継ぎたくもない」
翡翠の眼で一同を睥睨すると、踵を返して、出て行こうとする。ルークはアッシュの服の裾を掴み引っ張った。
「っ何をする!」
「お前こそ何考えてるんだよ! 言いたいことを言って、満足したかも知れないけど、何一つ事態は解決なんかしてないだろ! ……みんな、俺達のために集まって話をしてくれてるんだ」
「ハッ、結局こいつらは俺達のことなんか何も考えちゃいないだろうよ。王になれ、公爵になれ、誰がそんなものになりたいといつ言った? こいつらは自分の都合を俺達に押し付けてるんだ」
「でも、俺達は王族で、貴族だ。俺は7年間、アッシュは10年間、王族と貴族の義務について教えられて生きてきたんだろう。国民の税金で生きてきたんだろう。お前だってガルドを稼ぐ大変さ、7年間働いて生きてきたならわかるはずだ。それなのに、義務も果たさずに逃げ出すっていうのか!? 俺は逃げないのに、被験者のお前は逃げるのかよ!」
「なんだと!?」
「――そこまで! いい加減になさい、二人とも。双方の言い分は理解できました。たしかに、わたくしたちは貴方達の意思を置き去りに物事を進めていたわ。でもね、アッシュ。ルークの言うとおり、逃げ出すことは許されないのよ」
シュザンヌは厳しい言葉でアッシュを引き止める。
「あなたも、ファブレ公爵家の一員なのだから」
それとも、とシュザンヌは擦れた声で訊ねた。
「……わたくしたちの子供であることを、貴方は否定するの?」
アッシュの答え次第では、縁を切らなければならない。大事な息子でも。王族は国と、国民を一番に考えなければならないのだ。たとえ、それが肉親の決別を伴っても。シュザンヌは覚悟を決めて訊ねた。その声音はみっともなく震えそうになったが、揺れる感情を顔にはおくびにも出さなかった。アッシュの顔色は白く染まる。
「……まだ親子だと思ってくれているのなら、椅子に戻って。……母を泣かせるような真似はやめて、アッシュ」
親子の縁を切らさぬよう、大切に掴んで放さなかったのは、アッシュの方だ。アッシュは身をわずかに震わせて、苦悩の面持ちで佇んだ。そうして、力ない足取りで、椅子に戻った。すとんと力なく椅子に座るアッシュは、自由を奪われた代償に家族であることを選んだのだ。眉間に皺を寄せて項垂れるアッシュの膝を、ルークは軽く叩いた。励ますようなそれに、アッシュはルークを睨んで面を上げると、背筋を伸ばした。
ルークはぐっと面を上げて貴族議会の一同を見ていた。二人の様子を見て、貴族達は一様に笑みを浮かべる。そうして、笑みを消すと冷淡な声で告げた。
「――さて、話を続けましょう」
二人と、キムラスカ王国の未来を決める話を。
2016/03/03 更新
2016/03/29 TOAページに移動
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