世界中の人間をレプリカにするまで十二年の歳月を要した。
被検者がいた頃より人口は半分ほどに減少したが、レプリカ同士が婚姻し子を産むことで少しずつ増加している。
ユリアの預言ではND2018に起きるアクゼリュス崩落を機に、最終的に人類は戦時中に蔓延した病により滅亡するはずだった。
しかし、この世界では戦争は起きていない。
導師イオンの導きにより、両国の和平は成立し、平和が訪れた。
アクゼリュス崩壊により、これまで教団の幹部しか知ることができなかった世界の成り立ちが公表されたものの、世界は一丸となり滅びへの道を回避しようと世界連盟が結成された。
導師イオンと、超振動を操れるルーク王子を中心に、外殻大地を支えているパッセージリングの調査が行われた。耐用年数が過ぎたものは補強し、その間に対策が急がれる。かつてとは異なり、ジェイド以外の研究者も収集され知恵を絞っているため、レプリカの犠牲による未来は回避できそうだ。
シンクは世界の状況を報告書という形で知り、口角をつりあげた。あの時とは打って変わって、レプリカの地位は人間にすり替わったことで安定し、未来も良いほうに向かっている。これこそがシンクの成し遂げた功績にして、二度目の人生をやり直した意味だ。
シンクはくつくつと嗤う。参謀総長に宛がわれた広い部屋で、地を這うような低い笑い声が響く。
ざまあみろ。かつて、僕たちを殺した被検者共め。
――お前たちの屍の上に立つ僕たちの世界は、こんなにも希望に満ちている!
たった独り、生き残った被験者も、いずれレプリカの系譜に組み込まれる。レプリカと結婚し、子供を産み、レプリカを生み出すのだ。自身の子供がレプリカとも知らず。
レプリカがレプリカであることは、シンク以外もう覚えていない。
そしてレプリカは、”人間”になった。
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