突如現れたアルマンダイン大将は、コーラル城に向かおうとするルークたちの進路を妨害した。
 ルークの無事を心から喜び、突然の出来事についていけずに驚いているイオンたちを纏めて馬車に押し込んだ。
 全員が乗車するや否や、馬車はすぐさまカイツール軍港に向かって引き返した。
 ルークたちが費やした数時間分の歩行距離を、わずか数十分足らずで埋めてしまう。決して居心地が良いとは言えない馬車の中、舌を噛みそうになる振動を我慢しながらもルークはコーラル城に行かずに済むことに安堵していた。

「いったい何が……」

 イオンは呆然と呟いたあと、ハッと表情を変えてアルマンダインを見た。

「整備士長がアリエッタに捕らえられているんです。僕達が助けに行かなくては、」
「ファブレ元帥の命令によりキムラスカ軍の精鋭がアリエッタ討伐に向かっています。ご安心ください」
「と、討伐……? 安心できません! アリエッタは査問会にかけます。それが教団の規律です。引き渡してください」
「このごに及んで教団の規律を押し通そうとする。導師の意向はよくわかりました。上に伝えておきます」

 アルマンダインは穏やかな口調で言うが、話の内容の不穏さにイオンは顔を引き攣らせた。自分は何か誤ったことを言っただろうか――眉を寄せて考え込むイオンを、アニスが「だいじょーぶですよぉ」と無責任な言葉で慰める。安堵したイオンとは違って、アルマンダイン大将は導師守護役の言葉を胸中で力強く否定した。

 妖獣のアリエッタは、キムラスカ王国の軍港を壊滅状態にし、数多の犠牲を出した。
 その被害額は甚大で、いくらになるのか現時点では詳しい数字は出せないが、数百億ガルドは下らないと思われる。
 キムラスカ王国の”軍港”を、ローレライ教団の幹部が襲撃したのだ。これはキムラスカ軍に対する敵対行為である。ティア・グランツによる公爵家襲撃事件と重ねると、もはやローレライ教団による敵対行為は否定できない。

「も〜、イオン様になんてこと言うんですかぁ?」
「アニス、良いんですよ」
「でもぉ」
「それに、アリエッタのことは陛下にお願いしてみますから」
「いや、アリエッタのことは正直どうでもいいんですけど……」

 状況を飲み込めずに暢気な会話をしている二人を置いて、アルマンダインはルークにこっそり話しかけた。

「ルーク様、先程軍港にファブレ元帥が到着しました。あなた様の無事を心配しておいでです」
「父上が……? そうか……」

 ルークは安堵の溜息を吐く。アルマンダインはルークが不快にならない程度に彼の身を観察した。旅をして砂埃に汚れた衣服、利き手の指には剣ダコの痕、腰には粗末な剣を履き、擦り切れた靴底――着の身着のまま連れ出されたあと、楽な生活は送れてなかったのだろう。疲れている様子を見せるが、受け答えはしっかりしている。

 記憶喪失から七年、ずっと軟禁生活を送り続けて、今回が初外出だという。
 突然環境が変わって、赤の他人と長時間生活を共にして、いつ終わるとも知れない旅をさせられて、ストレスを感じないほうがおかしい。疲れているのは当たり前だ。
 もっと精神的に酷い状態にあるかと思ったが、なかなか立派なものだ。見た目だけで判断してはならないが、少なくともアルマンダインから見てルークの精神はまだ安定しているように映った。さすが、キムラスカ王国軍元帥の息子と思うほどに。

 導師たちに振り回されていたようだが仕方あるまい。導師は各国の王が敬意を払う存在である。
 現状ルークの立場は導師より下だ。
 もっとも、それもあと数週間のことだろうが――アルマンダインは胸中で呟いた。
 
 馬車に揺れること、数十分。カイツール軍港に到着した。
 被害の規模を確認するために兵士があちらこちらを走り回っている。死体はすでに片付けられていた。船の清掃員と思しきツナギを着た者たちがモップで濡れた石畳を擦っている。血溜まりを消そうとしているのだろう。海水と血が入り混じり、何ともいえない匂いが辺りに漂っている。
 軍港の真ん中で兵士たちに指示を飛ばす人物がいた。
 ファブレ元帥である。ルークは父上、と父の姿を一目見て、ようやく肩の荷が下りたように小さな笑みを浮かべた。アルマンダインが声をかける前にファブレ元帥がルークたちの姿に気付いて、近寄ってくる。ルークの姿を確認して、厳しい目元が、わずかだが柔らかく緩んだ。

「ルーク、無事だったか」
「はい、父上」
「うむ。シュザンヌが心配している。その顔を早く見せてやれ」
「はい!」
「私は用事があるからまだ戻れぬが、お前は一足先にあの船に乗って家に戻りなさい」

 ファブレ元帥は軍港の隅に停泊している一台の船を指した。
 キムラスカ王国の国旗が風に吹かれて揺らめいている。キムラスカ王族用の船なのだろう。船には船員のほかに、軍人が乗っていた。

「わかりました」

 ルークは素直に頷くと、早速船に向かって歩き出す。イオンたちは当然のようにルークの後に続こうとした。だが、その前にファブレ元帥に声をかけられる。

「お待ちください、導師イオン」

 イオンたちは足を止めた。ルークはイオンたちが付いてきていないことに気付かずにサッサと行ってしまう。ティアが柳眉を釣り上げて、ルークの名前を呼ぼうと口を開いた。

「ルー……」
「ティア・グランツによる公爵家襲撃、鮮血のアッシュによる王族殺害未遂、此度の妖獣アリエッタによる軍港襲撃、インゴベルト陛下は誠に遺憾だとたいそう嘆いておられました。陛下は一度は寛容な御心で以て慈悲深くお許しになろうと努力致しました。ですが、軍港襲撃を含めて三度もの敵対行為を看過することはまかりならず、また再三にわたって導師に弁明を求める抗議文書をお送りになりましたが、その都度教団から届く返答は導師が所要のために外出しているというものでした」

 ヒュッとイオンたちが息を吸い込んだ。イオンは驚愕に目を開いて、アニスは言葉も出ない様子で、ティアは呆然とファブレ元帥の話を聞く。

「陛下は、長期にわたり教団と築き上げられた関係を、今一度見直す必要があると仰られました」
「――それはどういう、」

 イオンの口から漏れた言葉は見苦しく震えていた。導師の心情をまざまざと映し出した声に、アニスとティアはハッと顔色を変える。先程まで彼女たちの面に浮かんでいたやわらかな表情は消え去り、途方もない緊張感に強張っていた。イオンの問いにファブレ元帥は詳しい言葉を告げなかった。

「……即刻教団にお戻りになられた方がよいでしょう。もはや猶予はありません。このまま、この国に導師がいらっしゃいましても、我々キムラスカは貴方の身の安全を保障することも、お望みに副うこともできません」

 キムラスカ王国に置いて、イオンが胡坐をかいていた導師の地位が、何の意味も持たなくなった瞬間だった。
 イオンは蒼白な顔色でふらりとよろけた。アニスは慌てて支えながらも、今さらながら教団の今の立場を知り青褪めた。

 ファブレ公爵家で兄を襲ったことが、教団によるキムラスカ王国への敵対行為にカウントされている。そのことを知ったティアは紙のように白くなりながら震える。アッシュとアリエッタのことはともかく、自らの行為を弁明しなければ。そんな思いで引き攣る喉から声を絞り出した。

「ま、待ってください、教団による敵対行為なんてそんなのありえません! それに、私は公爵家襲撃なんてしてません! あれは兄を殺すために、皆を巻き込まないように譜歌で眠らせて――ルークを巻き込んでしまったのは確かに私の責任ですが、教団には何の責任もありません!」
「公爵家襲撃当時、ティア・グランツは教団に所属し、また軍服を着用していた。教団による敵対行為と判断するのが妥当なところだ。個人の事情によるものという貴様の言い分は認められない」

 ファブレ元帥は感情が窺えない声でティアの訴えを切り捨てた。弁明など無意味と言わんばかりに、ファブレ元帥がティアを見る目は冷たかった。

 イオンとアニスはティアがやらかしたことを知り、深く後悔していた。ルークと親しげに会話をしていたから、昔からの知己だと思い、二人が共に行動していることに何の疑問も抱かなかったのだ。いや、イオンだけは二人の仲に違和感を覚えていたが――初めて顔を合わせたとき、ルークはティアがヴァンの妹だと知らなかった。チーグルの森で、イオンはティアがヴァンを殺害しようとした事実を知ったが、まさかファブレ公爵家で譜歌を歌い無差別攻撃を仕掛けていたとは思いもしなかった。もっと詳しい事情を追及していれば――その思いはジェイドも抱いていた。

「そんな、そんな……ッ」

 ティアが現実を受け止められないように頭を振って、その場に膝をつく。

「ティア・グランツ、鮮血のアッシュ、妖獣のアリエッタの身はキムラスカ王国に引き渡してもらいます。それで、良いですね、導師イオン」

 いいえ、と言えるわけがなかった。
 これ以上キムラスカの怒りを買えば、即時開戦もありうる。戦争の火蓋は切られつつあるのだ。

「…………はい」

 イオンは、絶望に顔を染めたティアの顔を見ることができなかった。


 *

892 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
【速報】葬長妹逮捕

893 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
ついにきたか

894 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
長かったな

895 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
遅すぎィ!

896 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
葬長妹逮捕と同時におうぢ様保護
道士・守護約カルトに帰還することに

897 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
ここにきて急速に事態が動いたな

898 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
話柄死者は?

899 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
エンペラーからお迎え来た
おうぢ様引っ張りまわしたことを謝罪して、エンペラーに連れて帰ったぞ

900 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
ほう

901 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/01(月)
続報待機







982 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
これまでのまとめ

おうぢ様の家襲撃&おうぢ様誘拐
スレ民:各国、おうぢ様たちの動きを注視。この頃から葬長妹の発言が話題に
キングダム:おうぢ様宅の某から情報流出
エンペラー:話柄死者キングダムに送りましたわー
カルト:道士行方不明、大英師&葬長罰駆るにいるため、責任者不在。混乱

おうぢ様と葬長妹、話柄死者一行と合流?
スレ民:おうぢ様達の写真流出
キングダム:カルトに抗議1回目
エンペラー:話柄死者うまくやってっかなー
カルト:責任者不在によりあたふた

陸艦襲撃
スレ民:おうぢ様たちの面子に物議。考察が行き交う
キングダム:葬長妹の行為にキレる。大英師追放、抗議2回目
エンペラー:陸艦襲撃の事実を知り、調査
カルト:責任者不在なのにカルトに都合の悪い情報が続々届いて大混乱中だお(´;ω;`)

検問所で潜血によるおうぢ様殺害未遂
スレ民:あれっカルトやばくね?
キングダム:抗議文3回目。軍港に元帥送る
エンペラー:話柄死者とっ捕まえるために将派遣
カルト:大英師戻ってきた責任者が帰還したから頑張るお(´・ω・`)

幼獣キングダム軍港襲撃
スレ民:カルトオワタ
キングダム:マジおこ。カルトに怒りの鉄槌下す五秒前
エンペラー:将もうすこしで話柄死者に追いつくお
カルト:あ…(´・ω・`) (´・ω..:;.:...

決裂
スレ民:諸行無常なり
キングダム:カルトに制裁開始。エンペラーに協力要請。
エンペラー:おうぢ様相手に話柄死者が前衛で戦わせた事実が発覚。キングダムに協力する。
カルト:道士辞職。大英師派台頭。キングダムに謝罪するも許してもらえず解体されることに

幼獣、潜血処刑、葬長妹のみ執行猶予中。
根暗マンサーは軍法会議の末、処刑
道士は辞職後、行方不明
同行していた守護約も行方不明

983 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
>>982
まとめ乙

984 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
>>982
まとめ乙

985 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
幼獣と潜血処刑されたのになんで葬長妹だけ生きてんの

986 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
>>985
それはね、葬長妹が聖女の子孫だからだよ
マジな話

987 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
潜血は秘密裏に生かされてんじゃないかって噂がある

988 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
おうぢ様と瓜二つらしいからな
影武者として生かされてそう

989 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
まあもう表舞台には出てこれないだろ
それより俺は道士と守護約が気になる
揃って行方不明とか愛の逃避行中か

990 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
愛の逃避行か…ロマンだねえ…

991 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
道士は知らないけど、守護約は火山で両親の死体が見つかって自殺したって聞いた

992 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
>>991
はじめて聞いた
可哀想

993 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
可哀想なのは、今回の一件とは無関係のカルト団員だろ
葬長妹たちのせいで巻き添え食ったんだから

そんなことより陸艦乗員の遺族が
根暗マンサー処刑前に集団抗議したって聞いたんだけどマジ?

994 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
マジ
カルトに襲撃された事実を隠して、根暗マンサー一人生存した事実が遺族たちを怒らせたっぽい
自分の部下を見捨てて逃走したんじゃないかって話
カルトも抗議したらしい
大英師が襲撃命令を出した理由が理由だから

995 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
元は根暗マンサーが話柄協力のために、道士を連れ出したって話か
道士を連れ出す際の方法も問題ありまくりだったらしい
大英師派と道士派の対立を悪化させて、カルトを混乱させてその機に乗じて拉致したとか
カルト総本山ってアジールなのにヤバイよな

996 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
アジールって聖域とかそういう意味だっけ?
カルトが聖域とは思えないけど

997 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
【速報】大英師がキングダムのおうじょ様が偽姫だと暴露

998 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
どういうことなの

999 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
大英師自棄になったか?

1000 名無しじゃないんだからねっ!:2018/02/13(月)
1000なら祭りはまだ終わらない

1001 :1001:Over 1000 Thread
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