ついにローレライ教団が解体された。
相次ぐ失態により導師派が潰れ、大詠師派が台頭して、導師イオンの首と犯罪者の身柄を引き渡すことで何とかキムラスカの怒りを納めようとしたが、それも無意味だったようだ。
ローレライ教団解体と共にダアトはキムラスカに吸収された。本来ならばマルクトと二分割するはずだったが、マルクトの和平使者が導師を連れ出す際の方法が問題視されて、世間がそれを許さなかった。またダアトの住民たちが断固としてマルクト国民になることを拒否して、大規模デモを起こしかけたことも理由の一つに挙げられる。
導師に和平協力をさせるために取った手段と、タルタロス襲撃事件を隠していた罪に問われ、軍法会議にかけられたジェイドは軍位を剥奪されて処刑された。――表向きは。
ジェイドは人権と戸籍を失い、今もなお生きていた。
表向きは処刑されたことになったが、国から研究施設を宛がわれ、そこで監禁生活を送っていた。
天才の頭脳を失うのは惜しい、処刑されたことにして国のためになる研究をさせた方が有意義だ――ということなのだろう。辛くも天才と称される頭脳により、ジェイドは生き延びることができたのだ。国の命令に諾と従う日々を生きると言って良いのかわからないが……タルタロスの乗組員の遺族からしてみれば、命があるだけマシだと口を揃えるのだろう。
今となっては名を呼ぶ者もいなくなり、博士と呼ばれる男は小さく溜息を吐いて、自分以外誰もいない研究施設で国の研究を続ける。
外部から定期的に送られてくる制限された情報と、研究報告をただひたすら繰り返す日々。息をつくような娯楽は何一つなく、外に出ることも儘ならない。徐々に心が死んで行く。
彼には、明るい未来も希望も、何もなかった。
2014/07/28
prev next
back