――近年、精神医学が注目を集めている。
元々精神医学の下地は作り上げられていたが、その認知度はあまりにも低かった。戦争被害者の多くは――マルクトとキムラスカ間の戦争被害者による心的外傷ストレス障害を発病する者が多いせいか――認知していたのだが、それ以外となると話にならない。
では何故、近年注目を集めるようになったのかといえば、アクゼリュス崩落を機にはじまった大地変動のせいである。
大地変動により、多くの犠牲者が存在していた。アクゼリュスの住民、マルクト・キムラスカの戦争によりルグニカ平野に出兵していた兵士たち。大切な家族・友人・知人を亡くした遺族たちの心の傷は計り知れない。他にも、自分達が立っている地面が大きな柱に支えられて存在していたことを知ったことによる不安やストレス、大量のレプリカ出現など、様々な理由が、世界中の民衆の心を揺るがした。
それは、皮肉なことに、精神医学の需要を伸ばした。心的外傷ストレス障害、睡眠障害をはじめとした心の不調を訴える者が増加したのだ。また患者の増加に伴い、犯罪事件も多発するようになった。精神の安定を欠いた者たちが犯罪行為に走る者が出始めたのだ。傷害事件や暴行事件が続出し、治安を揺るがす。軍が出動し、その街に住む住民の不安やストレスを駆り立て、それがまた犯罪事件につながる。悪循環のスパイラルが始まった。
人間の心理状態により犯罪率や死亡率が大きく変わる。そのことに気付いた世界各国は、精神医学の研究に本腰を入れた。
シュザンヌ・フォン・ファブレは息子の精神状態を懸念していた。
精神医学が世に広まりだした頃、シュザンヌも精神医学に興味を持ったことがあった。病弱なシュザンヌにとってベッドの中で暇を潰せる本は打って付けの存在で、精神医学の本も、人間の心理状態が齎す様々な事例を興味深く思いながら読んだ。
大地変動により精神的苦痛を覚える人が増加する中、シュザンヌも二人の息子の精神状態が酷く心配になった。今はアッシュと名乗る息子は十歳の頃に誘拐被害に遭い、その後、洗脳などの精神的苦痛をヴァンによって与えられた。誘拐以前にも、国主導により超振動の実験体の被害に遭ったという。ファブレ公爵からその話を伝え聞いたシュザンヌは心を痛めたものだ。もう一方の息子ルークはティアにより外に連れ出され、否応なく戦う羽目になり、自身の命を守るためとはいえ、他人の命を奪った。親善大使としてバチカルを出立後、ルークの超振動によりアクゼリュスが崩壊したという。アクゼリュスの住民一万人を葬る、直接的な原因になったことを、深く後悔しており、魘される夜を送っている。
その後も、世界中を巻き込んだ騒動に関与することになり、数多の辛い出来事を経験した。
外殻大地降下作戦を終えて、ヴァンを倒して帰還したルークは元の生活に戻った。
軟禁状態は解除されたものの自分がやるべきことを見出せずに家にいるルークの表情は暗い。心の休息を味わうこともできずに、夜毎魘されているらしい。そこでシュザンヌは精神医学の第一人者といわれている、ミリア・ショウブを呼ぶことにした。
多忙の中、時間を割いて現れたミリア・ショウブは三十代前半の優しそうな顔をした男性だった。年齢の割りに落ち着き払っていて、口から吐き出されるテノールの声は耳に優しかった。
「心理土のミリア・ショウブです」
「あ……俺はルーク、です」
ミリアはルークから巧みに話を聞き出した。ルークがしゃべるまで根気良く待ち、決して急かさない。自分のペースに合わせるミリアに、ルークも安堵したように肩の力を抜いて、頭の中で言葉を整理しながらしゃべり始めた。ルークの心の治療をするために、密室の空間に二人は閉じこもってじっくりと話をする。初回の治療は2時間に及んだ。
部屋から現れたルークはどことなく明るい表情をしていた。しばらくの間、ミリアがファブレ邸に滞在すると知ると嬉しそうな声を出して、ミリアにいろいろ話しかけていた。まるで、ヴァンに懐いていた頃のように。
すっかりと夜も更け、ルークが寝静まった頃合を見計らい、ファブレ邸の広間にミリアを呼び出した。
広間に顔を揃えているのは家長クリムゾンと、シュザンヌ。広間の外では、白光騎士団の兵士が扉を守っていた。
呼び出したミリアに話を聞くと、シュザンヌの予想通りの答えが返って来た。
「ルーク様はストックホルム症候群の疑いがあります」
「……ストックホルム症候群? ……いや、その前に、ルークは精神病だと……?」
クリムゾンは驚愕していた。ミリアの診断結果に信じられないと眉根を寄せて首を振る。息子が精神病に罹っている事実がひどく堪えたようだった。シュザンヌにしてみれば、何を驚くことがあるのかと胸中で唾棄したい思いでいっぱいだった。
国の繁栄のためとはいえ、両親――シュザンヌは知らなかったが、ルークにしてみれば同じことだろう――と国に死を望まれ、アクゼリュス崩壊の原因となり一万人を死に追いやり、その後も世界のために身を粉にして駆けずり回った。ルークの実年齢は7歳ほど、その7年間もファブレ邸という鳥篭の中で過ごしていた。そんな人間が突然嵐の中に放り込まれて無事でいられると思うなどと楽観視がすぎる。当然のように、ルークの心は擦り切れているだろう。
動揺するクリムゾンは「何かの間違いでは?」と尋ねる。精神医学の専門家に対して、その言葉は侮辱だった。シュザンヌの眉間に皺が寄るが、ミリアは慣れているのか気にした様子もなく「驚かれるお気持ちは大変理解できます」といったが、診断内容に誤りはないと告げていた。物腰柔らかなミリアの言葉を無理に否定することもできず、クリムゾンは唸るような声をあげて口を閉じてしまった。
「ストックホルム症候群ですが、これは犯罪者の加害者と被害者が長時間行動を共にしていることにより、被害者が生存率を上げるために無意識のうちに加害者に好意的になっていく精神病のことです。決して完治は難しくありません」
「! 本当ですか」
シュザンヌは安堵したような息を漏らした。クリムゾンはストックホルム症候群の恐ろしさがいまいち理解し難いのか首を捻る。
「……それは治療する必要があるのか? それ以前に、精神病など気の持ちようではないのか」
「公爵っ」
心の傷を軽視する夫の発言にシュザンヌは柳眉をつりあげる。
「――公爵のような考え方をする方は珍しくありません。精神病の認知度は高まりつつも、理解は未だ追いついていないのが実情ですから。心の傷は目に見えない形で現れるため、その傷は認識され難い。ですが、たしかにその傷は存在しています。心の傷の深さによっては、自殺をする人もいる。それを、気の持ちようなどという言葉一つで片付けてしまうのは、悲しいことです」
「誰もが皆、あなたのように強い人ばかりではないのですよ」
ミリアの言葉を後押しするようにシュザンヌも厳しい口調で告げる。針の筵に立たされた公爵は黙り込むしかなかった。
「ストックホルム症候群の治療する必要性ですが、かならずしもあるというわけではありません。ですが、ルーク様の立場と今後をお考えでしたら、早期治療が望ましいでしょう」
「ふむ……何故だ?」
「加害者に対して好意を寄せ続けることで、ルーク様の精神は加害者の支配下に置かれます。加害者に対して好意と緊張状態が続くわけですから、心労が増え、自分の生存率を高めるために加害者に言いなりになる可能性があります」
「…………」
公爵はぐっと眉間を狭めた。ルークはファブレ公爵子息だ。次期にキムラスカ王国の中心、またはその近くに位置する人物である。必然的に大きな影響力を持つことになる人物が、他者の言いなりになる可能性がある。可能性に留まっている間に懸念を解消すべきだといわれ、これには公爵も頷くほかなかった。
「……わかった。息子の治療を頼む」
完全に夫の理解を得られたわけではないが、肯定的な返事をしたクリムゾンにシュザンヌはようやく頬の筋肉を緩めた。ミリアもすこしだけ表情を柔らかくして、「それでは――」と治療に関する話を始めた。
ミリアの話を聞いて、クリムゾンとシュザンヌはルークが置かれていた状況の悪辣さに表情を強張らせた。
ファブレ公爵家を襲撃したティア・グランツと否応なく外に出され、長期間彼女と行動を共にすることにより受けた精神的苦痛。世間知らずを馬鹿にされ、戦闘を強要され、殺人を正当化され、わからないこと、できないことを叱責される苦痛。バチカル帰還後、親善大使として任命されて出立しアクゼリュスに到着するまでの間に感じた、焦燥感とストレスと恐怖と苛立ち。剣師ヴァンにより、ルークはバチカル城の地下室で、アクゼリュスに送られる理由の真実を知ってしまった。キムラスカの繁栄の礎が自らの死であることを知ることにより、バチカル出立後のルークの心情は荒れに荒れていた。だというのに、周囲はルークの意見をまともに聞くことなく事後承諾、勝手に行動の指針を決められ、知らないほうが良いこともあると、知識に制限をかけられる。素直に物事を口に出せばわがままと決めてかかられ、自分が思ったとおりに行動すればティアによって人形扱いされた経験。アクゼリュス崩壊後の周囲による断罪と、自らが人間であることすら否定された過去。
ルークから聞かなかった話を人伝から聞かされたクリムゾンとシュザンヌは絶句する。ルークの置かれていた状況を甘く見ていた。これほどまでに酷かったなどと思いもしなかったのだ。胸を衝いた、怒り、憎しみ、哀しみといった負の感情に顔を歪める。これほどまでに酷い状況下を息子に強いた一端が自分達にあると気付いて、深い罪悪感に駆られた。ルークの精神的負担を取り除くよう、状況を改善しなければならない。それが、今までろくに努めてなかった親としてのクリムゾンとシュザンヌの役目だった。
シュザンヌがミリアと共にルークの心のケアをする一方で、クリムゾンは息子に精神的負担を与えた人間を排除するために動いていた。
ルークがファブレ邸を無理矢理連れ出された後の行動を情報収集して、報告書という形にして時系列ごとに纏める。エンゲーブで盗賊に間違われ村人に背を蹴られたこと、導師イオンがカイツール軍港で人質を助けるためにルークの身を危険に晒したこと、他にもキムラスカ王位継承権第三位という高位を持つルークを馬鹿にしているとしか思えない情報が集まった。これにはクリムゾンも憤慨し、報告書を纏める手つきも荒々しくなった。そこからさらに国王たちに送りつける形式ぶった陳情書を作成する。
クリムゾンはその陳情書をキムラスカ国王に送り、次にマルクト皇帝陛下、導師イオンと大詠師以下、全詠師に送りつけた。ダアトだけ統率者である導師イオンのみならず他の幹部に陳情書を送付したのは、導師イオンでは謝罪をして終わらせられる可能性が高いと踏んでのことである。
陳情書を目にしたキムラスカ国王は絶句し、その直後憤慨した。
これほどまでに甥のルークが酷い目に遭っているとは思ってもみなかったのだ。国王は秘預言に詠まれたキムラスカ王国の繁栄の礎にしようとしていたが、それは国のための犠牲だ。そうでもなければ、キムラスカ王族の象徴を受け継ぎ、健常な男児であるルークを犠牲にしようなどと考えもしない。ユリアの秘預言がなければ、ルークは確実に次期国王の座についた。そうでなくても、ルークはファブレ公爵子息だ。公爵位は王族の私生児にのみ与えられる爵位である。つまりルークはキムラスカ王家の正統な王子といっても過言ではない。将来国を背負って立つ者に対する不敬は、到底見過せるものではない。親善大使としてアクゼリュスに派遣したルークは、あのとき国王陛下名代の名も背負っていた。親善大使の任務を終えるまでのルークが受けた精神的苦痛、不敬は、キムラスカ国王に与えられたも同然である。勝手に城を抜け出した娘のナタリアが国王陛下名代であったルークをおざなりにし、和平のためにアクゼリュスに向かうよりも住民を放置して導師イオンの救助を優先させたことも、インゴベルトの怒りを増長させた。
国王は怒りのあまり震える声で早急にナタリアを呼びつけた。王に呼び出されたナタリアは最初は不思議そうに首を傾げていたが、激しい叱責を受けて、顔色を悪くさせて震えこむしかなかった。その後、ナタリアは再教育を受けるために、離宮にて軟禁された。成人を通り越しても一定の教育レベルに達していない限り、国王は永久にナタリアを表舞台に出すことはないと宣言した。それほどまでに国王の怒りを買ってしまったナタリアは表面上自己反省しているように見えるが、根本的に問題を理解していないのか、ちっとも反省しているようには見えなかった。
怒りを爆発させたインゴベルトは、マルクトとダアトに国の名を使って苦情を入れた。
キムラスカから届いた陳情書は、マルクトとダアトにとっては青天の霹靂だった。マルクトは、ジェイドが仕出かしたことに頭を痛め、あいつならやりそうだと疲労と共に納得し、真実であるかどうか確かめるべく情報収集に乗り出した。一方ダアトは――。
「――これはいったいどういうことですか!」
導師イオンと、大詠師モースは、複数の詠師に囲まれて詰問を受けていた。
「ティア・グランツがファブレ公爵家を襲撃したなどと……ルーク殿を馬鹿にして戦闘行為を強要させたなんて……我々はそんなこと一つも知りませんでした! どうして黙っていたのですか、導師イオン、大詠師モース!」
詠師たちの顔色は蒼を通り越して白い。彼らはティアが罪を犯したことすら知らなかった。導師イオンと、モースが黙秘してダアトに連絡一つ入れていなかったからである。ルークが誘拐された当初、モースはバチカル城にいた。そのとき、ティアの直属の上司であるモースと国との間で話しはついたのだ。そのせいでダアトに連絡を入れる必要性を感じず、報告を怠った。イオンのほうはルークとティアの間で何かあると気付きはしても、その”何か”について尋ねるような真似はしなかった。チーグルの森でティアが襲った相手はヴァンだと聞いていたし、彼女がユリアの譜歌を使いファブレ邸を襲撃していたなど考えもしなかった。――それが自らの首を絞めることに繋がろうとは。
「これを見てください、導師イオン……」
詠師は憤怒のあまり震える手で一枚の書類を突きつけた。イオンは青白い顔で黙り込んだまま、その書類を見る。
「キムラスカはあなたが、次期キムラスカ国王になる可能性が極めて高いルーク様の存在を軽視しているといってます。私も否定できなかった。あなたはどういうつもりで、ティア・グランツがルーク様を馬鹿にした場面を度々放置し続けたのですか! カイツール軍港を襲撃したアッシュの元にルーク様を連れて行ったのですか!」
「……僕は、ティアがルークを馬鹿にしていただなんて……ルークは世間知らずな一面がありました。ティアはそんなルークに物事を教えていただけで、」
「それを何故おかしいと思わなかったのですか! あなたがティア・グランツが犯罪者である事実を知らなかったとしても、ティア・グランツはローレライ教団の情報部所属の一兵士ですよ!? 公爵子息のルーク様とはあまりにも身分が釣り合わない。あなたはティア・グランツがルーク様に何かを師事するということ自体、おかしいと気付くべきでした」
「……」
「カイツール軍港襲撃の首謀者アッシュの元にルーク様を連れて行った件はどう説明しますか」
「僕は人質を助けたくて、人質となった整備士長は災厄は取り除かれると詠まれていたんです。だから、」
「だからルーク様の身の危険性を知りながら、整備士長の身の安全を優先したと言うわけですか。預言で災厄が取り除かれるなどと……預言を笠に着る形で存続しているダアトにとっては整備士長を救助する正当な理由になりますが、キムラスカにそれが通じるわけありません。あなたはこの行動で、ルーク様の命は、整備士長の命に劣るといったも同然です」
「僕はそんなつもりじゃありません!」
「あなたがどういうつもりであろうとも、あなたの行動と態度と言動がそう示しているんですよ!」
「……っ」
詠師は苛々とした口調でイオンを責める。導師イオンや大詠師モースのせいで、ダアトは存続の危機に晒されている。「組織の長が無能だからこんなことに」と誰かが呟いた。
「ちょっ……誰ですかぁ!? 今イオン様を無能といった人は!」
これには黙っていられないとイオンのすぐ後ろで黙って佇んでいたアニスが怒号をあげる。詠師の一人がカッとなって言い返した。
「無能な導師守護役は黙っていろ! ルーク様に媚を売り、マルクト軍人の命令を聞いて導師イオンの元を離れた、ローレライ教団の恥晒しが! 何人に股を開いた!? 貴様とティア・グランツのせいで、ルーク様を罵ったリグレットやアッシュのせいで! ローレライ教団の軍人は誰も彼も無能だと思われているのだぞ!?」
「な……っ」
「い、いくらなんでもそんなことを言うなんて酷すぎます! 謝ってください!」
股を開いた――阿婆擦れ女と謗られて、アニスは顔を真っ赤に染めた。身の覚えがない恥辱を受けてアニスは目を潤ませる。イオンが憤り怒声をあげるが、アニスを罵った詠師を咎める目はイオン以外存在していなかった。
「……ああ、導師イオンも彼女に性欲処理を? アニスをよく連れていらっしゃるからなあ。さぞかし具合が良いのでしょうな」
「な……僕はそんなこと一度も……アニスを侮辱しないでください!」
「あなたがアニスばかりを贔屓するからこんなことを言うんでしょう。ティア・グランツもあなたの愛人だというのなら、庇い立てする理由も理解できますよ。あなたが誰を愛人にしようと勝手ですが、私情にローレライ教団を巻き込まないでいただきたい」
「おい、本題がずれているぞ」
年嵩の詠師は呆れを浮かべながら、収拾がつかなくなった会話を止めに入る。
会議の仕切り直しをするように一つ咳払いをして、詠師達は本題に戻った。
「導師イオン、大詠師モース、ヴァン総長、ティア・グランツ、アニス・タトリン、リグレット、アッシュ、ラルゴの罷免を要求します!」
イオンの顔が強張る。
「待ってくださ「おなじく、導師イオン以下7名の罷免を要求します」っ」
「おなじく」
「おなじく」
イオンたちを罷免する、賛成の声ばかりあがる。そんなに自分は悪いことをしただろうか。自分達を糾弾するいくつもの声に打ちのめされて、イオンは青褪める。アニスも赤から白に顔色を染めて「そんな、」と何かを言おうとするが言葉が見当たらずに魚のように口をパクつかせた。
このままでは罷免されてしまう――それがわかっているのにどうにもならない歯痒さを抱えて、イオンとアニスは自分達を排除しようとする組織に押し流される形で罷免された。
キムラスカから引渡し要求が出たのはティア・グランツだけだった。
ルークに精神的苦痛を与えた主立った他の面々はマルクト、ダアトの裁量に任せられることになった。自分達の身内に適切な罰を下せるかどうか、キムラスカはマルクトとダアトの対応を見極めようとしたのだ。
マルクトはキムラスカと良好な関係に築くためにジェイド・カーティス、ガイラルディア・ガラン・ガルディオスに厳正な処罰を下した。ジェイドは親善大使を侮辱した罪により投獄、終身刑に処され、ガルディオス家は爵位剥奪、ガイラルディアも身分詐称の末、他国に亡命していたとされ、終身刑にされた。死刑ではないだけマシである結果といえよう。
ダアトは導師イオン以下7名罷免後、マルクトより引渡し要請が出ていたアニス・タトリンを引き渡した。ヴァン、リグレット、ラルゴ、アッシュ、モース、導師イオンは行方を暗ませた。イオンだけは行方不明になると思っていなかったため全員が驚きを隠せなかったが、度重なる失態にいたたまれず失踪したのだろうと皆納得した。
ティア・グランツの引渡しには5年間の猶予が与えられた。それというのもユリアの血を未来に繋ぐためである。ヴァンが行方を暗ませなければヴァンに子作りさせる手筈になっていたのだが、行方不明になった今、ティアに子を産ませるしかなかった。そこでダアトはキムラスカに頭を下げて5年の猶予を貰ったのだ。ティアは子供を作るためにユリアシティに軟禁された。
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