※ルーク視点/これが今作品ルークの本音です/10はここまでやるかという話になってます/胸糞/後味悪いのでそれでも許せる方どうぞ。
ティアの傍にいることが辛く感じ始めたのはいつ頃からか。あるいは最初からだったのかも知れない。いつからか思考が麻痺して、ティアの傍にいるときは何も考えなくなっていた。ただ傍にいるだけ。ただ彼女の言葉を肯定するだけ。何も考えずに頷くだけの行為はとても簡単で、そんなことを繰り返しているうちに、ティアから好意を向けられるようになっていた。
時々、彼女のこれまでの言動を思い出す。
『兄さん、やっぱり裏切ったのね! 外殻大地は崩壊させないって言ってたじゃない!』
――ティアは、ヴァンがアクゼリュスを崩壊させる危険性を知りながら看過していた。
その結果、アクゼリュスは崩壊し、一万人の住民が死亡した。
『私情よ。あなたには関係ないわ』
――ティアはヴァンの殺害を企んだ。理由を訊ねると、彼女は私情だからルークには関係ないと答えた。
本来ルークには関係のない出来事に彼は巻き込まれ、外に連れ出され、戦うよう促され、人を殺害し、あげくにアクゼリュスを崩壊してしまった。
そのことに対して、ティアが今までルークに放った言葉は。
『あなたを巻き込んだのは私だから、家まで送り届けます。でもその代わり、足手纏いにならないで』
――ティアのせいで、外に連れ出され初めて人を殺して動揺するルークに、自らの責任だと口にしながら足手纏いになるなと上から物を言った。
『ルーク、見直したわ』
――セシル少将に、和平使者一行の便宜を図ったとき。どこまでも上から目線に物を言ったティアに疑問が湧いた。見直す、とは。つまり、それまでルークは彼女の中で見下げた人間だったのだろう。
『あなた、いつまでもそんな態度じゃ、いずれ痛い目を見るわよ』
――イオンの救出に時間を食い、アクゼリュスへと急ごうとするルークを誰もが非難した。イオンが疲れたから。そんな理由で足を休めた彼らは、障気で苦しんでいるアクゼリュスの住民のために、足を速める気持ちを持たなかった。
『まるでお人形さんね』
――ヴァンのもとに急ごうと口にするルークを、お人形だと批判した。あの当時のヴァンはアクゼリュスの住民救助のために送られた先遺隊と共にいた。親善大使一行として、アクゼリュスの住民の救助を任命されたルークには、ヴァンのもとに急ぐ理由はあれど、批判される理由はなかった。それなのに、ティアはルークがヴァンのもとに急ごうと口にすると、自らの意思を持たない人形だと人格を否定した。
『ルークがアクゼリュスを……』
――ヴァンに裏切られて動揺するルークに、アクゼリュス崩壊の原因を知っていた彼女は自らの責任には目を背け、ルークだけに責任を求めた。間接的にアクゼリュスの住民を死に追いやったくせに、自分には何の問題もなかったと。他人に責任を被せて非難した。
『私はあなたをいつでも見限ることができるのよ。それを忘れないで』
――さんざん人格を否定し、扱き下ろしておきながら、見限ると口にする。とうとう本音が出たのだろうか。
『ルーク……好き』
――虫唾が、走った。
気持ち悪い。おぞましい。理解できない人間に好意を抱かれて押し付ける。好きだと告白して何になる。これまで人格を否定しておきながら、死に逝く者を好きだと口にして何になる。自分の気持ちを押し付けて、報われない気持ちに自分を憐れみ、悦に浸っているだけではないか。激しい怒りと憎悪に身の毛がよだち、しまいには何も感じなくなった。ただ、途方もない疲労感が全身に広がる。
「ああ、ようやく終わる……」
自らの超振動に巻き込まれ、ローレライを解放する。地面が光り、ティアが徐々に離れてゆくことに歓喜した。
これで、やっと、終われる。すべてが終わるのだ。人の顔色を窺うこともなく、誰かの悪意と好意に煩わせられることもなく、死の恐怖に怯えることもなく、一万人の殺人を犯した罪悪感に苛まれることもなく。魘される夜が終わる。
――救いは、死にあった!
それなのに、どうして。
目を、覚ましてしまったのだろう。
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