一方で、張本人である見習いも愕然としていた。首ちょんぱ確実とはいえそれがいつなのか知らされず、ただ怯えることしかできない。あの日以来刀剣たちは見習いに声すらかけず、放置されている。食事の用意すらされなかった。腹が減ったのなら厨房で残飯でも漁れと燭台切は冷たく言い放ち、ほとんどの刀剣は残さず食べてしまうので料理の際に出た野菜くずや御釜にこびりついた米などを必死になってかきあつめている。自慢だった美貌は肌が荒れ髪はパサつきストレスでげっそりと頬がこけた。なんとか許してもらおうと取り縋ってみても「不貞不忠の輩に和睦の道はありません」と江雪左文字でさえ許してくれない。とんでもないことになった。政府高官である父に泣きつこうにも端末は取り上げられてしまっている。日々近づいてくる死の足音に怯えながら、見習いは生きあがいていた。
なにより恐ろしいのは、眠っても夢を見ることだ。
夢の中では歌仙兼定が審神者とふたりで過ごしている。彼がどれだけ彼女を慈しみ、初期刀としてだけでなく父として友人として育ててきたのか見習いにだってわかるほどだ。それだけならただ微笑ましい夢ですむが、最後、審神者が歌仙から離れ視界から完全に消えると、歌仙兼定はくるりと見習いを見る。宝石のように美しいエメラルドグリーンの瞳に殺気を漲らせ、見習いを見て哂うのだ。そこで目が覚める。
眠りによる現実逃避さえ許してはくれない。歌仙はただ笑っているだけだが夢の中で彼らは少しずつ近づいてきている。目の前に来た時自分がどうなってしまうのか恐ろしい。飛び起きた彼女は鏡を見て目を見開いた。
細い首にうっすらと一本の線が滲んでいた。
「いや、いや、いや…、いやああああああああ!!!!!」
泣き叫んでも助けは来ない。本当に、なんてことをしてしまったのだろう。