刀解を希望するものが、左文字兄弟の他にいたようだ。
後日鶴丸と江雪左文字が交渉して決めた日取りに、三兄弟のほかに山姥切が兄弟と呼びかけた山伏姿の男と少年が、私たちの住む離れの前にやってきた。
あの場で起きたことに、彼らも何かを感じたのだろうか。
まず一番はじめに刀解を希望した、小夜左文字が進み出て頭を下げた。
「希望を叶えてくれて、ありがとう…」
「もし主に刀解を断られたらどうしていたんだ?」
鶴丸が意地の悪そうな顔で尋ねる。その疑問を予測していたかのように、小夜左文字はきっぱりと答えた。
「僕らだけで出陣して、二度とここに戻らないつもりだった。折れて本霊に還るまで、戦い続けようと兄様と三人で話し合った」
「……そうか」
次に、堀川国広が進み出た。
「ほんとうに、す…」
「兄弟、それはならぬ!」
頭を下げて謝ろうとした堀川国広を、山伏国広が強く止めた。
「どうして」
「拙僧たちは、謝ってはいかん!
謝れば赦しを求めることに繋がりかねん。それでは、彼女の憎しみ、苦しみの行き場がないではないか…我らが謝罪をすることは、もはや自己満足にしかならぬ」
確かに一言でも謝罪の言葉を口にしていたら、堀川国広の刀解はしなかっただろう。
山伏国広の言葉は正解だった。
「拙僧たちが楽になったところで、どうする」
「……そうだね」
一人ずつ刀解をしていった。
刀解の方法は居たって簡単だ。
私と彼らの間にある目に見えない糸を裁ち、本霊にお戻りくださいと念じるだけだ。
刀剣男士が刀解を受け入れている場合、それだけで肉体は宙に解けるように消え宿る魂も還っていく。
宗三左文字の番が来た。
「何故先代を、彼らがこんなにも慕っているか知っていますか?」
「知らないわ」
宗三左文字は気だるげに溜息を吐いた。
「皆、彼女に恋をしていたからですよ。あなたがここに繋がれた理由は、どう取り繕ったところでただの恋する男たちが引き起こした惨状です。
ありもしない約束を信じ込み、ただひたすらに主の帰りを待ち続け…いつからか歪んでしまった。
僕はあなたに謝りません。後悔しません。
矢張り彼女のほうが素晴らしいと思います。…ですが、これ以上は見苦しいだけですね」