鈴蘭は鶴丸に花を捧げる

会員番号:二〇〇〇八一六

名:鶴丸国永

呼び名:特に無し

要望:特に無し

その他:一見の客のため特筆すべき点は無し。


初物、すなわち処女であった私は今回に限りそれなりに高値がつけられている。
三日で客が着くのは早いほうだと女将が言っていたのを思い出しながら、端末に送られてきた私を買った客の情報をぼんやりと見つめた。
見た目だけは大人しそうな女である私だが、華が無くともこういったコンセプトのお店ではそれすらも利点となるらしい。
貴方みたいなタイプは人気が出るのよ、頑張ってと応援してくれた先輩の言葉が浮かんでは消えていった。

誰かが入ってきた感覚があった。私が作った領域に、知らない誰かが足を踏み入れたのだ。
私は端末をしまい、全身鏡の前で自分の恰好がおかしくないか最終確認をする。審神者の衣装に似せた緋袴は皺一つ無く、うっすらと化粧を施した顔もいつも通りだ。
おかしなところは何も無いと判断し、一つ自分に喝を入れてから客を迎えるために玄関へと歩き出す。鈴蘭のレリーフが飾られた玄関を開けば、真っ白な神様がそこに立っていた。

「お帰りなさい」

「おっと、そういう迎え方をするのか。驚いた驚いた。ここはただいまと言っておくべきか?」

……資料を見たときも思ったが、儚げな見た目に反して陽気な神様だなぁ。
からからと楽しそうに笑う鶴丸を招きいれ、六畳間に通す。
座布団に座らせてから既に用意していた茶を振舞えば、周囲をきょろきょろと見渡しながら楽しそうになるほどなぁと彼は笑った。

「そんなに珍しい?」

「ああ。主の執務室とところどころ似ているな。いや、敢えて似せてるのかこれは」

そう言って鶴丸は一気に中身を飲み干し空になった湯飲みを片手に本棚に並ぶ歴史の資料をしげしげと眺める。
鶴丸の言うとおり、客を迎える六畳間は敢えて審神者の執務室に似せて作られている。この妓楼のコンセプトを考えれば当然のことだろう。
せわしなく周囲を見渡していた鶴丸の視線が落ち着いた頃合を見計らい茶のお代わりがいるか聞いたが、これ以上はいらないとのこと。
それならばと茶を片付けた私は改めて鶴丸に向き合い、主を装いながら今日はどうしようかと希望を尋ねた。

「ふむ、そうだなぁ、君たちは主のふりをして俺たちを慰めてくれるんだろう?」

「ええ、まあ」

「だが俺の主は男だからなぁ。そこまで審神者のふりをしなくてもいいぞ?」

「……え?」

「どうだ驚いたか」

「えー、えっと……うん、驚いた」

いたずらっ子のように笑みを浮かべる鶴丸に対し、私はさぞ間抜けな顔をしているのだろう。
予想外すぎる言葉を聞いて思わず素に戻ってしまった。一体彼は何を考えているというのか。
しかし不満は飲み込み、すぐさま姿勢を正して頭を下げる。彼の主が男だというのであれば、私の出番はないからだ。

「大変失礼致しました。当妓楼には陰間や色子も居りますのですぐ女将に連絡を、」

「ああいやいや待ってくれ!確かに俺の主は男だが君を選んだのは間違いじゃない!だから顔を上げてくれ」

が、娼を変えようと提案した私を遮り、鶴丸は私の肩を掴んで無理矢理顔を上げさせる。
どういうことだと胡乱げな目で彼の蜂蜜色の瞳を覗き込めば、鶴丸はようやく私を選んだ理由を語ってくれた。

曰く、三日月に誘われて花街にきたは良いが普通の妓楼じゃあつまらない。
そもそも普通の妓楼は安い分相手が人間じゃなく同じ付喪神。それじゃ折角足を運んだのに面白みが無い。
なので少し矛先を変え、値は張るがその分素材の良い人間が集まる妓楼にしようと思った。
その中でも面白い題材を取り扱っていると思って香花楼を選び、どうせ金を払うのならばいっそのことその中でも値が張る花を買ってやろうと思った……うんぬんかんぬん。

時として女は男という生物にほとほと呆れを抱くときがあるが、どうやらそれは付喪神であっても変わらないらしい。
だから自分の主は確かに男だが私を選んだのは間違いないのだと力説する目の前の神様に、私はため息を白い目を隠すことができなかった。

「そんな目で見なくてもいいだろう!」

「いえ、そうですねすみません失礼しました」

「棒読みだな!高い金子を払っておきながらこんな扱いを受けるとは思わなかったぜ!」

「驚いたでしょう」

「ああ驚いた!」

雑な扱いをされているにも関わらず、何故か楽しそうな鶴丸国永。
成程、寮で鶴丸は驚き厨だから驚かせとけばとりあえず満足するとかふざけた情報を渡された時は笑えばいいのかそれとも教師の頭を疑えばいいのか迷ったが、間違いなくこれは驚き厨であろう。

「それで、本当に私で良いんですね?」

「ああ。……君の初めてを、奪わせてもらおう」

子供のような笑顔が大人の微笑に摩り替わり、途端色を含んだ声音へと変質した声で囁かれたことにぞわりとしたものが背中を駆け上がる。
無意識のうちに緋袴をきつく握り締め、それを見た蜂蜜色の瞳が愉悦に染まり、愉しそうに細められる。
生唾を飲み込む私の喉に、奇妙なグローブをした掌が伸ばされる。ぐっと強く引き寄せられれば、私の視界は白一色に染まっていた。

「なに、そう緊張することはない。一晩分の花代は払ってある。じっくりと蕩けさせてやろう」

耳元で甘く囁かれ、カっと頬が熱を持つのがわかった。これからすることを思うと、自然と身体が強張る。
抵抗する間もなくいわゆるお姫様だっこで抱き上げられ、足で隣室へと続く襖を開けた彼は既に敷かれていた布団の上に優しく私を降ろす。

これもまた習ったことだが、神様は基本皆床上手らしい。
そして基本的に付喪神の方々は人間に対して好意的であるため、私達娼婦に対しても無碍に扱ったりとか手酷い目に合わせたりとか、そう言うことはほとんどしないそうだ。
むしろ彼等は自分達の手で人間が快楽に堕ちていく様を見るのが大層お好きだとかで、娼婦にとって閨事で一番大切なのは理性を保つことだと耳にたこができるほど繰り返された。

「口吸いの経験は?」

「……無い、です」

「本当に初物だな」

私の上に覆いかぶさってきた鶴丸がくすりと笑い、その人形のように整った顔が近づいてくる。
柔らかく重ねられたのは彼の薄い唇で、一度ならず二度三度と。啄むようにして繰り返し口付けられ、行き場無くさ迷っていた手を重ねられて指を絡められればそれだけで私の心臓は鼓動のテンポを速めた。
覚悟はできていた。しかしだからといって何も思わないわけではない。
緊張に身を強張らせながら、唇に触れたぬるりとしたものにぴくりと肩を跳ねさせる。それが鶴丸の舌だと気付く前に、熱い舌は私の唇を割り開き無理矢理口内に侵入してくる。
入り込んできた舌は私の舌を掬い取って翻弄したかと思うと、歯列をなぞり口内をまさぐって私の呼吸を阻害する。
鼻で息をすればいいと頭で解っていても、実際にその場面に遭遇してみてできるかどうかはまた別というものだ。
時折唇が離れる際に何とか呼吸をしようとするものの、すぐにまた唇が降ってくるせいでろくに息もできない。
それからどれくらい舌を絡ませていたのだろう。
時折唾液を飲まされながらも延々と口付けを繰り返していたのだが、ようやく唇が離れた頃には私の息は上がっていて、その上涙の膜を張った視界に自分が泣きそうになっているのだと気付いた。

「おいおい、これしきで音を上げられちゃあ困るぜ?」

「ん、うん、だいじょうぶ。むしろここで止められたら苦しい、から」

「ん?どういうことだい?」

飲まされた唾液に、たっぷりと含まれていた神気。私達娼婦には神気対策として体に紋が刻まれている。
どうやら鶴丸はその説明を受けていないようだと知り、指を絡めていた鶴丸の掌を私の下腹部、おへその下の辺り……もっと詳しく言うのであれば、子宮のある辺りに誘導した。
それだけで鶴丸は何かを察したらしく、ほう、と興味深そうに呟きながら、服越しに私の下腹部をその大きな掌で撫でる。それだけで刻まれた紋が熱を持ち、ぞくぞくとした感覚が背中を駆け上がった。

「これは?」

「神気に反応する、淫紋、で……ぁ!」

「なるほど。説明を続けてくれ」

「神気を注がれれば、注がれる、ほど、快楽が……っひ、ぁうっ!」

「よくもまぁそんな術式を考え付いたものだな……人間らしいというかなんと言うか」

少しだけ呆れたような口調で鶴丸は言う。勿論その間も彼の手は布越しに私の胸を揉んでいたし、赤い舌は私の首筋を這っていた。
説明しろという割には話すことを阻害するのは何故なのか。文句をぐっと飲み込みながら彼の服を掴み、喉から漏れる嬌声が自分のものとは思えずに湧き上がる羞恥心をぐっと堪える。
ぬるりとした感覚が首筋を丹念になぞり、熱い吐息がかかる度に快感が煽られ、やわやわと胸を揉まれればそれだけでじんわりとした快感が体を包む。
既に神気を入れられた体は情欲を呼び起こされ、鶴丸から与えられる快感を甘受する準備はできている。服を掴んでいた腕を彼の首へと回せば、良い子だと囁かれて涙が零れそうになった。

「つまり君達は俺たちの手によって淫乱と化すわけか。成程なぁ、つまり俺が触れずとも神気を注ぐだけで絶頂を得ることも可能、と」

「ひぁうっ!ぁ、それは、無理……ぃっ、あ!」

胸を揉んでいない方の手、腹をなでていた手が離れ、指一本で下腹部が押される。
途端流し込まれた神気により快感が体中を駆け巡り大きく体を跳ねさせたのだが、鶴丸の言葉は間違っているのだと首を振って主張した。絶頂だけは、別の方法で無いと与えられないのだ。
だからどれだけ神気を流し込まれてよがり狂っても絶頂の一歩手前の状態でひたすらに身悶える羽目になる。
かなり苦しいのでそれは勘弁してくれと言えば、鶴丸は興味深そうに体を起こして私の下腹部を覗き込んだ。

「審神者には転用できないわけだ。だが君達には救いであり、同時に地獄を味合わせる拷問具にもなるということか」

「んっ、そう……だからあんまり、触らな、んぁ」

「わかったわかった。しかし驚きってのはどこに隠れてるか解らないもんだなぁ」

着物の前を寛げられ、下着をつけていない胸が露になる。恥ずかしさに顔を背けるものの、鶴丸は両手で楽しそうに胸を揉んでいた。
全体を持ち上げるようにして鷲掴み、包み込むように指が動き、かと思うと胸の真ん中に顔をうずめる鶴丸。
思わず自分の胸元を見下ろせば胸に顔をうずめた白い頭があって、思わずふふと笑いながら頭を撫でてしまう。

「女人は柔らかいなぁ。こんなにも俺たちと違う」

「ん。きもちいい?」

「ああ、触ってて気持ちがいい。ふわふわしているな。いつまでも触っていたい。肌触りもいい。手に吸い付くようだ」

突然の褒め言葉になんと返事をしていいのか解らなくなるが、返事をする前に鶴丸の指先がまだ柔らかな胸の突起を掠めた。
親指と人差し指で摘み上げられ、まるで悪戯が成功したような子供のような顔で見上げられ、思わず助平、と悪態が口から漏れてしまう。

「男はみんな助平さ。ここだけ硬いな?」

「わかってる、くせに」

「はは、すまんすまん。君の反応が初々しいものだからついついいじめたくなるんだ。許してくれ」

許すも何も、鶴丸は客なのだから好きなだけ私の体をいたぶる権利がある。勿論禁止事項はいくつかあるが、この程度の戯れが該当する筈も無い。
それを全て解っていながら許してくれというのだから、甘いのかそれとも何か企んでいるのか。
じんわりと熱を持ち火照り始めている身体をもてあましながらそんなことを考えていると、鶴丸は私の胸の突起を摘み上げ、もう片方に口を寄せてから楽しそうに言った。

「お詫びに驚きの快楽を君に捧げようじゃないか」

「ふあ、ぁ……っん、ぁ」

後者だった、と心の中で考えながら旨の突起を口に含まれたことに声を上げる。
温かな口内に敏感なそれを包まれ、舌で転がされれば揉まれるだけとは段違いの快感がじわりじわりと体に滲み始める。
もう片方の突起もまた指先でつまみあげられていて、肩を跳ねさせた私は鶴丸の頭を抱えて与えられる快感に身を任せた。
赤子のように吸われ、軽く歯を立てられて人生で初めて味わう他人からの快感に身をよじる。しかし覆いかぶさっている鶴丸がそれを許す筈も無く、足を絡められながら彼の唇に翻弄されるしかない。
わざと音を立てて強く吸い上げられ、唾液をすするはしたない音に耳を塞ぎたい衝動に駆られ、ぴちゃぴちゃと突起を唾液塗れにされながら段々と体が昂ぶっていくのを感じる。
彼の白い頭は存外腕の中にすっぽり収まりすわりが良い。爪を立てないように気をつけながら、彼の髪に指を絡める。

「君のここは甘いなぁ」

「ん、甘い?何も塗ったりとかは、してないんだけど、んっ」

唇が離れたかと思うと、鶴丸は吐息を吐き出しながらそんなことを言う。そして私の言葉を遮るようにして唇を重ねてから、また指先で突起をいじる。
かと思うと乳輪をなぞるように突起にぎりぎり触れないところで指先が円を描きながら肌をなぞり、次の瞬間爪を立てて押しつぶされて。
ああ、私の胸はそのうち彼の指先の形に合わせて変形してしまうんじゃないだろうか。
舌を吸い上げられながらそのじんわりとした快感に身を任せていると、ふいに足の付け根を彼の膝でぐいと押し上げられ、段違いの快感が腰から背中へと駆け上がり私の身体が跳ね上がる。
その反応に気を良くしたのか、唇を重ねたまま何度も何度も膝頭で袴越しに秘部を押し上げられ、彼の金色の瞳に見下ろされながら何度も何度も体を跳ねさせた。

「ぅあ、はぁ……っ、ぁ、いきなり……っんぁ」

「はは、いきなりじゃないさ。さて、そろそろ邪魔な着物を脱ごうじゃないか」

唇が離れたあと、私の唇から漏れた抗議にならない抗議を鶴丸は笑って流すと、私の上半身に引っかかっていた白衣(しらぎぬ)を脱がし、緋袴の結び目を解いて肌を晒させる。
袴の下に隠れていた下腹部の淫紋も丸見えになり、鶴丸は唇の端を上げてその淫紋にそっと口付けた。
そして元々下着を着けていなかった足の付け根、秘部へとその骨ばった掌が伸ばされる。
とっくに蜜を溢れさせていたそこは鶴丸の掌を受け止め、割れ目をなぞるように何度も上下に往復する指先に私は顔を背けた。
他人に一度も触れさせた事が無い場所に、今日出会ったばかりの鶴丸が触れている。熱くなった頬に火が出そうだと他人事のように考える。

「こんなに濡れているとは……ああ、だがやはり最初は此方の方が良いか。まずは君の可愛いさねから味あわさせてもらうとしよう」

「え、ぁ、待って、そんなと、こっ、ぁ……んぁあっ!」

さねとは、所謂秘芯のことだ。彼は私の上から身を退けると、私の足を広げて太ももを抱え茂みの奥へと口を寄せる。
止める間もなく濡れた秘部に舌が這わせられ、秘芯にちぅと吸い付かれた。
まさかそんなことまでしてくるとは思ってもみなかった私は彼の舌に翻弄されるしかない。
舌先で突かれ大きく舐め上げられ、柔らかくも熱い舌にこねくりまわされることによって湧き上がる段違いの快感に腰を跳ねさせる。
びりびりとした甘い電流のような快感が腰から走り、全身に伝播して私の力を奪っていく。神気が流されているわけでも無いのに、子宮が切なく疼いたような気がした。

「ぁ、ん、ぁあ……っふ、ぁ、い、ぁあっ!」

音を立てて愛液を啜られ、小さな秘芯を舌で弾かれ自然と腰が逃げ出そうとするが、細腕でしっかりと抱えられた太もものせいで逃亡は叶わない。
段々とこみ上げてくる切ないまでの快感の昂ぶりを、私は知っている。自分の手で得たことは何度かあるが、他人の手で与えられるのは初めてのそれ。
呼吸が荒くなり、足の先がぴんと伸びる。背中がそりあがり、喉が引きつり目じりに涙が溜まる。
頭の中がスパークしそうなほどに体の中で快感で荒れ狂っていて、鶴丸の頭に手を添えながら私は間違いなく絶頂を迎えようとしていた。
私の反応でそれを悟ったのだろう。鶴丸が止めを刺すように、秘芯を唇ではみながら舌先で何度も弾く。

「ぁ、ぁあーっ!い、だめ、ぁ……くる、ぁ、きちゃ、〜〜っ、んぁあぁぁっ!!」

それは頭が真っ白になるほどの快感だった。目じりに溜まった涙が零れていくのを感じながら、今までとは比べ物にならない程大きく体を跳ね上げる。
一瞬だけ呼吸が止まり、瞼の裏でちかちかとはじけた火花に、他人から与えられる絶頂の力強さに恐怖すら感じるほどだ。
押し寄せる波のような余韻に浸る体をぐったりと布団に預けるも、うっすらと汗ばむ内腿に鶴丸が口付ければ敏感になっている私の体は小さく跳ねた。

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