へし切長谷部は主を冒したい

丁寧な手つきで布団へと下ろされた私はそのまま上に覆いかぶさってくる長谷部に縋るような目を向ける。
回りくどいほどに時間をかけて昂ぶらされた身体をどうにかしてほしかった。
それでもはしたなく強請ることはせず、彼の服の袖をそっと掴むにとどめる。
ふしだらな姿を見せれば彼の興が冷め、出て行ってしまうかもしれないという打算があったことは否定しない。
いくら欲情していようと私は彼が望む主を装う必要があり、彼の主は大人しく控えめな女性なのだから。

「ふふ、あるじ……そのような目で見られては俺も我慢できなくなってしまいます」

「ぁ……」

そう言って長谷部は私の髪を耳にかけると瞼にひとつキスを落とし、耳朶の凹凸をなぞるようにして舌を這わせる。
あれだけ舐めたのにまだ舐めるのか。そう思うものの口にすることはできず、長谷部の胸元の服を緩く掴んで大人しく受け入れる。
だいたい長谷部自身「俺も」と発言しているのだ。欲情しているのは私だけではないと彼自身が口にしているのだから、自然に身を任せていればよいだろう。
にちゅにちゅと粘ついた唾液の音を響かせながら長谷部は私の耳を舐め続ける。
そして私の読みどおり、長谷部はそのまま舌を首筋へと這わせ、白衣越しにやわやわと胸を揉み始めた。

柔らかな胸を掌で包み込み、下から持ち上げるようにして揉みあげる長谷部。
骨ばった男らしい指は、布越しでもその細さとしなやかさがよくわかる。
外から中へと包み込むようにして指を動かし、柔らかな乳房の感触を楽しむようにその指は蠢く。
まるでマッサージか何かでも受けているようだ。そう誤解してしまいそうなほど、長谷部の指先は優しく丁寧だった。
じんわりとした快感がその指先から伝わってくる。発情した体はほんの少しの愛撫からも快感を掴もうと必死なのだ。

「ふあ……ぁ、ン……」

「ああ、そのようなお声を出されて……あるじ、いけないお方だ」

咎めているのは口先だけ、長谷部の口元には笑みが浮かんでいた。
やがて乳房を包んでいた掌が離れていき、手袋に包まれた人差し指が胸の天辺を探すように縦横無尽に動く。
そして私の反応をうかがいながら布越しに未だ柔らかな胸の突起を探し当てると、指先が円を描き始める。
何度も何度も胸の突起の周囲をなぞるようにまぁるい形を描くように長谷部の指は動き回り、私はまた期待を煽られて熱い吐息を零すことしかできない。

「あるじ……期待、なさっているのですか?」

ふふ、と妖艶な笑みを零しながらの長谷部の問いに、私は逡巡の末に小さく頷いた。
演技ではない羞恥心がこみ上げ、思わず長谷部から視線を逸らす。
どうやらその仕草は長谷部のお気に召したらしく、ご期待に応えて見せましょうと言った長谷部の声音はとても楽しそうだった。

「ぁっ」

白衣の中に入り込んできた長谷部の指が、肌襦袢の上から胸の突起を小さくひっかく。
布越しとはいえやっと与えられた小さな愛撫に、それを待ち望んでいた私の唇から小さな声が漏れた。
すぐさま硬度を持ち始めた突起は和装下着を押し上げつんと立ち上がり、もっと触れてくれと強請るように自己主張を始める。
長谷部の指先はそれに応えるように硬くなった突起を布越しに何度も何度も擦り上げ、その強くも無い刺激では足りないというように私の下腹部がきゅんと疼いた。

長谷部が上半身を起こし、私の上に馬乗りになる。貴方のせいですよ。そう呟いた長谷部は肌襦袢なども巻き込んで白衣の前を大きく開き、私の胸をその眼下に晒した。
ぷるんと揺れた胸を見下ろした長谷部はいささか乱暴に手袋を外すと、今度は素手で私の乳房を揉み始める。
ダイレクトに伝わってくる彼の温もりと骨ばった指先が、今度は少し粗野な手つきで私の乳房を揉みしだく。
そしてしこり立っている胸の突起へとむしゃぶりつかれ、ひぁんっと間抜けな声を上げた私はその柔らかな長谷部の舌の感触にふるりと震えた。

じゅるっじゅばっとわざとらしい音を立てながら唾液をたっぷりとまぶしつつ長谷部が胸の突起を啜り上げる。
やわやわと乳房を揉みつつ突起を吸い上げ、もう片方の突起は指の腹で撫で回される。私の胸を余すことなく堪能しながら、長谷部はその合間にうわごとのようにあるじあるじと繰り返し続けていた。
唇で挟まれ舌先で転がされ、温かな口内に含まれもみくちゃにされればじんわりとした快感が背中を駆け上がった。
この長谷部は本当に舐めたり吸ったりするのが好きなようだ。

「ひっ……ぅ、んっ……ぁん」

赤子のようにちゅぅうと吸われ、反射的に背中を逸らし悦ぶ私の身体。
それに気を良くしたのかどうかはわからないが、長谷部は只管に胸の突起を吸い続けた。
時に痛く無い程度に軽く歯を立て、かとおもうと舌の腹で何度も舐め上げ、突起に口付け指先でこね回す。

やっと唇が離れたと思っても今度はもう片方の突起を嬲り始める始末で、それから何度も何度も繰り返し口に含まれ彼に吸われた。
そんなに吸っても何も出ない。そう言いたくとも私は彼の愛撫を受け続けるしかない。
唾液でべたべたになった乳房は未だ揉まれ続けていて、触れられていないはずの秘部はじゅくじゅくと疼き愛液を垂らして止まらない。
はやく。はやく。そう強請るように何度も入り口がひくついているのが自分でも解る。
しかし長谷部の唇は離れてもまた突起へと舌を伸ばすだけで、刺激を待ち望んでいる私の下腹部へは手を伸ばしてくれない。
愛撫をされすぎた胸の突起は最早痛みすら覚えそうなほどで、唾液でふやけてしまっているんじゃないかと詮の無いことを考える。

「ぁっ、ん……っ、そんな、に、胸、ばかり……っ」

「物足りませんか?」

愉しげに、そして誘うように囁く長谷部の声は砂糖を煮詰めたように甘ったるい。
彼の指先が紅袴をたくしあげ、膝を撫でて内腿をなぞる。触れるか触れないかの微妙なラインでばらばらに動く指先が、白い太ももを何度も何度も往復する。
昂ぶった身体はくすぐったさよりも背中を駆け上がるぞわぞわとした感覚を強く感じていて、無意識のうちにその指先へと押し付けるようにして腰を揺らしていた。
散々焦らされた私の欲情を悟ったのかそうでないのか、長谷部はそんな私を見下ろして嗜虐的な笑みを零したかと思うと、内腿を撫でていた指先が段々と上へと上がってくる。
しかし茂みを何度か擽った指先はそのまま離れていってしまい、期待に胸を膨らませていた私は縋るようにして長谷部を見上げてしまった。

「答えてください」

「んぁ……ぁ、そこ、は」

「こんなにも柔らかく脆いこの肉の器を、俺が穿っても良いと?」

紅袴の帯が解かれ、みぞおちをなぞるようにキスを落とされ、臍のくぼみに長谷部の舌が入り込んでくる。
唾液をまぶすように舌先が蠢き、やがて赤い舌がその下にある淫紋に辿り着いたかと思うと、悪戯するかのように甘くそこに噛み付かれる。
熱を孕み色づいた肌を撫で回されながら、ついに耐え切れなくなった私は長谷部へと手を伸ばした。
だらしなく愛液をだらだらと零している秘部の疼きは限界に達している。

「いい、です……長谷部、お願い。もう、苦しいの……っ」

搾り出すような声音に長谷部は嬉しそうに瞳を細め、内腿を撫でていた指先を再度足の付け根にある茂みへと移動させる。
そしてとっくに溶けてとろとろになっている秘部を何度か上下に撫でると、ゆっくりと人差し指を一本、中へ埋めていく。
待ち望んでいた場所にようやく刺激が与えられることに私の唇はわななき、布団を強く握り締めながら喉を鳴らした。

「はぁ……っ、ぁあっ、入って、きたぁ……っ」

ゆっくりと指が抜かれ、そしてまた入り込んでくる。
蜜で溢れたそこは長谷部の指を難なく飲み込んでいて、抜かれそうになる度に出て行かないでと指を喰いしめ離そうとしない。
むしろ焦らされすぎたせいで、指一本では物足りなさすら感じるほどだ。
細く見える指も今は確かな質量を持って何度も抜き差しされているが、もっともっとと逸る気持ちが抑えきれず、自然と腰が揺れている。

「こんなにも蜜を垂らして……そんなに待ちきれなかったんですか?」

長谷部の問いかけにこくこくと頷きながら、増えた質量に体を跳ねさせる。指を一本増やしたらしい。
それでもやはりゆっくりと抜き差しされるだけで、物足りなさは拭えない。
洪水のようなというと陳腐だが、そうとしか表現仕様が無いほど愛液を溢れさせながら長谷部の指を奥へ奥へといざなう蜜壷は更なる快楽を望んでやまない。
長谷部がやりやすいようにと足を広げて彼を受け入れれば、長谷部は愉しそうに笑いながらまた私の胸の突起を口へと含む。
胸元と足の付け根、二箇所から聞こえる別種の粘着質な水音に鼓膜を冒されながら、ゆるゆると駆け上がってくる快感に私もまた恍惚とした。
貞淑にとか、たおやかにとか、考えていた内容ももうとっくにぶっとんでいる。

「ぅあーっ、ぁ、ぁあんっ……あ、そこ、っんン、ふ、あ」

「ここですか」

ふいに良い所を指の腹で押し上げられ、腰を跳ね上げながら悦ぶ。
長谷部はそんな私を見て笑みを浮かべていたが、しかし指の動きを早めることもそこを執拗に責める事もせず、また突起を舐めながらゆっくりゆっくり指を抜き差しする。
中を擦られることに喜びを感じていた身体は貪欲なことに物足りなさを訴えていて、腰を押し付けてみるものの長谷部は指を増やすことはすれど奥を突き上げることも、指を激しく動かすこともしてくれない。

「あ……長谷部、はせべ、お願い」

「はい、なんでしょう?」

ちゅっと胸の突起に吸い付き、小さく身体を跳ねさせる私の言いたいことなど解ってるだろうに長谷部は応えてくれない。
いや、むしろ彼は私に強請らせたいのかもしれない。そこまで考えた私は彼の首に腕を回して、ほしい、とだけ告げた。

「欲しい、ですか」

「お願い」

「まだ指が2本しか入っておりませんが」

「いい、お願い。切なくて、辛くて……早く、長谷部が欲しいの……っ」

熱く熟れた中を丹念に擦られるだけでは、満足などできやしない。
欲に濡れた瞳で長谷部を見上げ、熱い吐息を漏らしながらそう懇願すれば、長谷部も同じ熱を持って私を見下ろし、あるじと呟きながら首筋に顔を埋め指を引き抜く。
とろりと溢れた愛液が布団をぬらしたがそれを気にかける余裕もなく、私の上から退いた長谷部にうつ伏せにされ、四つんばいにさせられる。
背後にいる長谷部に秘部が丸見えになるが熱く硬いものが熟れたそこに押し付けられ、期待に溢れた胸が鼓動を早めた。

「入れますよ」

背後からのしかかってきた長谷部が私の耳元で囁いたかと思うと、うなじを舐めながらゆっくりと熱いものを埋めていく。
待ち望んでいた熱く硬いものが中を満たしていく感覚に喉を鳴らす私は、さぞ淫乱に映ったことだろう。
指とは比べ物にならない熱量に膝が震え、奥まで咥え込めば息苦しさすら感じるほど。
背後で長谷部が色を含んだ吐息を漏らしているのを感じ、彼もまた気持ちよくなっているのだと解ってこっちまで嬉しくなった。

「ああ、あるじ……熱く濡れた中が俺のものを美味しそうに咥え込んでいるのが解りますか?気持ちいいです、あるじ、あるじ……っ」

背中に何度もキスを落としながら、うわ言の様にあるじと繰り返す長谷部。
そろそろ彼も理性が飛ぶのだろうか。思考の片隅、どこか冷静な私がそんなことを考える。
長谷部の言うとおり、私の蜜壷は待ち望んでいた楔を離すまいとするかのようにきつく絡み付いている。
やがてゆっくりと長谷部のものが引き抜かれていったかと思うと、またゆっくりと中へ突き進んでくる。
先程私の中で何度も抜き差しされていた指のように、丁寧に丹念にもどかしいほどにゆっくりとストロークを繰り返す。
奥をこつん、と叩かれるたびにもどかしさと切なさが溢れ、満たされない情欲に涙が頬を滑った。

「うぁ……ぁ、ぁん……はっ、ぁ……やぁ、ん」

子宮が疼く。足りない足りない足りない。
男を知ったばかりの体が覚えたての絶頂が欲しいと主張してやまない。
背後から伸びてきた手が胸を揉みしだき、うなじをべろりと舐められるのもまた情欲を煽るだけだ。
最高潮に達した疼きに耐え切れず、腕を突っ張りながら長谷部を振り返る。

「長谷部、ぁ……お願い、だから……もっと、はやく」

「はやく、ですか」

「中、足りないの、もどかしくて、切なくて……長谷部、ねぇ、ひぁうっ」

胸をもみしだいていた掌が、下腹部をなぞり肌の上から子宮を押す。
短期間で目覚しい成長を見せている私のそこは、既に快感を味わうことを覚え始めている。
中と外、両方から刺激を受けた子宮が悦び、長谷部のものをきゅうぅと締め付けた。

「ここを……いじめてほしいですか」

限界まで腰を押し付けながら長谷部は囁いた。
待ち望んでいた最奥への刺激に喘ぎながら、私は壊れた玩具のように何度も頷く。

「なら、俺の好きにしてもいいですか」

ゆるゆると腰を動かしながら長谷部は言う。
何度も頷く私に、長谷部は今までとは打って変わって冷静な声でわかりましたと応える。
蕩けた頭でありながらそれに違和感を覚え、首だけで長谷部を振り返る。

嗜虐心に満ちた笑みを浮かべた長谷部が、私の腰を掴んだ。

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