へし切長谷部は主を冒したい

翌朝、夢を見ないほど深い眠りから目を覚ませば、もうそこに長谷部はいなかった。

色んな液体でべたつく身体にはきっちり布団がかけられていたし、上半身を起こせば枕元にはチップ代わりらしい小判が置かれているのが解った。
しかし全身のだるさが抜けない私は既に彼が自分の領域内にいないことだけを確認してから、思考もそこそこに長く息を吐いてもそもそと再度布団にもぐりこむ。
シャワーを浴びるのは後で良いから、まだ惰眠を貪っていたかった。腰がだるい。
疲れが抜け切っていない身体はすぐさま睡眠に飛びつき、私はまたとろとろと眠りにおちかけた思考でぼんやりと長谷部のことを考える。

一度も口付けはしなかったなとか。
身体を繋げてからは最後まで私の顔を見ようとしなかったなとか。

結局彼は私を使い、主を組み敷きたいという欲望をここで吐き出していったのだろう。
あるじの代わり、という体を取っていなければもっと乱暴に扱われていたに違いない。

そんな思考も、布団の温もりに包まれているうちにすぐに霧散する。
意識がゆっくりと落ちて行く。


彼と眠った筈の布団の中、やっぱり夢は見なかった。

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