薬研藤四郎は口を塞ぐ


会員番号:二〇〇〇七八九

名:薬研藤四郎(極)

呼び名:特になし

要望:特になし

その他:短刀だからといって侮るべからず。


送られてきたデータを見て、少しだけ眉を潜める。昼の部において藤四郎の名のついた短刀達を相手したことがある。
だからこそまだ少年と呼んで差し支えない彼らが女を買うという事実がしっくりこなくて、眉間の皺がよってしまった。
が、すぐにその考えを改める。例え少年の姿をしていようと、彼らは何百という年を重ねてきた付喪神。別におかしくはないのだと。
ただ(極)というのが気になった。話には聞いている。修行に出てべらぼうに強くなってきた刀剣男士のことだ。
きっと体力なども底上げされているのだろう。備考欄の侮るべからずという言葉をそう言う風に解釈して、情報を映し出した画面を暗くした。

「おかえりなさい」

「ああ……今、帰った」

敷地内に入り込んだ誰かの気配を感じた私は、いつものように玄関を開けておかえりなさいと客を出迎えた。
彼――薬研藤四郎は僅かに戸惑いながらも頬を緩めて柔らかな笑みを浮かべながら、その儚げな印象からは想像できない低く心地の良い声で応えてくれる。
ギャップが凄い。これに慣れる日は来るのだろうか。一生来ない気がする。
執務室もどきの部屋に通した後、それぞれ座布団に腰掛けてから私はいつものように茶を用意し始める。
楽にしていいよ。そう告げれば薬研もまた防具を外して身軽になると、私の用意した茶を飲んでから一息ついた。
少し疲れているようだ。

「お疲れ気味?」

「ん?ああ、まぁ確かに昔に比べたら出陣回数は増えたからな、だがそこまでじゃないさ」

「無理はしないでね」

「そうはいっても、大将の要望には応えてやりたいからなぁ。重宝されるのも嬉しい。修行に出た甲斐があるってもんだ」

多少の疲れより、自分を使ってくれる現状のほうが嬉しいということか。
ははっと男前に笑ってお茶を飲み干す彼に、私はそっかぁと曖昧に笑うことしかできなかった。
まだまだ庇護されるべき子供の見た目をしている短刀である彼を、審神者は戦地に送り出すのだという。
頭では解っていても、やっぱり違和感はぬぐえなかった。だって、子供じゃないかと思ってしまうのだ。
そう思ってる時点で私はやっぱり審神者にはなれないのだと思う。

「ん、薬研が頑張れるならいいの。でも辛いときは辛いって言ってね。言葉にしないと伝わらないことって、きっといっぱいあるから」

「……。そう、だなぁ。口にしなきゃ解らないのが人間だからな。それがたまにもどかしいときもあるが」

薬研は意味ありげにそこで言葉を切ると、長く息を吐いて縁側から見える小さな庭へと視線を移す。
私の背にある梅の木があるだけの小さな庭はそれほど手を入れていない。精々見苦しくならないよう雑草を引っこ抜く程度だ。
特に見るべきところはないと思うのだが薬研がその庭を眺めながらふっと微笑を漏らしたのを見て、思わず私もつられて庭へと視線を移してしまう。
薬研はそんな私を見て何を思ったのかくつくつと喉の奥で笑った。

「すまん、庭に何かあるわけじゃないんだ」

「ん?そうなの?」

「ああ。アンタの言ったことを考えてな……せっかく心配してくれたんだ、この際甘えてやろうかな、と」

そう言って腰を上げた薬研は四つんばいでにじり寄ってくると、私を背後から包み込むように抱きしめる。
白い手首を覗かせながら、粟田口特有の紺色の軍服に身を包んだ彼が密着してきた。
前に回された腕が私の胸元で交差する。そして腰に響くあの低い声で囁いてくれた。

「どうせなら一緒に風呂入ろうぜ、たぁいしょ」

ぞくりと。背中に甘い痺れが走った。くすくすと耳につく笑い声は私の反応を楽しんでいる。
その熱を孕んだ甘い囁きにカッと頬が熱を持つのが解った。
本当に彼は短刀なのだろうか。蛍丸みたいな刀種詐欺じゃないだろうな。

「ん……いいよ」

しかしまぁそんな愚痴口にできる筈もなく、黒い手袋のされた掌に私の手を重ねて振り返れば触れるだけの口付けを一つ落とされる。
色の薄い小さな唇は、その見た目に相応しくどこか冷たい。基礎体温が低いのだろう。
じゃあ行くか、と腰を上げる薬研に続き、私もまた腰を上げる。風呂場までの道のりを彼は知っているのだろうか。
一見の客ではないようだから、知っているのだろう。

何故か手を繋いで廊下を歩き始めた彼に釣られ、辿り着いたのはそこそこの広さを持つ仕事用の風呂だ。余談だが、二階にはもっと小さな個人用の風呂もあったりする。
私はまずバスタブに湯を張るため、服も脱がないまま風呂場に足を踏み入れてコックを捻った。
二人ではいるのにちょうど良い程度の湯船が満たされるのはそこそこに時間がかかるに違いない。
風呂場に備え付けられたパネルを見れば15分の文字が浮かび上がってきて、まぁお互い身体を洗ったりなんなりしていればその程度の時間は経つかなという程度だった。

「お湯、15分くらいで溜まるって」

「それじゃ、それまでに身体洗っとくか」

そう言うと薬研はその両手を私のほうに伸ばしてくる。
意図がわからずに彼の藤色の瞳を覗きこめば、穏やかな色を乗せた瞳でじっと私を見つめながら、脱がせてくれ、と甘ったるい声で私に強請ってきた。
もしかしたら審神者に甘えたいけど普段は我慢してるのだろうかと考えながら、小さく笑みを零しつつ良いよと言ってまず黒い手袋から外してやる。
するりと抜けた手袋の下から現れたのは白く細い指。この掌が腰に佩いている刀を手に戦場を走っているなど、想像もつかない。

続けて彼の襟元に手をかける。仕事で男の裸なんて見慣れてる筈なのに、何故か凄くどきどきした。
細々した武具や防具、マントの類は既に執務室もどきの部屋で外しているため、彼の現在の格好は至ってシンプルだ。脱がし方が困ることが無いのは幸いか。
紺色の軍服のボタンを一つ一つ外しながらそんなことを考えた。

「なぁ」

「なぁに?」

「今、何考えてる?」

「薬研が防具とか外してくれてたから脱がすのに困らなくて良かったって考えてる」

「ぶはっ、色気の欠片もねぇな」

「すみませんねー、こんな朴念仁でー」

「いやいや、俺も雅なことは解らんからな。お互いちょうどいいんじゃないか、これは」

笑う彼の黒いネクタイをしゅるりと解き、手袋と一緒に洗面台の上にある小さな籠の中に丁寧に置いておく。
続けて彼のシャツのボタンを一つ一つ外していってやれば、白く細い成長途中の少年の身体が少しずつ露になる。
少年特有の線の細さと男性の骨ばった身体のちょうど中間といったところか。
しかし力を入れたら折れてしまいそうな独特の線の細さを際立たせる色白さを持った体には程よく筋肉がついており、ただ細く頼りないだけではないのだと見ただけで解った。

「そんなに見てくれるな」

前をはだけたシャツの隙間、覗く肌に見とれていた私の手をとる。
ちゅっと音をたてて掌にキスをしながら、薬研は視線を此方へと流しながら艶やかに囁く。

「照れるだろ?」

くすり。
僅かに弧を描いた唇で私の指先に口付け舌なめずりをする。
色の薄い唇から覗く赤い舌が、やけに扇情的に見えた。

カッと頬が熱を持つ。どこがだ。照れてるのはこっちだ。
言葉を唾液と共に無理矢理飲み込み、手を離して貰ってから彼のシャツを丁寧に脱がしていく。
そしてズボンへと手を伸ばす前に、薬研は私の袖を掴んで動きを阻害した。今度は何だ。

「俺も脱がせてやるよ」

「え」

別にいいよ、という前に薬研は私の緋袴に手をかけていた。
するりと前の結び目を解かれ、緩められてできた隙間を広げれば緋袴は重力に従いすとんと落ちる。
白衣も脱がされ、情欲を煽るような赤色で仕立てられた肌襦袢もするりと奪われた。
褥の中で肌を晒すのとはまた違う、光の下で一糸纏わぬ姿を晒すことに羞恥心が湧き上がりバスタオルで体を隠そうとしたものの、薬研の腕の中に閉じ込められてしまえばそれも叶わない。

「綺麗だ」

「ぁ……」

「肌も、やわいな。俺達とは違う」

そう言って私の首筋に口付けを一つ落とし、背中に回していた手が指一本で背筋をついとなぞりあげる。
肩を跳ねさせた私に薬研は小さく笑うと、それじゃあ入るかと笑って乱暴にズボンと下着を脱ぎ、靴下を放り投げた。雑だ。

「身体、洗ってやるよ」

「え、いやいや。悪いよ」

「俺が洗ってやりたいんだ。いいだろ?」

湯気のこもる浴室に足を踏み入れた後、薬研にそう強請られてしまえば否といえる筈も無い。
私は苦笑と共にそれを受け入れ、二人揃って湯をかけて程よく温めたバスチェアへと腰掛けた。
ざっとシャワーを浴びてから備え付けのボディソープをたっぷりと使って泡立て、薬研はそれを素手にとってから私の体へと伸ばし始める。
薬研の戯れだと解っている。解っていても男の子に体を洗われるという事態に私の心臓はテンポを速めていた。

ぬめりの強いボディソープは職場備え付けのもので、こういう事態を想定して用意されていたのではないかと疑いたくなる。
鏡を前にした私の背後からぬるぬるとした指先が肩を撫で、腕を這い、指先を絡めあいながら体中を泡塗れにしていく。
洗われているだけ。洗われているだけ。そう自分に言い聞かせても薬研の手つきはどこか淫靡で、風呂場の温かさとは関係ない熱を持つのを避けられそうになかった。

「ここ、柔らかいな」

そう言って下から持ち上げるようにして掬い上げられたのは私の胸だ。たぷたぷとその柔らかさと重みで遊ぶように何度も持ち上げながら、ボディソープ塗れにされていく。
見たくなくとも目の前にある鏡に、脇の下を通り私の肌の上を這っている薬研の白い腕がしっかりと映っていて、目を逸らすこともできない。
時折リップ音を立てながら私のうなじにキスを落とし、何が楽しいのか終始くすくすと笑っている薬研のなすがままになるしかなかった。

「ああ、ほら……色づいてる」

「ぁ、やん」

私の肩に顎を乗せ、鏡越しに私の顔を覗き込みながら薬研が囁いた。同時に優しく胸の突起をつまみあげられ、喉の奥から引きつったような嬌声にも似た声が漏れる。
しかしボディソープでぬるついた指先では滑ってしまうのだろう。ぬるりとした感触と共にすぐに薬研の指先は離れていったのだが、それが楽しかったのだろうか。
薬研は摘んでは離し、摘んでは離しと私の胸の突起で遊び始めた。柔らかさを損ねたそこは薬研につままれるたびにじんとした快感を私の体に伝播させる。

「やらしいなぁ。気持ちいいのか?」

「ん、ぅん」

外から内へ包むように優しく胸を揉みあげながら、背後から胸を揉みしだく薬研。解っていっているのだろう。
頷く私の赤くなった頬に口付けながら、その掌が腹やわき腹を撫で太ももを這う。足を持ち上げ、膝を、ふくらはぎを、這っていく掌は変わらず淫靡なまま。
背中に密着する彼の胸板の硬さを感じ、鏡の中の私は恥らうように頬を染めている私の顔があった。

「あとはここ、だな」

「あの、流石にそこは自分で洗う、から」

「なに、遠慮すんなって」

背後から伸びてきた手が下腹部を通り過ぎ、足の付け根へと伸びていく。
洗うのではなく悪戯するの間違いではないのか。そう思いながらも、ボディソープとは違うぬめりを持ったそこを撫でられれば抵抗などできるはずもない。
擽るようにして割れ目を撫でられ、くちくちと音を立てながら指が上下に往復する。
もう片方の手はまた胸の突起をつまみ上げていて、二箇所同時に指先で弄ばれ、背中を丸めて湧き上がる快感を抑えようとしても薬研がのしかかってくるだけで快感からは逃れられない。

「ぁ……はっ、ん……ぁん」

「エロい声だな、俺も興奮しそうだ」

はぁ、と熱い吐息を漏らしながら泡塗れの体を密着させつつ薬研は囁いた。
そして言葉の通り私のお尻の辺りには硬くなりつつある薬研のものが当たっていて、唇から漏れた声が風呂場に反響するのを聞きながら下腹部がきゅんと疼くのを感じていた。
このまま致すのだろうか。湯気に満ちた浴室でのぼせたようにぼうっとする頭でそう考え、薬研を振り向けば藤色の瞳とかちあった。
どちらともなく口付けようとして唇を重ねあわせるために顔を近づけたその時、あと一センチというところでまるで計ったようにピーピーという電子音が浴室に響く。
どうやらお湯をため終わったらしい。

「……この部屋監視は?」

「されてないよ……」

「そうか」

同じことを思ったのだろう。顔を上げた薬研は僅かに眉をしかめながらも、手を離してシャワーヘッドを手に取った。
気が逸れたらしい。私の体についている泡を落としていきながら、それじゃ俺も身体洗うかねぇなんてぼやいている。
少し疼く身体を浴室が暑いせいだと自分を誤魔化した後、私は薬研に向き直って私も薬研の身体を洗うと立候補してみたが、此方は丁寧にお断りされた。何でだ。

「じゃ、じゃあ髪!髪洗う!」

「いやいや、何でそんな洗いたがるんだ」

「だめ?」

「駄目じゃあないが……」

「一人だけ湯船に浸かっていても先にのぼせて終わっちゃうしさ、ね?」

「あー、それもそうだな。じゃあ頼む」

私の主張に折れてくれた薬研にやったーなんてわざとらしく喜びながら、シャンプーを手に取り薬研の背後に回ろうとした。
が、頭を下げるから前から洗ってくれといわれ、思わずシャンプーハットいる?と確認してしまった途端、噴出された。
実はあるんだよ、一応。刀剣男士用のシャンプーハット。使ったことないけど。

「背中を見せるのはちっとなぁ」

「あ、そっか。刀剣男士だもんね」

「そういうことだ。悪いな、あんたがどうとか言うわけじゃないんだ。クセみたいなもんさ」

「ううん、謝らないで。薬研が悪いわけじゃないから」

それでも頭を下げ頭頂部を見せるのは良いのだろうか?背中を見せるよりはマシ、ということなのかもしれない。
そんなことを考えながら泡塗れになっても指どおりの良い髪を洗いながら、頭皮マッサージなど試みてみる。
小さな頭をもみもみすれば薬研の口からホッと息を吐くように声が漏れた。

「あー、気持ち良いー」

「薬研、おじさんくさいよ」

「弟達の髪なら洗ってやってるんだが、人に洗ってもらうなんざ久しぶりだからなぁ」

「洗ってもらったことあるの?」

「顕現したばっかの頃にな」

「なるほど」

後頭部から前頭部まで満遍なく指を動かしていると、ふいに薬研の掌が私のほうに伸びてきた。
そして私の膝頭に触れたかと思うと、天辺に収束していた五本の指先が花が咲いたように広がる、それも、触れるか触れないかの絶妙なタッチで。
途端にぞわぞわとした感覚が身体を駆け上がり、間抜けな声を上げながら飛び跳ねた私に薬研の低い笑い声が耳に届く。

「もう、悪戯ばっかりして!」

「おれっちも短刀なんでな」

お前みたいな短刀がいるか。
心の中だけで突っ込みながらお湯をかけるよと告げれば流石にそちらは自分でやると言われ、お湯を出したシャワーヘッドを薬研の手に持っていってやる。
タイルが水を弾く音を聞きながら薬研がシャンプーを流し、身体を洗い始めた横で私もさっさと頭を洗ってしまえば、全身さっぱりしたところでようやく湯船へと足を漬けた。
身体を沈めれば二人揃ってほう、と息を吐いていて、思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

「なぁ、こっちこないか」

「そっち?」

「ここだな」

ざぷりと波を立て、その細腕からは想像できない力強さで私を引き寄せた薬研の腕の中に閉じ込められた。
ただし今度は向かい合っている形で、だ。彼の胸板に手を当て、その白い太ももの上に乗り上げれば嫌でもあたるものの感触に気付いてしまう。
緩く立ち上がっているであろうそれを慰めることこそ私の役目なのだが、薬研は一向にそれを求めようとしない。
今もまた先程の仕切りなおしというように啄むように口付けを繰り返し始め、下唇をはむはむと甘噛みされ舌を強く吸い上げられ、送り込まれた唾液を飲み込む。
頭がぼうとし始めたのは行為のせいか、それとものぼせ始めたのか解らない。
そんな私を正気づけるように薬研が足を動かし、割れ目をぐりと押し上げられる。秘芯を押しつぶされ、とろんとしていた私の目は思い切り見開く羽目になった。

「ぁあっ、ん……っ、んぅ、ふ……はっん」

漏れそうになった悲鳴は、薬研の口の中に消えていった。開いた唇に噛みつかれ、舌を絡ませて私の嬌声を飲み込む。
その間にも薬研の足はぐりぐりと私の割れ目をいじめているし、逃げるなというように腰にまわされた腕が肌を撫でて欲情を煽っている。
もう片方の手は胸の突起を弄り始めていて、どうやらこの短刀は風呂場の中で私を発情させる気満々のようだ。
唾液を混ぜ合わせ延々と口付けを繰り返し、口の中を嘗め回されるのがたまらなく気持ちがいい。
水音を浴室に響かせながら続けていた口付けは終わりがないように思えたが、私の瞳からほろりと涙が零れたところでようやく終了した。

「はぁ……っん、ぁ」

「膝で立てるか」

「う、うん」

言われた通り、薬研の肩に手をついて湯船の中で膝立ちになる。音を立てて上半身がお湯から上がり、薬研の指はお湯とは違うぬるりとしたものが溢れる足の付け根へと向かった。同時に胸を舐められ、私は今度こそ浴室に嬌声を響かせはじめる。
ちゅっちゅっと音を立てながら胸を吸われるのが恥ずかしいやら気持ちいいやら、ぼうとした頭ではそこのところの判断がつかない。
しかし入り口を擽るように撫でた後ゆっくりと入ってきた薬研の指は確実に気持ちよくて、中をほぐすようにゆっくりと動く指に逆にもどかしさすら感じてしまうほど。
軽い抜き差しの後に奥を擽り、ぐるりと中をかき混ぜられて私は背中を逸らせながらびくりと跳ねた。

「ぁ、ぁん、はっ……うぁ、あ、ぁあ……っ」

丁寧に丁寧に、中を傷つけないよう気をつけながら薬研の指が動いているのが解った。
きっとこれがお湯の中でなければぐちゅぐちゅと卑猥な水音がしていたのだろう。
胸の突起を口内に含んだ状態で舌で押しつぶされる、かと思うと歯で甘噛みしながら舌先で弾かれてそちらからの刺激でもまた肩が跳ねてしまう。

「指、増やすぞ」

「んっ、ぁ……そこ、ぁ、だめ……っんンっ!」

増やされた二本の指で、イイ所を指の腹で押された。腰を跳ね上げる私の胸の突起から唇が離れ、乳房にちゅぅっと吸い付かれる。
脇に近いそこをべろりと大きく舐め上げられ、温かくぬるりとしたものの感触に私の肌が粟立つ。

「やっ、あと、つけちゃだめ……ぁっ」

「解ってる。つけないさ」

脇の下あたりにかぷりと噛みつかれ、かと思うと今度は離れた舌が鎖骨のくぼみを何度も舐め上げる。
その間にもじゅくじゅくと熟れ始めたそこを指が何度も往復する。イイ所を延々と押し上げ私を追い詰め、乱していく。
合間合間に悪戯に動いた指先が奥を掠めるものの、指の長さが足りないせいで最奥には届かない。
それでも時折子宮口を掠める指先にも快感を覚えてしまって、私の身体は確実に神様達に躾けられているようだと嫌でも解ってしまう。

「なあ、もういいか?アンタの中に入りたい」

「ぁんっ……ん、はいってきてぇ……っ」

とろとろに溶けた中から指が引き抜かれ、色っぽいと息を零しながら薬研が言う。
私もまた奥を突き上げるモノが欲しくて、薬研の頭を抱え込みながら強請った。
腰を捕まれ、位置が調整される。そこで胸の谷間にちゅっと口付けた薬研に腰を下ろせるかと聞かれ、頷いた私はゆっくりと腰を下ろしていった。

先端を飲み込み一番太いところがぐっと入り口を押し広げる圧迫感を堪えながら、徐々に中を満たしていく熱いものに長く息を吐いて堪える。
そうして彼のものをくわえ込んでいけば、こつんと熱く硬いものが子宮口をノックしたかと思うと更にぐっと押し上げられる。
ゆっくりと全てを私の腹に収めたあと、ふるりと震える私によくできましたと褒めるように薬研はまた口付けてくれた。
中が慣れるのを待ってくれているのだろうか。何度も何度も口付けを繰り返す頃には挿入による圧迫感も慣れ、薬研の体に体重をかけないようにする程度の余裕も生まれる。

「はぁ……きついな、気持ちがいい」

「ん、ほんと?」

「ああ、動いていいか」

「うん……ぁんっ!」

私の是を確認した薬研は私の腰をしっかり掴んだかと思うと、ゆっくりとしたピストン運動を開始する。
浅い突き上げ何度も繰り返し、彼に揺さぶられた私は湯船の湯を波立たせながら彼のカリ首がイイ所を擦り上げる気持ちよさにはしたなく喘いだ。
何度も何度も、突き上げるというよりは揺さぶるといったほうが正しいその動きに合わせ腰を振りながら、薬研の小さな頭を抱えて風呂の中で蕩けた思考回路で快楽を貪る。

「んぁっ、ぁっあ、あ、ぁあっ、ぁーっ、あぁーっ」

「はっ、良い締め付けだ……俺のものをよぉく咥え込んでやがる」

「ふあんっ、ん、んっんんっ、あ、ぁあっ、あ、ぁあーっ!」

だんだんとストロークが大きくなっていくのが解った。薬研の唇から漏れる色っぽい吐息に、彼もまた感じてくれているんだと解る。
時折腰骨に指を這わされたり、乳房に軽く噛み付かれたりしながら何度も何度も中を擦りあげられる快感に酔う。
彼が自分の快感を追い求める以上に私を良くしようとしてくれているのだろうということは、口に出されずとも解っていた。
変な性癖の押し付けも無いし、とても優しい。上客だなぁとどこか冷静な頭の隅っこでそんなことを考える。

「んっ、は……なぁ、体勢変えてもいいか」

「う、ん……っはぁ、ん」

薬研の申し出に頷けば、ずるりと抜かれる硬くそそり立ったもの。
立ち上がろうとする彼に釣られて私も立ち上がれば、とっくに温まっているどころか温まりすぎている体で湯船から上がる。
もしかしたらこのまま行為を続けることによって私がのぼせないか心配してくれたのかもしれない。
しかし鏡の前で所謂立ちバッグの体位を取ることになった時点で、彼もやっぱりちょっと変態なのかと少しばかり悩んだ。

「ふあ……ぁ、あ……っ」

腰を捕まれ、先程まで全て飲み込んでいた筈の彼のもの再度受け入れる。
体位が変わったせいで先程とはまた違うところを強く擦り上げられるのを感じながら、上半身を倒し鏡の前で快感に震えた。
掌ではなく肘を鏡につくだけで大分体勢は楽になる。その分お尻を薬研に突き出す形になるので羞恥心は倍増するがそれも今更だ。
顔を上げれば快楽に蕩けた表情をした私の顔がそこにあって、思わず薬研のものをきゅぅと締め付けてしまった。

「っん……なんだ、自分が抱かれる姿を見て興奮してるのか?」

「ちが、ぁ……ん、ふあ、あっぁあっ、さっきより、激し……っ」

「好きだろ?」

「ふあんっ!」

お湯の中でない分、遠慮なく動けるということだろうか。
パンパンと肌と肌がぶつかる音を響かせながら、薬研は腰を打ち付けてくる。
その度に彼のものが子宮口を押しつぶし、先程とは比べ物にならない勢いで中を擦り上げて私を揺する。
開きっぱなしの唇からはひっきりなしに嬌声が漏れ、唾液が零れてタイルを汚す。
鏡の中では背後から突き上げられた私の胸が揺れているのが見えた。

「あんたの声、響くなぁ。ここの音も、それに負けじと随分響く」

そう言って後ろから身体を密着させてくる彼の手が、腹を撫でて結合部へと伸びる。
激しいピストン運動を止めてぐっぐっと奥を押し上げる動きに切り替え、伸ばされた掌はそれを補完するように結合部を撫でてから秘芯を擦り上げる。
蕩けた脳みそに追加で与えられた快感は鮮烈過ぎて、腰を大きく跳ねさせながら彼のものをきつく締め付けた。
それがまたもっと動いてくれとはしたなく強請っているようで、背中に降り注ぐ口付けを感じながこぼれそうになる涙を必死に堪える。

「ぁ、あー、ぁあっあ、あぁーっ、あ、んっ、やげ、あ、ぁあ……っ!」

「あー、すっげ。きっつ……いっぺん、出していいか」

秘芯を押しつぶされたときの締め付けが随分とお気に召したらしく、薬研は私に確認をとってから腕を引っ込めた。
そして私が頷いたのを確認すると、がつがつと腰を降り始める。あ、さっきまでは手加減してくれたんだな、なんて。
突然襲い掛かってきた甘い痺れの荒波に気付かされながら、狭い浴室に甲高い嬌声を響かせ涙を零す。
間隔が狭まり一層強くなった肌のぶつかる音に呼応するように、私の喘ぎ声もまた切羽詰って叫び声に近づく。
激しさを増した突き上げから与えられる快感に私の腰はもう砕けそうで、全身に広がる快感が四肢の感覚を奪っていく。
背後から伸びてきた手が胸を鷲掴みにし、それでも傷つけないよう手加減されて胸の突起を摘まれ、うなじに何度もキスを落とされながら薬研の呼吸が段々と荒くなっていくのを他人事のように聞いていた。
結合部が、下腹部が、熱く熟れてぐずぐずに融けて快感が弾けそうで、もういっぱいいっぱいだったのだ。

「ぁー、出る……っ」

「んっ、なか、中に、ぁ、んっあっああーっ、おくに、らし、てっ、ぁ、ぁあーっ、――んぁっ!!」

びくん、と大きく先に震えたのは一体どちらなのだろう。
一番奥でどくどくと注がれる熱い子種に、どちらともなくまた息を吐いた。

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