A
あの情熱的──と、いうよりは。
むしろ動物的といった方がそれっぽい情事から、早三日。
私は未だ痛む腰を抱えながら、講義の為に重たい身体を引き摺って大学の授業に繰り出ていた。
「――――――――」
だけど教授の言葉なんて全然頭の中に入らなくて。
未だに頭の中は、あの玩具みたいに揺さぶられた行為に染まり切っている。
だって、忘れられないほど気持ちよかったのだ。
そりゃもう、他では満足できないくらい、すごく、すっごく。
かり、と行儀悪く歯でステンレスのスプーンを噛んだ。
頭の中は、まだふわふわしたまんまだ。
「──でさあ、……ねえ、ちょっと、聞いてんの?」
「…………はあ」
「ねえ聞いてないじゃん〜〜っマジで頭イかれたんじゃないの?」
「……ふふ、ふへ、えへへ…………」
「……マジで頭イかれてるわ」
今はお昼時。
ざわざわと賑やかな食堂の片隅で、私は友達と一緒に食後のデザートに齧り付いていた。
今日食べたお昼はラーメンだけど、意外と食べ合わせというものは気になんないもので。
特に上京組で一人暮らしをキメてる私は、誰に指図されることもなく自由気ままな食生活を貫いていた。
食べたいものは食べたい時に食べるのが一番なのである。
そんな私と一緒にお昼を取っているのは、同じ学部の同じく上京組の友達で。
家も比較的近いこの子とは、平日休日問わず一緒に飲んで遊んでを繰り返している。
ついでに言うと、こいつも私と同じく割とゆるい。
なにがって、股がだ。
「ねえ〜〜。そんなによかったの?」
「……んふっ」
いかにもちゃちい作りの安っぽいチーズタルトを突きながらそう問いかけてくる友達への返答は、腑抜けた笑いひとつだけ。
だけどそれで十分伝わったようで、彼女は「きっも」と吐き捨てながらもにやにやとこちらを見てくる。
その瞳は野次馬のそれだ。
「私さあ、まだちゃんと聞いてないんだけどお?」
「ん〜〜?」
「あんたが、誰と、熱い夜を過ごしたのかってこと」
「ふっんふっ、あ、熱い夜ってっんっふふっ!」
まさかの言葉のチョイスに思わず吹き出してしまう。
でも大丈夫だ。口の中のプリンは飲み込んでいた。
しかし熱い夜。
なんだかどことなく古臭いワードである。
「……ききたい?」
「聞きたい」
こそっと声を潜めれば、同じようにこそっと声を潜めてくる。
基本的に性質が近い私たちは、性格も感性もかなり似ている。
だからこそ、こういう下世話で下品な話も、そりゃもうよく盛り上がるというわけで。
にまにま緩む頬を戻す努力もしないままの私に、彼女はカバンとお盆をもって空いていた私の横の席に滑り込んできた。
ここは食堂の中でも端の端。
声を潜めて注意すれば、小さな話し声なんて、周りの喧騒にかき消されるだろう。
「──まずね、すっごくイケメンだった」
うっとりと頬に手を当て微笑めば、横からは「ひゅう!」と口笛の真似事。
この子は口笛が出来ないからその擬音を喋ったのだろう。
なんとなく間抜けだ。
「そんでね……すっごく巨根」
「あんたが言うって相当じゃん……!」
ひゃ〜〜なんて言いながら口を押える友人に、なぜか私の気分が良くなってくる。
だけど本当に、すっごく太くて長くて立派だったのだ。
今まで私が咥え込んできたのはなんだったの??って思ってしまうくらい、ビキビキ脈打つ血管を浮き立たせたあのおちんちんは、思い出すだけでお股が濡れちゃうほどエッチで素晴らしいものだった。
あの顔にあんな凶悪なものがついてるとか、軽く詐欺である。
「ちなみに太さってどのくらい?」
「え? えーっと、そうだなあ……」
はあ〜なんてため息をこぼしながら、雌になった心を数日前に飛ばしていたら。
興味津々に息を荒げる彼女は、そう私に問いかけてくる。
これはあれだ。
太さ次第では、相手を突き止めて自分も寝たいと思ってるんだろう。
繰り返すけど、こいつもなかなかのビッチである。
しかし、太さ。
正直口でしゃぶることはなかったからいまいち大きさがわからない。
どのくらいって、どのくらいだ……。
ペットボトルよりは太くなかった、はず。
太さ、太さ……。
「……!」
ふいに目についたのは、自分の手首で。
思わずはっと息を呑みながら、その手首に反対側の指で輪っかを作って、周囲を測る。
そしてそのまま作った輪っかを、机の下の、というかスカートの中に潜り込ませて大事なところにぴとりと当ててみた。
──あ、こんな感じだったかもしれない。
ちなみに私の行動をガン見してる友人は、両手を口に当ててなんか劇画みたいな顔してる。
「私の手首くらいはあったわ」
「え、やばくね??」
めちゃくちゃヤバいと思う。
いや──うん、ものすごくやばい。
何がヤバいって、こんなものが入った私の下のお口がヤバい。
いやもうお上品になんて言ってらんないわ。
私のまんこの伸びしろが恐ろしい。
「え、え〜〜、今度あんたのあそこに指突っ込んでみていい?」
「な、ん、で」
「もうどんな具合なのかを知りたい。あんたと同じ男とヤるとさ、皆あんたのこと褒め称えるから軽くジェラってる。私も男だったらよかったのに」
「ジェラってそっちかよ!」
互いに半笑いである。
というかほぼ笑ってる。
ダメだ草生える。
というかまあ、別に私は胸揉まれようが指突っ込まれようが、この子なら別にいっかな〜くらいには思っていて。
むしろその気があるなら、レズプレイしてみちゃう?と誘い掛けそうなくらいは、ソッチにも興味はある。
この押し留まることを知らない性欲に、取り合えず今夜こいつを家に連れ込もうかと算段を立てて居たら。
途端に、ただでさえ騒がしい食堂が更にざわりと揺れた気がした。
「なに?」
「……あ、オタサーの姫来たよ」
「ああ……」
──あの子か。
そう思って、今の今までの楽しかった気持ちは急勾配。
つまりは、台無しだ。
同じ大学二年の、通称オタサーの姫。
なんでオタサーなのかというと、それマジで普段着なの?と目を疑いそうなほどぶりぶりふわふわフリルの甘ったるい服をいつも着てるから。
そこまでそういうの着こむんだったらいっそ本気でロリータの服着ろよと突っ込みたくなる程度には、なんとうかくどい。
ついでに髪も黒髪ロングでメイクもピンクメインの甘々系。
更に男受けを前面に狙ってます(はぁと)って感じの媚び切った声が、入学当初から女子の間で耳障りととても話題になっていた。
──つまるところ、目障りな女。
そしてそれは、見た目と性格だけじゃない。
この大学は、男のレベルが高いことで有名だった。
多種多様な専攻があるこの大学は、いわゆるマンモス校という奴で、膨大な敷地を誇り学科数と生徒数が異様に多い。
その中でも、各専攻や学科に芸能人ばりのイケメンが居ることで、私が入学する前から話題だったのだ。
事実、私の大学入学日でも、ちらほらとイケてるメンズの顔があっちそっちにあって。
この大学は本当にイケメンが集まるとこだったんだ!と親の反対押し切って東京の大学を選択した自分を褒め称えた。
──のは、よかったんだけど。
問題は、そこからだったのである。
入学当初から、主に見た目で浮いてた女。
そんな女に、しかしこの大学の顔の綺麗な男たちは、こぞって皆、ぞっこんだったのである。
それが発覚した瞬間の女子の心は一つだったことだろう。
つまりは、は?なんで??
いやまあ、普通に意味がわからなかった。
生憎と私の専攻には中の上はいてもあの弩級のイケメンは残念なことにいなかったんだけど、それでも噂は届いてきた。
当時一年だった彼女に、同学年は勿論二年のイケメンも三年のイケメンも四年のイケメンもこぞって愛を囁き自ら侍っているのだというのである。
しかも、その先輩方は今までどんな美人や可愛い子が迫っても興味ないの一言で突き放す感じだったのに、それが手のひらを返したようにあのオタサーの姫には甘ったるい言葉を投げかけて。
そりゃもう、華の大学生活の冒頭は、嫉妬でとんでもないことになっていた。
いやもう、石川さとみレベルならわかる。
だってさとみだもん。
女だってさとみに微笑まれたら喜んでしっぽを振る。
だけど、あいつはわからない。
せめてさとみレベルだったら納得できたのに、正直そこら辺にいそうなレベルの顔面であれだったもんだから、納得のしようもなかったのである。
ついでに言うと、あのオタサーの姫は、恋を始まらせても貰えなかった彼女たちをせせら笑って、こういったのだという。
──残念だったわね、あれはみぃんなあたしのものなのよ!
オタサーの姫、総スカン決定の瞬間だった。
ついでにオタサーの姫というあだ名が決まった瞬間でもあった。
確かに彼女の見た目はまあまあ可愛い。
可愛いか可愛くないかと言われたらまあ可愛い方ではある。
でもそれは、所詮はクラスに居そうなレベル。
万が一でも学校帰りに芸能人にスカウトされるレベルではない。
さとみの様に完璧な顎のラインもぷるぷるの唇もかわいい鼻も色っぽい瞳も持ってない。
精々が街雑誌のコーデ特集に載る適度だ。
つまりはかなり普通。
といっても、黒髪は男が好きそうなさらさらロングストレートだし、胸はデカくて腰は細くて足も細い。
男受けのための努力というか、装備はしているのだろう。
でも自分の一人称を"あたし"にするやつとか地雷だし、確かに可愛いっちゃ可愛いけど、あの芸能人ばりのイケメンたちがこぞって求めるほどの魅力があるとはどうしても思えない。
まあ、それは平凡な容姿の女の僻みなのかもしれないけど。
つまるところ、だから彼女はこの大学の女から憎まれてると言っていいほど嫌われていた。
かくいう私も、喋ったこと自体はないけど多分好きじゃない。
声が酷く耳に障るのだ。
態度が偉そうだし、更に言うと、あの子の自分が侍らかす男を周りの女に見せびらかす姿がもの凄く感じ悪いなと思う。
中にはあの子を嫌いすぎて陰口やらいじめに近い行為をしようとした人もいたみたいだけど。
しかし、それも彼女の周りに侍るイケメンたちに阻害されてしまう。
ついでに軽蔑しただなんてあのお綺麗な顔に言われた人までもいたそうで、それ以来、オタサーの姫は腫れもの扱いだ。
触らぬ神に祟りなし。
あの子のムカつく態度も、あの子の周りのイケメンも、どっちも諦めろとか、そういうこと。
「ねえ、変に絡まれるの勘弁だからとっとと食べて次の教室行こ?」
「ん、おっけー。はあ、私あのきゃんきゃん煩い声ほんっと嫌い」
「わかるわかるマジでそれな」
変な音波でも出てんのかって感じ。
だけどまあ、こうして影でぶつくさ言う自分は割と惨めなもので。
私がいくら男に名器と褒め称えられようが、それはベッドを共にしなきゃ意味がない。
弩級のイケメンをベッドに誘える度胸も外面的魅力も保有していない女は、彼女にとっては所詮雑魚でしかないんだろう。
だってほら、私そこで食べるからそこ退いて、なんてどこの女王様だと言いたくなるような発言が遠くから聞こえてくる。
控えめに言って、ヤバい。
ちらりと振り返れば、オタサーのお姫様は中央の席を開けろと物申していた。
それに思わずマジかよ、と呟きつつ、私は絡まれる前に友人と移動の準備をする。
しかし、ふいに聞こえてきた声に。
思わず、中途半端に腰を浮かせた状態で硬直してしまった。
「ねえ、騒ぐのもいいけどさ、この子たちも食べ始めたばっかみたいだし、あっちの開いてる方にしない? 外の景色観ながら食べるの、僕嫌いじゃないよ」
──え。
男の割には、柔らかな、声。
それはどこかで聞いたことのある、特徴的な声質で。
「ええ〜っでもでもっ咲夢ここで食べたいのにぃ?」
──相変わらずの音波系の声である。
ちなみに咲夢と書いてさくらと読むらしい。
フルネームは早仁和咲夢でさにわさくら。
ごちゃごちゃした名前である。
というかなんで咲夢でさくらと読むのかわからない。
精々読めてさくむとかなんじゃないの?なんでさくらなの?
がしかし、そんなことよりも私の興味はさっき聞こえた男の声に集中していて。
え、うそ、まさか?と明らかな動揺を見せる私に、友人の訝し気な声が聞こえるけど、しかしごめんそれどころじゃない。
「彼女はここで食べたいと言っているんだ。それを君は何故叶えようとしない?いつも君は咲夢に対して反抗的だね……」
「んー、反抗的、ねえ。別に僕としては、豪族でもあるまいし、わざわざ場所を盗らなくても向こうが空いてるなら向こうにしない? って言ってるだけだけど……て、あ、ごめんね、動いて貰っちゃって」
「あー! っもう、なんでその子たちに話しかけるの! 髭切は咲夢だけ見てればいいの!」
「え〜〜? 生活上物理的に無理じゃない? それ」
どっどっ、と心臓が鳴り響く。
目の前でお〜い?と手を振っていた友人の顔も、私の様子に何かを察したのだろう。
その唇が、音もなくまさか、と紡いだのを確認して、私は真顔のまま頷いた。
友人も無言で、深呼吸をした。
そして、一言。
「……顔確認して、最終確認してみ?」
「……そだね」
ゆっくり、ゆっくり、出来るだけ最小限の動きで後ろを振り返る。
見れば丁度彼らが大騒ぎの末に席に着いたようで、すらりとした男性たちとあのオタサーの姫が食堂のど真ん中の机を陣取って食事をし始めているようだった。
その中で、一つの男に、目が留まる。
色彩の薄い、やわらかな金髪。
遠目から見ても美しい輪郭に、目鼻立ちの通った端正な顔。
──間違いなく、三日前に私を抱き潰した、男の顔。
あの日は、気付けはお昼を当に越えていて、延長料金がとんでもないことになっていて。
しかも携帯のバッテリーが切れかけで、向こうは向こうでなんかとんでもない着信数があったみたいで、これ以上部屋代を取られる前にと慌ただしくラブホから出ていったのだ。
まあ、慌ただしくといってもお風呂で一発しけこんだけど。
で、あまりにも金額が金額だったものだから、払うと言う彼を断って割り勘でホテル代を支払って。
正直そこで次の約束でもしたいところだったんだけど、彼がしつこく鳴る電話に出てから私の気持ちが変わってしまったのだ。
耳を済まさなくても聞こえる「どこにいるの?」「誰といるの?」「家にいないの?」「なんでラインみないの?」「なんで電話出てくれなかったの!?」の言葉の数々。
その金切り声の数々に、あれだけ引き留めたいと思った心は瞬時にしぼんでしまったのだ。
だってこれ、絶対相手メンヘラだ。
こういう女には恨まれたら厄介、と困り顔で通話の相手をする彼に、じゃあね、とだけ言って私はそそくさと逃げたのだ。
背後から引き留めたそうな気配は察知したけど、それ以上に電話から聞こえる女の怒りに濡れた声が怖かったから。
──そして、これである。
「やっばい」
「やばいと思う」
「殺されるかもしれない」
「殺されると思う」
酷いにも程がある返答である。
しかし、これはヤバい。とてつもなくヤバい、と顔を蒼白にする私の横で。
どこぞの名探偵のように顎に指をあてた友人は、「取り合えず私からの確認」と口をまごつかせながら呟いてきた。
正直、もの凄く確認したくない。
「あのイケメンたちの中で、あんたが寝ちゃったのって、どれ?」
「……中央のイケメン」
「あ〜〜……」
「えっやだこわいなにその反応」
なんだ、まだなんかあんのか!?と警戒する私に。
友人は、もの凄く憐れむような、困った様な顔をしてこう呟くのだ。
大変言い難いことではありますが、と。
「──あの金髪ね、噂では、オタサー姫の大本命って言われてる」
「え゛っっ」
だいほんめい?
大本命って、あれ?本気でマジで好きな人?
え??よりにもよって、私が手を出したのってあのヤバそうな女が侍らかす中でも一番のお気に入り?
そして、その言葉にはっとする。
そうだ、確かに、あの時電話口から聞こえた声は、あのオタサーの姫の声っぽくなかったか。
金切り声の、耳に残る感じの、声音。
遠くからでも、キンキン煩い癖に、甘ったるい嫌いなタイプ。
だから私は関わりたくなくて、身体の相性抜群だったのに戦略的撤退を良しとしたんじゃなかったのか。
「……………うっそお」
思わずそう呟けば、友人は苦笑いで「残念なことですが……」と口にした。
本気で残念なことである。
「とりあえずほら、一夜限りのアバンチュールな関係だったわけだし、素知らぬ顔で静かに暮らそう。関わっちゃいけない。まずこの食堂から逃げよう。生存戦略を立てよう」
「うん……うん……。にげる……」
なんだろうこのお先真っ暗感。
幸運なことにこの食堂は出口が二箇所あって、私たちは建物の入り口へは遠回りではあるけど二つ目の出口に近いところに居る。
ので、このままとっとと出て行くのが一番だろう。
そう思い、カバンを抱えてお盆を持ち上げたところで、悲劇が起きた。
ガシャン、と何か物が落ちる音がして。
思わずえっと振り向けば、後ろの列の机の人が、盛大にお茶をこぼしてしまっていた。
どうやら、取り落としてしまったらしい。
少しばかりに悲鳴が出るも、すぐさまティッシュやら布巾やらが差し出されて、被害は最小限。
──がしかし、私が振り返ったということは。
そして、大きな音が鳴ったと、いうことは?
視界の端の、その遠く。
そこに、ちらりと視界に入る遠目からでもわかる美しい顔。
──に認識されないよう、私は最小限の動きで、しかしブリキ人形の如くのぎこちない動作で身体ごと顔を真正面へと戻した。
だって、私が向こうの顔を見れたということは、向こうも私の顔が見れる範囲にいるということだ。
もし、万が一、あの中から私を見つけたら?
もし、万が一、さっきまでの私同様、またヤりたいとか思ってくれていたら?
めちゃめちゃ嬉しいけど、めちゃくちゃ嬉しくない。
収まりかけた心臓が、また冷たく鼓動を刻む。
「……今動いたらあやしい?」
「……いや、いける。他にも動いてる人いる。自然に。普通に。さりげなく移動しよう」
──あれ、この子ってこんなに格好良かったっけ。
凛々しく先導してくれる友人の背中に、かつてないほどの胸のときめきを覚えながら。
私の頭は、それでも冷静にそれ吊り橋効果、と突っ込みを入れていた。
だけどまあ、ワンチャンあったらやっぱりこいつ家に連れ込もうかな。
──そんでもって、今である。
多分エロ漫画とかだったらもの凄くお誂え向きな、だぁれも居ない資料室。
ここは教授が一日に一回来るか来ないかという、一番使用頻度が低い物置だというのは大学一年生の時に学習済み。
つまりは、学内エッチの穴場スポットだ。
目の前には、色んな資料が詰められた棚。
そこには私が今仕舞い終わった年季を感じる黒い皮のファイル。
きっちりとした字で書かれつつも、擦り切れて所々消えてしまっている"全学年共通講義用"と書かれた字をただじっと見ながら、軽く薄い息をする。
ファイルを収納した棚の縁には、真っ白な手。
もしかしたら女の私よりも白いのかもしれない、黒い袖から覗くすらりとした手は、けれど少し関節が骨ばっていて。
ああ、こんなに綺麗な手の形なのにやっぱり男の人なのかと、どこかぼんやりした頭でそう思った。
ふぅ、と首筋に他人の息が触れて、ぴくりと肩が跳ねた。
だけど振り払ったりは出来なくて、ただただ身体を縮こませるだけだ。
どくどく騒ぐ心臓が煩くて、今にも爆発してしまいそう。
いい意味でも──悪い意味、でも。
「ねえ、なんでこっち向いてくれないの?」
後ろから覆いかぶされながら、耳に吹き込むようにそう囁かれる。
ふわりと薫る香りだとか、甘やかな声だとか、なんかもう処理能力を超えた情報量に頭はパンク寸前である。
つうかめっちゃ良い匂いすんだけど。
「ふ、ふ──振り返っちゃ、だめ、だから、」
「ええ? なんでぇ?」
くすぐるような軽い笑い声が聞こえて、身体の体温が上がったのがわかった。
次いで、変なの、とかそういう呟きが聴こえて、もうやめてくれと混乱に翻弄される思考回路のまま泣きそうになる。
ついでに自分が言ってることもわけわかんない。
なんで振り返っちゃダメなの。
そりゃなんで?って聞くわ。
「僕は、君と顔を合わせてお話したいなあ」
「ぅひっ!」
「あ、はねた」
耳に、柔らかな頬が触れて肩が内側に跳ねた。
なんていうかこう、ちょっと逃げる様に猫背になる感じ。
なのに、あからさまに逃げたのに、背後のイケメンはそのまま細い顎が私の肩に軽く乗っかって、息の仕方が一瞬わからなくなってしまう。
てかお前それイケメンだから許される技だからな。
お前がフツメンだったらキモいってぶん殴ってるからな。
あ゛〜〜いやもう、近い。
なにこれ、なんだこれ。
なんでこんなに接近してんだ。
別に、順風満帆に逃げきれていたはずだ。
あのキンキン煩い声が聴こえたら回り道して、道を変えて避けまくって。
講義だって、全体講義の時は全部一番後ろに座ったし、その中であの印象的な髪色は見当たらなかった。
正直、弩級のイケメンに関して私はもう諦めてたから、顔も名前も覚えてなかったんだけど。
でも、顔面レベル的な意味で一度見たらわかるし、皆スタイルもいいし、そこいらのモブに紛れれるわけがない。
居なかったはずだ。
同じ授業は、今日、確かに取ってなかった。
だから安心して、うっかり教授のお願いなんか聞いちゃって。
だってあの人、手伝うと評価上げてくれるから。
だから、だから、ああうそ、なんで。
本棚に掛かっていた手はゆっくりと降りてきて、私の身体に絡んでいく。
どうしてだかそれから逃げることも出来ない私は、されるがままにその腕の中に閉じ込められてしまった。
ひく、と、勝手に顎が、動いて。
「……じんわり汗かいてるね。熱い? それとも……緊張、かな?」
「……っ」
「──ふふ、凄く心臓どくどくいってる。ああ! もしかして、僕が怖い?」
誰かわかんないかな。三日──いやあれ四日? まあいいや、前に君と肌を合わせたんだけど。
歌うように呟かれた言葉に、思わずごくりと喉を鳴らした。
頭の中では、肌を合わせるとか文章でしか見たことないわ、とか、突っ込んでんのに。
なのにそれは口にも態度にも出せなくて、ただただ、視線を彷徨わせてしまう。
けれど、まるで答えを催促するように指先でつん、と唇を突かれて。
ああもうええいままよ、と観念した私は、重りでも括りつけたみたいに開きにくい唇を抉じ開けて、こう言葉を返すのだ。
「……、あ、あなたの、かっ彼女さんが、怖い、から…………」
──マジでそれに尽きる案件である。
だって、見るからにあの子やばい。
二十歳越えてる癖にいつまでもお姫様扱い前提の女王様みたいな態度。
食堂の一件だって、よくある風景だ。
何度目撃しても目と耳を疑ってしまうんだけど、あれが初めてじゃあないのだ。
誰もが自然と話題にすることすら避けるほど、あの子はここで浮きまくってる。
イケメンを侍らかせてるからじゃない。
なにか、異様な威圧感があの子にはあるのだ。
自分が上に立つことが当然とでもいうような、命令し慣れてるあの行動。
──そんな女の、大本命と、火遊びをした?
そんなの、そんなの、目をつけられてぶっ殺されるに決まってる。
というか絶対にあの女は周りのイケメンに泣きついて私は完全に股ゆる尻がるのクソビッチ扱い──いやまあ事実だけど!
それはわかってる人だけ分かってれば良いことで、大学周知のものにはなりたくはないし。
ましてやあの女のこと、あることないこと吹聴されて晒し者にされてしまうかもしれない。
そんなことされたら、今後の人生一体どうなる?
それにこっちを見ないとわかってても、あんなイケメンたちに嫌われるのは心情的にかなり辛い。
だって何があったってやらかしたってあのイケメンたちは彼女の味方だ。
いやていうかマジで本命なら金でも身体でも使ってこのイケメンが知らない女と寝るような状況作ってんじゃねーよ────ん?
ふと、思考の端に何かが引っかかった様な気がした。
待て、落ち着け私、考えろ私と思考の動きをぐるぐる加速させていく。
──そうだ、昼、食堂。
私、友人と、あいつと、なんて話した?
あいつに大きさ聞かれて──どのくらいって答えた?
脳裏に映る、自分の手。
私はその指を、何へ回した?
────手首!!!!
そう、手首!!
女子とはいえ、手首!!!
成人女性の平均サイズは確か14pくらい……14!p!!?
えっ14!?14p????
あの時は気持ちよかった記憶しかなかったから普通に手首くらい〜とか軽く言ったけど手首くらいってやばくね??
女子のおまんこの入り口の平均サイズなんて知らねーけど明らかに14pが標準的に入るサイズじゃないことはわかる。
だって友人無理入らないみたいなこと言ってたし!!私が!!!異常なだけで!!!!普通は普通に考えて無理!!!!!
──いや入んねーだろ。
頭の中で、オタサーの姫の姿を思い浮かべる。
まともに喋ったことはない。
姿を見かけたら自然と身体が避けてたから、身長がどのくらいかなんてのも正しくわからない。
だけど、あの女がお姫扱いを望む程度には華奢な身体をしていて、身長も周りの男がデカいってのもあるけど割と小さめなのもわかる。
だって「きみは人形のように小さく愛らしいな。閉じ込めてしまいたいくらいだ……」とかイケメンじゃなかったら確実にドン引きな台詞吐かれてたの聞いたことあるし、あの時は深く考えずイケメンってパねえくらいしか思わなかったけど、いやうんえ、え、え??
いや、仮に、私を今後ろから抱きしめているイケメンとオタサーの姫が出会ったのが、この大学からだったとして。
その前に中高あって、イケメンならきっと引く手数多ってか引く手しかない桃色青春時代を過ごしていたに違いないんだけど、入るか???
あのビッグにも程があるマグナムが入るまんこを保有している女子が、果たしてどれだけこの日本に居る??
海外ならまだワンチャンあったかもしれない。
しかしここは全世界でも平均的に薄っぺらいというか華奢な身体を保有している女子が多い日本。
入るか??
というか初体験にあんなマグナム見せつけられたらきっといくら許容範囲の膨大な名器たる東洋の秘壺を所有している私だったとしても泣いて許しを乞って無理って言うわ。
それくらいやばかった。
それくらいあれ太かった。
いやまってあれ本当に円周14pくらいだった?もっとなかった?
円周×円周率だからそうなるとあれほぼ直径4.5pくらい……4.5pか?ほんとに4.5pだったか?
かつてないほど大きく感じたけどあれ4.5pか??5p越えてなかったか??
駄目だ理想と現実が思い出加工によりごっちゃになってる。
とても嫌なねるねるねるねだ。
てか手首レベルのおちんちん入るとか私凄くね??
友達もドン引くレベル。
ほんとにあいつに引かれなくてよかった……。
なんかおかしい無駄に焦ってきてる。
だってほら汗もかいて──あれないぞ?
あれ。
そこで私は初めて視線を下に、自分の身体に向けた。
向けたっていうか、見下ろしたっていうか。
今日は、可愛さから買ってしまったものの通常よりも多いボタンにいつも着脱時になんでこんな面倒くさい服買っちまったんだと後悔しつつでも可愛いから着ちゃう服を、着ていたはずで?
でもなぜかその七面倒くさいボタンたちが綺麗に外れてて??
なぜか、マジでなぜか、私の慎ましやかという程でもないけどでもたわわという程でもない、THE 平均をキープするつまるところCとDの狭間で揺れるブラが、着こんだキャミの中からこんにちはしてて?
──それがたった今、恐らくホックが外された所為でずるりと胸の肉を支えるという大義を放棄して????
「…………え゛っっ」
「あ、気が付いた」
思わずばっと胸を手で覆えば、ずるりとカーディガンと共にきちんと着ていた筈のブラウスが肩から落ちた。
そんでもって、ばさりと履いていた筈のスカートも床に落ちていった。
厚めのジャガード生地の、ちょっと重ための花柄のスカート。
それに資料室の埃がまとわりつくのを見て、あ、最悪、と思うのと同時に太ももがひんやり冷たいことに気が付く。
いや気が付くというか──えっあれなんか私脱がされてない?
「えっえっえっ」
「ねえいつも気になるんだけどさ、なんで女の子ってタイツ…… あ、ストッキングだっけ? を履くの? 食い込んじゃってさ、キツくないの?」
ほら、お腹に跡残ってるよ。
そういって、ぶっちゃけ未だ大本命という仮名だけでまともに名前も知らないイケメンは、慈悲も情けも容赦もなく、私のストッキングをパンツと共に引き下げやがった。
「よいしょ」だなんてとても軽いトーンで、しかし全くよいしょではなく。
どっちかってとどっこいしょな力を籠められてずり下げられたストッキングwithパンツは、くるくると仲良く絡み合って私の膝上5pの位置くらいで仲良く止まった。
いや一度にここまで一気にずり下げられるとかどんだけ力込めてんだよ──じゃ、なくて!!
「えっな、なに!? は、はあ!? なんっなっなんで脱がすの!?」
「わっおっきな声。でもあの時も大きな声いっぱい出してたもんねえ。うんうん、そっちの方が元気でいいよ?」
「いやっえっうん? えっいやだからなんで私のこと脱がすの??」
「え〜〜?」
ぎゃんぎゃんに焦る私とは裏腹に、振り返ったイケメンは悪びれもなく焦りもなくにこにこしてる。
いやえ〜〜?じゃねーよ。なんで脱がしてんのかって聞いてんだよ。
お前の顔が麗しくなかったらぶん殴ってんぞ。
しかし本日初めて真正面から目視したけれど、やっぱりめちゃくちゃに麗しい御尊顔である。
もうあの時あんあんヤりまくってた時もマジでイケメン過ぎて感度五割増しくらいにはなってたんだけど、いや、そうではなく!
「だ、ばっばっ」
「ば?」
「ばっ──かじゃないの!? あんっあなた、あのオタサーの姫の大本めッっか、彼氏なんでしょ!? なんで私に手出すの!? 私脱がしてんの!??」
「おたさーの姫?」
それってなあに?とでも言うように、イケメンは小首を傾げてくる。
本来ならば美女か美少女しか似合わないであろう仕草は、しかしその素晴らしいにも程がある御尊顔の前では性別なんて関係ないとでも言うように違和感がない。
むしろこっちこそ、跪きたくなる程の女王的な魅力に溢れていて、意外と鞭とか容赦なく振るいそう、だなんて訳の分からない方向に一瞬だけ思考が飛んだ。
にこにこしながらエゲつない力で踏んづけてきそう。
間違いなく現実逃避だ。
「あ、もしかしてあの子のこと? 咲夢ちゃん」
「そっ……ひぅお!?」
そうと言おうとして、代わりに出たのは情けない悲鳴だった。
軽い世間話みたいな声音の癖に、その腕は信じられないくらいの力で軽々と私の腰を持ち上げてしまったのだ。
足がぷらんと床から離れて、慌てて目の前の棚に縋りつく。
上半身に夢中でイケメンの下半身はアウトオブ眼中だったんだけど、それを今はもの凄く後悔している。
だってぐり、と押し付けられた"それ"は、間違いなく生身だ。
ついでに言うとなんか──そそり立ってる。
「別に僕、あの子とどうこうしてないよ?」
「まっマジで!? ってまってやだほんと、まっ……!」
まさかの衝撃発言に思わず条件反射で反応すれば、返事を返すようにぐり、とそそり立ったそれをあそこに押し付けられる。
いやまって、待ってって心の中で言いすぎだけどマジで待って。
え?まさかこのまま入れる気?流石に私裂けない?
「ま──待って! マジで待って! ステイっ! ステイッッ! そのデカさは流石にいきなりは入んないと思う!!」
「え? そうなの?」
後ろから覆いかぶされて、棚に押し付けられる。
足は閉じていても、柔らかい太ももなんて、なんの遮りにもならない。
ぐりぐり未練たらたらに擦りつけられるおちんちんは既にぬるぬるしてて、臨戦態勢ばっちりって感じ。
──いや、まて、おい待て、ぬるぬるって!
「ていうかゴムっ! ゴムは!?」
「ごむ?」
「コンドーム! うっそまさかそのまま入れる気だったの!?」
仮にここが学内の穴場エッチスポットだったとしても、それでもTPOは守るべきだ。
こんなとこでゴム無しでやって周りに飛び散ったら大惨事だし、そもそも迫ってきてゴム無しで行為に及ぼうとするとかなくない?
あの時は頭沸いてたしゴム使った形跡がなかったし場所が場所だったからもうそのままヤっちゃったけど、今は素面で場所も大学。
ここでゴム無しで行為を迫るのは、マナーが悪いどころじゃない。
遊びにだって一応、誠実さは重要だ。
「ぜ、絶対嫌だから! ゴム無しとかあり得ない!」
「でも、この前はなにも着けてなかったよね?」
「……っ! あれは場所が場所だったし、その場の勢いもあったしッ、いやもうだめ、大学でゴム無しはマナー違反なんだって!」
「ふぅん、そんなのあるんだ」
──いや、知らねーけど。
いやだって、おま、中に出した後どうすんだよ。
私の中に注いだ後私はその注がれた精液をどうすればいいんだよ。
言っとくけどティッシュで拭い切るとか無理だし、パンツで受け止めろと??
「でも僕、君とえっち、したいなあ」
このイケメン言ってることマジで最悪である。
だけど声が良くてスタイルが良くて顔がいい。良い匂い。顔がとても良い。
なんかほんともう、前世でどんな得を積んだの??ってくらい、顔が良い。
身体の奥の本能的な女の私が、何が何でもこのイケメンと致して子孫を遺せ!ともの凄く背中を押してくるレベルで、全てのパーツが良すぎるのだ。
いや、大学生でまだ子供作る気ないけど!結婚もしてないし!
しかし、やはり本能的な私が、こんなイケメンと関係を持てることなんてチャンス、今後一生訪れねーぞと凄く心を揺さぶってくる。
そう、だって本気でめちゃくちゃ顔が良い。
こんな人と付き合えたら、それだけで人生変わりそう。
いや待って、変な方向行かないで私の思考。
付き合えたらってなに?
精々が、セフレとか、その辺で。
──が、しかし。
「……わ、私のカバンの中に、ご、ゴム、入ってるから」
やばい頭が馬鹿になってきた。
明らかに了承していい場面ではないのに、ちょっとくらいいいんじゃない?なんて魔の囁きに唆されてる。
そのちょっとで泣くのは間違いなく私だ。
思い出せ、このイケメンはあの女の大本命。
付き合ってないとかパワーワードが聴こえたけどもしかしたら付き合う=セックス、という意味ならきっと今後一生あの女とこのイケメンは付き合えないし、そういうことなのかもしれない。
向こうは付き合ってる気満々で、この人がそう思ってないとか、そういうのかも、知れない、し。
「……ん〜〜。ちょっとね、残念なお知らせなんだけどね?」
「んひっ」
くぷっ、と濡れそぼったそれが、私の入り口に軽く割り込んできた。
そのまま煽る様に、ぬぷぷ、と入り口の割れ目でゆっくり前後でなぞってくる。
──あの、あの巨根が、ビッグなマグナムが、割れ目に挟まってる。
そう思うだけで、あの時の快感が記憶の中で蘇って、思わず息を呑んで膝をこすり合わせた。
「僕ね、多分そのゴム。入んないと思う」
「…………ぅえっ」
正直意識は私を小さく刺激するものに釘付けだったから、一瞬だけ反応が遅れた。
でも、なんだって?
入んない。
入んないって、どういうこと?
ふっふっ、と息を徐々に荒くする私に。
同じく荒い息の彼は、本当に残念そうにこう呟くのだ。
その手はいつの間にか私の身体に巻き付いて、肌を確かめるように撫ででいて。
なんかもう、完全に流されてしまってる。
「僕ね、アレ、、、小さすぎて先っぽも入んないんだあ。入れようとするとキツくって鬱血しちゃいそうだし。どう頑張っても入んないよ」
「…………あ、」
──あ、そういやそうだ、この人、標準サイズ越える巨根だった。
え、嘘、あのサイズってコンドームないの?売ってないの??
鬱血しそうってヤバくね?それ最早コックリングプレイになりそう。
「だからさぁ──だめ?」
ふぅ、と耳元に息を吹きかけられて、思わずぴくりと背筋が震えた。
ずりずり動くそそり立ったおちんちんは、ぬちゃぬちゃに濡れている。
そして多分、その半分は、私から出るもので。
駄目か駄目じゃないか言われたら、そんなの。
……そんなの。
「は、はんぶん……」
「ん?」
ふる、と目蓋が震えた。
大きな手のひらは私の胸を我が物顔で弄っていて。
その指先が皮膚に食い込みながら絞り出すように先っぽを摘まんで、はふ、と熱い息がこぼれてしまう。
いつの間にかおでこは棚に引っかけた腕に押し付けていて。
私の反応をお気に召したのか、先っぽばっかり摘まんだり引っ張ったりするその指先に、気を抜けば声を漏らしてしまいそうだ。
「──ねえ、どこまでなら、いいの?」
甘やかな声音を耳に吹き込まれて、お腹の奥がきゅっとつぼまった。
するとぬちゃ、と強く割れ目にスライドされて、ぞくぞくとお腹の奥が期待で揺れる。
どこまでって、そんなの。
どこまでって、そりゃ、そんなの。
「………は、はんぶん、だけ」
中に出さないんだったら、いいよ。
そう、絞り出したそうと声は。
けれど噛みつかれて、呑まれて消えた。
ぐぷっぬぷぷっと、凄い水音がする。
それと同じく肉を打ち付ける音が狭い室内に響いて、なんだか頭の奥から熱に浮かされてしまう。
「は、あ〜〜っぁ、あ、っンっっはぁっんっ」
膝は足についていて、指先は棚に引っかけて。
お尻を後ろに突き出すような態勢を取ったまま、私の身体は揺さぶられていた。
「ぁ、あ゛っ! イっ〜〜ッっ……ッ……! い、イってっ、ぁ、ぃ、イってっるぅッ、〜〜〜ッ、あ゛っあーーっ」
「っごめっ、も、ちょっとっ、」
「んっ、ふっっ、ぁ、あ、はひっ、ひっ」
ぐぽっと深くハメられて、ぶわりと熱が弾けてわななく。
視界どころじゃなく頭も真っ白で、めちゃくちゃで。
縺れる舌で一生懸命自分の状況を伝えてるのに、なのに、私の身体を貫く熱は止まる素振りを全く見せない。
「ぁ、あ゛〜〜〜ッも、あ゛っび、びんかんっにぃっ、な、なってりゅ、っにぃッ」
「うん、うんっ、でも、もうちょっと、だけっ」
強く打ち付けられる度に、お腹の奥から、ごっごっ、と衝撃が響いて喉から馬鹿みたいに声が出る。
突き抜ける様な快感が、身体の中に響き渡って、これ以上ないほどパンパンに咥え込んだ私のナカが、締め付ける隙間もない癖にひくひく勝手に動いている。
──きもちいい、気持ちよすぎて、死んじゃいそう。
「あ゛っあ゛、んあ゛ッ、あ、あ゛っ、あぁっ!」
太い雁首が壁を引っ掻きながら抜けていく度に、奥の奥の方からぎゅうぅぅって絞られて。
なのにそれは完全には抜けきらないで、膣口で引っかかったかと思うと、きゅうきゅうに引き絞られたナカを無理やり抉じ開けながら容赦のない勢いでまた最奥まで突き進んでくるのだ。
「あっはぁっあ゛〜〜〜〜〜!!」
ぐぽっなんて凄い音と一秒遅れて、ぱんっと肌が打ち合う。
そうして思いっきり私の下がりきった子宮口を上に押し上げて、またずりゅりゅ、と引き抜いていくのだ。
──正直、腰を上げる力すらなくて。
指を引っ掻けるというか、腕ごと棚の中に入れて棚の中に突っ伏している状態で、私の身体はこのイケメンに好き放題揺さぶられているのだ。
腰を掴む強い力にすらぞくぞくして、オナホみたいな扱いをされてるはずなのに、興奮してたまらなくて。
「あ゛〜〜っあ゛〜〜っ、すご、すごいぃぃぃっん゛っんおっう゛〜〜〜っ」
ひっひっと揺れる身体と共に漏れる息は、もはや吸ってるのか吐いてるのかわからない。
ごっ、とまた子宮口を突き上げられて、ぎゅうとお腹の奥が強縮してまた絶頂を迎えてしまう。
ああうそ、気持ちいい。
「はっひぁっあ゛っ! あ゛っ!」
──段々とお腹の中が、変になってきている。
小突かれる度に、どんどん身体の中に熱が広がっていって、今はもう触られていないはずの胸まで痺れて、熱くて、気持ちよくて。
触って欲しいって、どろどろに蕩けた思考回路で自然に思っちゃうくらいには、私はもう、馬鹿になっていて。
「お、おっぱいっおっぱいっ、さわ、さわってぇっ」
「っ、どう、ゆ、ふうっに?」
そう言いながらも、素直に手は肌をなぞりながらぶるぶる揺れる私の胸まで上がってきて。
指が軽く食い込んで、たったそれだけで私の身体は過剰に反応してしまう。
「〜〜〜〜っ!」
「……っ、ぁ、ふふっ、しまった」
指にはどんどん力が込められて、乳首を絞るみたいに指の間に挟まれて、大袈裟に身体が跳ねた。
するともう片方の手も胸の方に伸びてきて、背中にぴったりと他人の体温が触れた。
私とは違って肌蹴ていないから、服の生地が背中に擦れて。
冷たいボタンが皮膚に少し食い込むのが、本当は痛い筈なのに、今はそれすら気持ちいい。
「ぁ、あ゛っあ、あぁっ」
身体がぴったりくっついている為か、動きは激しいものから小刻みに揺さぶるものに変わって。
奥をぐりぐりと押し続けられるのは、さっきまでとはまた違う感覚で、より咥え込んでいる熱の太さを実感してしまうから、たまんない。
「ひっひっ、んっ、あっあ゛〜〜〜っ」
太い。
太くて、熱くて、びくびく脈打っていて。
それがもっともっと奥に入れてっていうみたいに、ぐりぐり押し上げられて。
それが、すっごく、気持ちよくて。
びくびくと身体が小さく跳ね続けて、頭が熱い。
だけどまたお腹の奥に違う熱が溜まっているのがわかって、今以上の快感の予感に、はふ、と喉が震えた。
「んっ」
「ふ、ぁ、んっ……っ! んっふっ」
すると横から覗き込むように伸びてきた顔に、唇を奪われる。
視界いっぱいの美しい形の瞳に、潤んだ眼に、なんかもう心まで跳ねたような気がした。
唇をゆるめれば入り込んでくる厚い舌が、じゅるりと私の舌に絡んできて、首の後ろがぞくぞくする。
そのままどんどん深くなっていく口付けに、頭の奥まで痺れてしまう。
「あ、ふぅ、ん」
──これ、だめなやつ。
お腹の奥はぐりぐり小突かれて、口の中は、ぐちゃぐちゃに甘やかされて。
なんかもっと気持ちよくして、なんて感情が引っ切り無しに湧いてきてしまって、感情が抑えられない。
酸欠と快感で、頭の奥がふわふわしてきた。
じゅる、と舌を吸われえ度に甘い痺れが更に脳髄に響き渡って、もう、好きにしてって完全に身体の主導権を明け渡しちゃってる。
名前もまともに知らないイケメンに、好き放題されて、ここまで犯されて、揺さぶられて。
なのに今、それがすごく、幸せで。
「っんっ〜〜っ、ふっ、ぁ! 、! ……っ! ……ッ………!」
「っ、……っ」
鼻についた声が、唇の隙間からこぼれるのを聞きながら。
今までにないくらい強い絶頂感と共に──お腹の奥に、熱いものが注がれる感覚。
それに頭のどこかで、あ、って思ったけど。
だけどそんなことももうどうでもよくなっちゃって。
角度を何度も変えながら続いていく口付けに、私も一生懸命応えながら震える身体の体勢を変えていく。
あれだけ埃が気になって嫌だった床にお尻を落として、しっかりおちんちんは咥え込んだまま、足を大きく開いてもっともっと深く繋がれるように絡ませていく。
「ふぁっは、はふっン」
「んっふっ、」
そんな私に応えるように、真正面からイケメンは覆いかぶさって、また律動を大きくしていくのだ。
それが気持ちよくって、嬉しくて。
足だけじゃものたんなくなった私は、両腕も相手の首に絡めて密着度を深めていく。
ああもう、触れる全てが気持ちいい。
どうしよう、このまま死ねたら、最高だ。