イオンが同行する事を決められて苛々していたルークは、レオンと再会し同行したいと言われ、ティア達への嫌がらせの為に許可した。

「ちょっと、ルーク! 勝手に決めないで!」

 ティアを筆頭に責められる。

「別に良いだろ? 行き先は一緒なんだ。それとも、お前、オレが途中で魔物か何かに殺られて預言を守れなくても良いって言うのか?」

 ケセドニアで預言を詠んで貰ったら、アクゼリュスへ行くと詠まれたのだと言うレオンはそう言った。

「お前、預言を守らなきゃユリア様の御心に反するって言ったよな?」
「傭兵を雇えば良いでしょう?!」

 ティアは、それが当然だと言う。

「じゃあ、金寄越せよ。カイツール港の時には、謡将が行くって言ったのに態々しゃしゃり出たんだ。オレに傭兵雇えって言うなら、金出してくれるんだろ?」
「それとこれとは違うわ!」
「どう違うんだよ? 整備士の預言が成就するよう助けたんだから、オレの預言が成就するよう金寄越せ」
「あれは、アリエッタがイオン様とルークに来るように言ったから」
「オレだって、ルークが一緒に行って良いって言っただろ? ルークと一緒に行くのがオレの預言かも知れないだろうが!」
「傭兵を雇って行くのが預言に詠まれた事かも知れないじゃない!」
「だったら、謡将が整備士を助けるのが預言に詠まれた事だったかも知れないだろ?!」

 二人の主張は平行線だ。

「どうしますか、イオン様?」

 ジェイドがイオンに尋ねる。

「そうですね…ボク達と一緒でなければ、キムラスカ側の街道を通して貰えないのではありませんか?」





「今のは思い上がった発言だと思うわ」

 イオンがいなくても自分がいれば戦争にならないと言ったルークをアニスが馬鹿にし、ティアもそう言った。

「思い上がってんのはテメーだろ? 戦争になっても不思議じゃねー事しやがった癖に、よくそんな偉そーに出来るもんだ!」

 ルークからティアと同行している理由を聞いたレオンが、嫌悪の表情で言った。

「そんな事してないわ!」
「自覚もねーとか、どこまで馬鹿なんだ?! あんた等もよくこんな奴と仲良く出来るもんだな。良識を疑うぜ!」

 レオンは、ガイ達に向かってそう言った。

「それは、こっちの台詞だな。どうして、そんなにティアを悪く言うんだ?」
「嫌いだからだよ。そっちこそ、何処が良いんだ? 良い所なんて何も無いだろ?」
「それは、君が良い所へ目を向けていないからじゃないか?」

 レオンは、ガイを見下すような目で見ると言った。

「良い所が1あっても、悪い所が9あるんじゃな…」





 イオンが疲労で歩けなくなり、休憩となった。

「まったく、お偉いさんの我儘には困ったもんだ」

 ルークが横を見ると、レオンは水筒を口に運びながら、イオン達の方を見ていた。

「偉い人間は、どれだけ迷惑かけても許されると思ってんのかね?」
「…イオンの事か?」
「他に誰が?」

 偉いのがイオンだけと言う意味なのか、迷惑なのがイオンだけと言う意味なのか。

「イオン助けに行ってルークが死んだら、戦争だってのにさ。まったく、ティアじゃあるまいし、事の重大さが解らねーなんて、死霊使いも大した事ねーな」
「レオンは、オレの事馬鹿にしないんだな」
「ああ。嫌いじゃねーからな」

 レオンは、そこで漸くルークに顔を向けた。

「もし、あいつ等を見返したいとか思ってるなら、止めた方が良いぜ」
「何でだよ?!」

 見返してやりたいと思っていたルークは、カチンときて言った。

「あいつ等は馬鹿だからさ」
「え?」
「ティアは、何でお前を馬鹿にすると思う?」
「オレが、世間知らずだから…だろ?」
「違うね。お前より優位に立ちたいからだ。他の人間より、世間知らずなお前の方が、簡単に優位に立てるって思ったのさ」

 ルークは黙って続きを聞く。

「ティアみたいな馬鹿はな、馬鹿にする事で精神的優位に立ち、それによって、馬鹿にした相手が自分を尊敬すると思ってんのさ」
「…どういう意味だ?」
「つまり、『馬鹿にされるって事はオレって何て駄目な奴なんだ』→『ティアは駄目駄目なオレより何でも優れているに違いない』→『ティアすげー。一生敵わねー。尊敬するしかねー』になると思ってる訳」
「…マジでそんな事思ってるのか?!」
「心の奥底で無意識にな」

 ルークは、ティアを薄気味悪く思った。

「こういう奴は、お前がどんなに優れた人間になっても、功績を上げても認めない。少しでも粗があれば突くし、昔の事を持ち出す。或いは、自分のお陰だと思うのさ。何もしてない癖にな」

 レオンは水筒をしまった。

「ルークが悪い事をしたら、ルークだけの所為。ルークが良い事をしたら、私がついていたお陰。そういう奴等だから、見返すならまともな奴にしな」
「…ああ。そうする」





「兄がいなければ何も出来ないお人形さんなのね」
「お人形のように大事にされてきたお嬢ちゃんが何か言ってら」

 ティアは、レオンを無視してルークに言った。

「貴方、少しは自分の頭で物を考えないと、今に取り返しのつかない事になるわよ」
「お前は良いよなー。自分の頭でものを考えなかった所為で、危うく取り返しのつかない事になる所だったのに、大詠師のコネで無罪な上に、尻拭いまでして貰ったもんな」
「訳の解らない事を言わないで! 私は、自分で責任を取って、奥様に謝罪して許して頂いたのよ」
「プッ! お前みたいな責任の取り方も判らない世間知らずのお嬢ちゃんが、責任なんて取れる訳ないだろ!」

 レオンはわざとらしく噴き出すと、言った。

「どうせ、モース様から『なにとぞお許しください』って懇願されたから、仕方なく許してくれたんだろーさ」
「そんな事は無いわ! それなら、奥様が優しい言葉をかけてくれる筈が無いじゃない!」
「ちっちゃい子扱いされたんじゃねーの?」

 レオンは、ティアが何を言っても馬鹿にする。
 相手にするだけ無駄かもしれない。

「行こうぜ、ルーク。こんな馬鹿の言う事なんて、気にするだけ無駄だぞ」





 アクゼリュスに入り、救助活動を行う。
 しかし、ルークとレオンは何もしなかった。

「レオン、君も何かしたらどうだ? ティアに偉そうに言うけど、何もしない君が救助活動する彼女を馬鹿にして良いと思うか?」

 ルークを責めたガイは、レオンにもそう言った。

「オレは今、ルークの護衛の癖に護衛しない役立たずの代わりに、ルークの護衛をしてやってんだよ」
「今は護衛とか、そんな事をしている場合じゃないだろ?」
「何だ、お前? ルークが殺されて戦争になれば良いって思ってんのか? 最低だな、ダチの癖に」
「最低なのは君の方だろう! そんな起る筈の無い事を言い訳にして、見殺しにする気か?!」
「解った解った、お前が馬鹿な事は。さっさと救助に行けよ!」

 レオンは、犬でも追い払うかのように「シッシッ!」と手を振った。
 ガイは、まだ何か言いたそうにしていたが、睨みつけて去って行った。



「何で…何でもっと早く来てくれなかったんだよ!」

 地面を這って現れた男が、ルーク達を睨み上げて言った。

「急いで来ようとしたんだけど、『導師守護役が、寝ている間に誰かに攫われた導師様を捜して下さいって言って来た』らしいよ」
「…え?」

 男も、男を止めようと追って来た者達も、レオンの言葉に意味不明だと唖然とした。

「それが本当なら、神託の盾騎士団かキムラスカ軍が捜索するもんだろ?」
「それがさ、あそこにいる『大詠師直属の神託の盾兵が、導師様を親善大使一行が救助しないと和平に影響が出るかもしれないって主張した』らしくてさ」
「預言って事か?」
「預言だなんて言わなかったけど」

 ルークは、死に瀕しているのに這ってまで責める為にやって来た彼等に臆して、恐る恐るそう言った。

「それで、道すがら捜索する事にして、暫くして発見したらしいんだけど、『導師様を攫ったのは神託の盾騎士団幹部』だったんだって」

 誰もが唖然として声も出ない。

「そしたらさ、『親善大使である此方のルーク様は、導師様を助けようと奴等に斬りかかって行った』のに、『導師守護役もあの神託の盾兵も、見ているだけで何もしなかった』んだと」
「何だって?! それじゃ、その二人の目的は、親善大使御一行の妨害か?!」

 その声で気付いたティア達が集まって来た。




掲載日:2011.02.04

うわー、レオンの性格の悪さが半端無い。
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