「あれ? ティアじゃん。箱入りのお譲ちゃんが、何でこんなとこいる訳?」

 セントビナーを出てカイツールへ向かおうとした時、一人の男が声をかけて来た。
 ルークやティアと同じぐらいの年齢だろう。
 男は、ティアを馬鹿にするような目で見ながらそう言った。

「…貴方には関係無いわ」

 ティアは顔を逸らしてそう言った。
 彼は、ユリアシティの住民で、ティアを苛めた一人だった。

「相変わらず、高慢なお嬢様っぷりだな」

 ティアは、密かに拳を握り締めた。
 彼は何時も、ティアを悪し様に言う。

「君は?」

 見かねたガイが、間に入る。

「オレ? オレはレオン。こいつとは同郷さ」





「どうして着いて来るの?!」
「はあ? 自惚れんな! オレはカイツールへ向かってんだよ!」
「…理由をお聞きしても?」

 警戒したジェイドが尋ねる。

「お前等には関係ねーだろ?」

 ジェイドは考えを巡らせた。
 先に行かせても、何処かで追い付くのを待っているかもしれないし、後から来るように言えば不審がられるだろう。

「いえ…同じ方向へ行くようなので」
「なら、一緒に行ってやるよ」

 レオンは、ジェイドの言葉を遮ってそう言った。

「結構よ」
「どうせ、行く方向は同じじゃねーか。それとも、お前等が戦っている間、オレは後ろで優雅に見物してやろーか?」

 ティアは、それに腹を立てながら、レオンとルークは似ていると思った。
 ヴァンの暗殺は邪魔されるわ、態度の悪い同行者が二人に増えるわ、今年はなんてついてないんだろうと考えていると、レオンが言った。

「構えろ! 魔物だ!」



 剣を持っているから前衛に立つと思いきや、レオンは譜術士であるティアやジェイドと同じ後衛から動こうとしなかった。

「ティア! 詠唱中だ! 守れよ!」
「どうして、私が?!」

 自分に近付いた魔物にナイフを投げていたティアは、振り返って怒鳴り返す。

「オレは詠唱中だったんだから、守るのは当たり前だろ?!」

 剣で応戦しながら、レオンも怒鳴り返す。

「剣を持っているんだから、剣で戦えば良いじゃない!」
「オレは譜術士だから、剣より譜術が得意なんだよ!」

 その時、ティアが攻撃していた魔物が絶命し、ティアは、ホッと一息吐いた。

「調子に乗んなよ!」

 ティアが言い返そうとした時、戦闘が終了した。



「何なの、貴方の態度は?! 改めないと、今に痛い目に合うわよ?」
「はあ? お前に言われたくねーし!」

 それを聞いていたルークが口を挟む

「そうだよな。何でお前がレオンに怒るんだよ、ティア?」
「おいおい、ルーク…当たり前だろ。あんな言い方されちゃなぁ」

 ガイが解っていないルークに教えてやる。

「言ってる内容は、ティアと同じじゃねーか」
「…っ、どういう意味?」

 怒りを押し殺してティアは尋ねた。

「だって、お前だって、『調子に乗らないで』って言うじゃねーか」
「それは、貴方が油断しないようにと思って」
「でも、言い方ってもんがあるだろ? レオンが言ったのと同じような言い方だったぜ?」

 その言葉に、ティアは、強いショックを受けた。
 冷静に注意しているつもりだったのに、貶しているように聞こえたと言うのか。

「でもなー、剣を持っているのに、譜術士だからって後衛に居るのもな…」

 ガイの言葉に、ルークは横目で睨んだ。

「ティアだってナイフ持ってるし、ジェイドだって槍を持ってるだろ?」

 ガイは、言葉に詰まって黙り込んだ。

「そうそう。剣持ってるからって差別だよな〜。オレだって、譜術士だっての!」
「詠唱中だから守れって言ったのも、おかしくねーじゃん。人には守れって言う癖に、自分は守らねーなんておかしいよな?」
「ま、しょーがないかもな! ティアは甘やかされたお嬢様だし!」

 ティアは、ルークとレオンにそう言われ、苛めるなんて酷いと内心泣きたくなっていた。

「『お嬢様』って…こいつ、貴族なのか?」
「そうらしいぜ。下級貴族らしいけど。ま、没落した今でも、市長のお祖父さんや年の離れた兄貴に、甘やかされてんだけどな」
「甘やかされてなんかないわ!」
「…お前、軍人なるのに正規の訓練受けてねーんだってな?」

 ティアは、謂われない中傷に反論する。

「私はちゃんとダアトで訓練を受けたわ!」
「兄貴の副官に訓練受けた分、他の皆より半年短い訓練だろ? それも、無断で脱走して何週間か家に閉じこもってたんだよな?」
「リグレット教官を寄越したのは兄さんだし、私の所為じゃないわ! …無断で帰宅は…確かにしたけど…ショックな事があったから訓練どころじゃなくて」
「甘やかされた奴の思考だよな〜。『特別扱いしないで、皆と同じ期間訓練してください!』とか言ってねーだろ? 大体さ、ショックな事があったからって訓練出来ないって言うのが、甘やかされた証拠じゃん? しかも、戻った時、罰を受けてねーんだろ? どうせ」

 反論出来ないティアは、ジェイドかガイかイオンが庇ってくれないかと期待した。

「あ、そういや、お前、コネで大詠師の直属部隊に配属されたって? ホント、甘やかされてんな」





 その後もレオンは、事ある毎にティアを『世間知らず』・『傲慢』・『甘やかされたお嬢ちゃん』等と貶した。
 更に、ティアが言い返すと『態度が悪い』と言う。
 見かねたガイが庇うと、レオンは言った。

「お前、ダチのルークは庇わねー癖に、何でティアは庇う…あ、解った! お前、ティアが怖いんだな? そういや、お前女性恐怖症だもんな! 庇わないと、後でくっつかれるんだろ? そりゃ、庇わざるを得ないよな〜」

 ガイは否定したがレオンは取り合わず、その後もガイが庇っても、女性であるティアが怖いから嫌々庇っていると思っているレオンは、貶すのを止めなかった。
 イオンやジェイドが庇えば、「甘やかすのはティアの為にならないぜ」と言うのだった。



 ケセドニアで別れる事が出来た時は、ティアは心底喜んだ。
 まあ、それも、再びケセドニアを訪れるまでの事だったが。




掲載日:2011.01.28

レオン・ハーミット(16)。
このファミリーネームは、ふっと思い浮かんだものです。
タロットの隠者から付けたものではありません。

フェンデ家って、准男爵かな? 世襲出来る名前だけの貴族。
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