「貴方、彼等に何を吹きこんでいるの?!」
「来るのが遅くなった理由聞かれたから、教えてやっただけだよ」
「勝手に説明して良いと思っているの? それより、貴方、ある事無い事口にしたんじゃないでしょうね?!」
「あった事しか言ってねーけど? 何だよ? この人達に知られて困るような事でもしたのかよ?」
「していないけど、貴方、私達を気に入らないからって、悪く言ったんじゃないの?!」
「じゃあ、オレが何て言ったか教えてやるよ」
レオンはそう言うと、先程口にした事を繰り返した。
「…嘘は言わなかったようだけど、『見ているだけで何もしなかった』ってどういう事かしら?」
「何かしたのか?」
「…する前に逃げられたのよ」
「『ルーク様』は斬りかかって行ったのに?」
「私は譜術士なのよ。剣士と一緒にしないで」
そう言ったティアに、こいつ何馬鹿な事言ってんだ? という視線が集まった。
「あれ? お前『軍人』じゃなかったっけ?」
「解りきった事聞かないで!」
周囲の呆れた視線は見下す視線に変わる。
「…その後、『導師様が砂漠の何処かにある遺跡に連れて行かれたって情報を得て、砂漠を徒歩で遺跡捜索に向かった』んだって」
「普通軍に任せるだろう?」
一人の男が言う。
「『親善大使一行が助けないと和平に影響が出るって思ってる奴等』が、軍に任せるなんて許す訳ないって。ルーク様がそんな事言い出したら、非難轟々だぜ。現に、『ルーク様が、救助を他の奴に任せれば良かった。一行に導師がいなくても、キムラスカが任命した親善大使の自分がアクゼリュスへ行けば戦争にならない筈だって言った時、そこの導師守護役は、馬鹿って言ったし、そっちの大詠師直属の神託の盾兵は、思い上がってるって言った』もんな」
彼等は、アニスとティアを、導師の威光を笠に着ている礼儀知らずな奴等だと軽蔑した。
「違うわ! ルークは、イオン様を助けなければ良かったって言ったのよ!」
「はあ? 『寄り道なんてするんじゃなかった』って、自分達が助けに行くんじゃ無かったって意味だろ? 他の奴に任せれば良かったって意味じゃねーか」
「強引な解釈ね。誰が聞いても、イオン様を助けなければ良かったって意味だと思うわ」
「そうだよ!」
アニスも同意する。
ティア達は、アクゼリュスの住民達の軽蔑の視線は、自分達と彼等の間に立つルークとレオンに向けられたものだと思っていた。
「じゃあ、聞いてみるか? 『親善大使一行は、ケセドニアで救助隊と合流する事になっていたんだ。一行が導師様の救助に向かった為、到着を待っていた救助隊の出発が大幅に遅れたんだ』が、ルーク様の言った事間違っているかい?」
「…間違ってない!」
「そうだ! 寄り道じゃないか!」
「他にも軍人は大勢いるのに、何だって、ここに向かう救助隊を待たせている親善大使御一行が、導師様を救出しなければならなかったんだ!?」
次から次へと声を上げ自分達を責める住民達に、ティア達は困惑した。
「なっ?! 何を言っているの?! イオン様に何かあったら和平に影響が」
「救助隊の出発を遅らせる必要はあったのかよ!?」
「一刻も早く助けなきゃ、イオン様の体力が」
「『弱っている人間を救出するのに徒歩で向かって、結果、灼熱の砂漠を歩かせた導師守護役』が、何言ってんだ?」
レオンが軽蔑の眼差しをアニスに向けた。
「『導師様を救助に向かって、神託の盾騎士団幹部の六神将三人と戦闘になったらしいけど、ルーク様が殺されていたら、和平どころじゃない』よな? 『そうなったら、救助隊にも帰国命令』が出されるだろうし」
「それぐらいで和平が中止になるとは思えないわ!」
ティアの言葉は、住民達の怒りに火を注いだ。
「何寝言ほざいてんだ!」
「そうだ! 親善の為の大使が殺されたら、親善は中止になるに決まってるだろ! しかも、その場にうちの軍人がいたんだから、救助隊も帰国して和平も無しだ!」
「そうなったら、キムラスカ側の街道は通れない! マルクトの救助隊が来れなくなる! オレ達は全滅だ!」
大勢に責められて、ティアは怯んだ。
しかし、アニスが口を開いた。
「殺されなかったんだから、有りもしない未来の話でそんな怒んなくても良いじゃないですか!」
一斉に、クソガキは黙っていろ! と彼等は目で語った。
「…まあ、でも、導師様はご立派だよな」
レオンが話題を変える。
「『頼まれてもいないのに、和平の仲介役の責任として救助を見届ける為に、親善大使一行に同行してここまで来た』んだから。そう言う訳で遅くなったけど、『導師様の為』だから仕方ないよな!」
いや、変えてなかった。
「何よ、その言い方! イオン様が我儘みたいじゃない!」
「我儘じゃないって? そうだよな! 導師様は何よりも貴いものな! ただの軍人じゃ導師様を救助するのに身分が低過ぎて失礼にあたるから、救助を遅らせてまで親善大使一行に救助させたんだろうし、導師様が、我が身を削ってまで態々瘴気に汚染されたアクゼリュスまで御出でくださるって仰ったんだから、キムラスカとマルクトの親善よりも、そっちの方がよっぽど重要だもんな。アクゼリュスの方々も、『自分達の救助を延期させた結果、無事救助された導師様』が『自分達が亡くなる様を見届ける為』に御出でくださったんだ。『救助が遅れて命を落とす』事なんて些細な事のようにお喜びだろうさ!」
我儘なんて表現は生温いと言うようなレオンの皮肉に、イオンが蒼褪める。
どうして、ここまで悪し様に言うのだろう?
そして、アクゼリュスの住人達の怒りの視線は、どちらに向けられたものだろう?
「貴方何様のつもりなの?! イオン様に何の恨みがあるのよ!」
「そうだよ! イオン様はあんたみたいな傲慢な人間じゃないんだから!」
ティアやアニス、そして、ガイやナタリアが、イオンを庇いレオンを責めた。
ジェイドだけは、成り行きを見守っているのか黙っている。
「恨みがあったら、暗殺してるっつーの!」
レオンはティアにそう言うと、イオンに言った。
「ところで、『御自分を救助する為に救助隊の出発が遅れて手遅れになった方達を、せめて、看取る為に訪れた』訳ではないなら、『謝罪』の為ですよね? 何時するんですか?」
「謝罪って、イオン様が攫われたのは、六神将が悪いんじゃない!」
「あれ? 六神将って、『教団が有する軍事組織の神託の盾騎士団の幹部』じゃなかったっけ? まあ、でも、オレが言う『謝罪』はその事じゃなくて…」
レオンは、そこで言葉を切ると、アクゼリュスの住人達に向き直った。
「実は、救助が遅れた理由は他にもあって、『神託の盾騎士団が、マルクト側の救助隊を全滅させた』んですよ」
「何だって?!」
彼等の憎しみの視線がイオン達に向けられる。
「本当、酷いよな。『神託の盾騎士団が、マルクトの救助隊を全滅させて』、『神託の盾騎士団幹部が教団の導師様を攫ったのを、導師守護役が、救助隊と合流する為に出発しようとしていた親善大使一行に救助させて』、『その所為で救助隊の出発が大幅に遅れて』、なのに、『導師様はその事を謝罪する気もなく、他人事のように救助を見届ける為に来た』訳だ。『導師様が瘴気蝕害か何かで命を落として和平が破られ戦争になったら』どうするつもりなのかね? 無責任にも程がある!」
「今は、謝罪する場合ではないでしょう? 混乱は救助の妨げとなる」
ジェイドがそう説教すると、レオンは言った。
「今謝罪しなかったら、助からない奴等は、キムラスカやマルクトを…特にマルクトを恨んで死んで行くんだよ! 教団の所為だと知らずにな! お前は自国を悪者にしてでも教団を庇いたいのか!?」
「大事なのは、真相ではなく秩序です。貴方の所為で救助どころではないんですよ!」
「はあ? この人数でどうやって救助するんだよ? 街の外には魔物がいるんだぞ? 盾がいなきゃ戦えない軍人が、どうやって、守るつもりだ?!」
掲載日:2011.02.06
アクゼリュスで遅れた理由暴露は、無題12で
両陛下に手紙送らなかったパラレルでやる予定でした。
レオンでやると、ランダでやるより酷い事言いますね。
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