「キムラスカの先遣隊がいるでしょう」
「やっと思い出しやがったか」
ジェイドがそう言うと、レオンは嘲笑を浮かべた。
「まったく、素人じゃあるまいし。とっとと合流して効率的に救助活動しろよな」
素人に素人扱いされて腹が立つ。
「貴方が邪魔しなければそうしていましたよ」
「その前は何やってた訳?」
誤魔化すと、最初からそうしてろよと更に馬鹿にされた。
「…行きますよ」
「待てよ!」
キムラスカの先遣隊を捜そうとしたジェイド達を、アクゼリュスの住民が引き留めた。
「何です?」
「『何です』じゃないだろ! あんた達の所為でオレ達は危うく全滅する所だったんだぞ! 詫びも無しか!」
「…そんな事をしている間にも、死んで行く人がいるんですよ」
軍人として理不尽に責められるのに慣れているジェイドは、冷たくそう言った。
「アクゼリュスへ急ごうとするルーク様に不愉快になってたのは、何処のどなた達だったかなー? 『導師様を救助している間にも、死んで行く人がいた』のに」
「ルークは、ヴァンと合流したかっただけでしょう?」
「へー、ルーク様が『救助隊を任されたヴァン謡将』と合流したがっているのが不愉快だから、救助隊を待たせたのか?」
レオンは揚げ足を取る。
「そんな事は言っていないでしょう!」
「そうか? そういや、『秩序が大事』だって言ってたよな? 良いのか、謝罪しなくて?」
「今は救助が先です」
そう言って、ジェイドは歩き去り、それをティア達が追おうとした。
「死んでから謝罪されても…」
「なあ…神託の盾兵が妨害したって事はさ…オレ達、全員死ぬって秘預言に詠まれてるんじゃ…」
一人がポツリと呟いた。
「そうかもな。『預言を守らないとユリア様の教えに反する』って、大詠師直属の神託の盾兵が言ってたし」
確かめようと、彼等はティアとアニスとイオンを取り囲んだ。
「イオン様! 私達が全員死ぬと秘預言に詠まれているんですか?」
「全員でなくても、大勢死ぬって詠まれているから、神託の盾騎士団が妨害したんでしょう!」
屈強な鉱夫達の掴み掛らんばかりの勢いに、彼等は身の危険を感じた。
「ちょっと、導師様に失礼でしょう!」
「皆さん、落ち着いて下さい!」
「貴方達、冷静になりなさい!」
しかし、彼等は治まらなかった。
「否定しないって事は、やっぱり秘預言に詠まれているんだ!」
「救助されたら困るから、救助隊を皆殺しにしたんだな!」
「導師様が誘拐されたのも、狂言じゃないのか!?」
「救助隊の出発を遅らせる為か?!」
アニスとティアに掴みかかる。
「何すんの?!」
「止めて!」
「あんた達、何やってるんだ! 落ち着け!」
ガイが止めに入った。
「これが落ち着いていられるか!」
「彼女達は関係無いだろう!」
「関係無い訳あるか! 同じ神託の盾兵じゃないか!」
「止めなさい! 救助隊が全滅させられたのも、イオン様が誘拐されたのも、和平妨害の為です!」
ジェイドも止めようとする。
「そんなの表向きの理由だろう!」
「兎に角、大人しくしなさい! 好い加減にしないと逮捕しますよ!」
渋々離れた彼等は、憎しみの眼差しで彼等を見ていた。
「さーて、ヴァン謡将の所へ行くか」
「誰の所為でこんな騒ぎになったと思っているんです?!」
「謝罪しなかったから鬱積が爆発したんだろ」
レオンはそう責任転嫁をした。
「ヴァン謡将とキムラスカの先遣隊は、向こうの第14坑道に入って行ったとさ」
騒ぎの間に聞き込みをしていたらしい。
「この奥にヴァン師匠がいるんだな。早く行こうぜ!」
「お! 壁の中に埋まっているあれが、鉱石か?」
「あれが?」
レオンが指差す先をルークも見る。
「アクゼリュスの鉱石って、武器や鎧の材料になるから、かなり高価なんだぜ」
「ふーん」
高価と言われても、金銭に疎い上に家が大金持ちのルークにはどうでも良かった。
「て事は、今こっそり持って帰ったら大金持ち?!」
ルークとレオンは、後ろから聞こえた言葉に振り向いた。
「お前、あんな事があった後で、よくそんな、『火事場泥棒的発想』が出来るな!」
「冗談に決まってるでしょう!」
アニスはそう怒鳴る。
「場を和ませようと思っただけじゃない!」
「誰が和むんだ、そんなもん!」
「グランツ響長ですね!?」
そこへ、神託の盾兵が現れ、ティアに第七譜石の確認を要請した。
「ティア、貴女は第七譜石を確認して下さい」
「解りました」
「待てよ!」
ずらりと、先程より多くの村人が、怒りの形相で彼等を取り囲んでいた。
「ルーク、向こうで待ってようぜ!」
「え…でも…」
レオンは、ルークを坑道の方ではなく、住民の囲みの方へ誘った。
「話が終わる前に去るのは失礼だもんな」
レオンがそう言い、ルークは仕方なしについて行った。
正直言うと、彼等の怒りの矛先が自分に向くのが怖かったのである。
村人達は、レオンとルークが此方に来るのを止めなかった。
「ナタリア様とガイも来いよ」
ナタリアは一瞬躊躇ったが、レオンに従った。
ガイも続こうとして、留まった。
「何のつもりですか?」
ジェイドが尋ねる。
「やっぱり、オレ達の救助より、秘預言の方が大事なんじゃないか!」
「しかも、神託の盾騎士団の妨害の所為で何十人も亡くなっているのに、他人事のように金儲け考えやがって!」
彼等は、そう言いながら包囲を狭めた。
坑道の入口は、レオンとルークが退いた直後、人垣で遮られている。
「許せねえ!」
揉みくちゃにされつつもイオンを守ろうとするジェイド達。
「お止めなさい!」
ナタリアが制止の声を上げるが、彼等は耳を貸さなかった。
「なあ…助けなくて良いのか?」
ルークはレオンに尋ねた。
「放っておけよ。痛い目にあった方があいつ等の為だと思うぜ。それで、疑われるような行動を取った事を反省するべきだ」
レオンは冷たく言う。
その時、聞き覚えのある歌が響いた。
「トゥエ、レィ、ツェ、クォ、リョ、トゥエ、セィ」
「あの…馬鹿!」
ティアの歌ったユリアの第一譜歌・ナイトメアで、村人達は崩れ落ちた。
「ティア! この馬鹿ヤロウ!」
レオンはティアに走り寄ると平手で頬を打った。
「…何をするの!?」
「こっちの台詞だ! 何やってんだ、お前は!?」
「仕方なかったわ! こうしなければ、イオン様にまで危害を加えられたかもしれないもの」
「よく見ろ! これが仕方ないだと!?」
レオンが示す、地面に倒れて眠る…。
「な、なあ…こいつ等、動かないけど…」
「当たり前でしょう! 寝ているんだから」
震えるルークに、何を言っているのかとティアが怒鳴る。
直後、ナタリアが、両手を口に当てて震えた。
「こ…この方達、…亡くなっていますわ!」
「…どういう事?」
「どういう事だと? お前の譜歌の所為だろ!」
「そんな筈ないわ! 私は眠らせただけよ!」
「…馬鹿な事言ってんじゃねーよ! 『ナイトメアにはダメージを与える効果もある』んだぞ!」
「嘘…!」
ティアは目の前が真っ暗になった。
「それをこんな…瘴気で弱っている人達にかけやがって! 迂闊だった…まさか、お前がここまで馬鹿だったとはな!」
「知らなかったのよ! 兄さんは、そんな事教えてくれなかったわ!」
「それって、母上も死んでたかもしれないって事か…?」
ルークがそう呟く。
「知らなかったとしても…これだけの人々が亡くなってしまいましたわ…」
ナタリアも責めるように呟いた。
「わ、私が悪いって言うの?! 私は、イオン様を守る為に…!」
レオン達の非難の視線がティアに刺さる。
「私は悪くないわ! そうよ! レオンが彼等を煽るような事を言ったのが悪いんじゃない!」
掲載日:2011.02.07
先遣隊との合流地点って、もしかして、カイツールかな?
暴徒から導師を守る為に武力を振るうのは、当然だと思います。
現代ならともかく、中世なら殺す事も当然でしょう。例え、相手が丸腰の病人でも。
勝手なイメージですが。
でも、救助妨害した神託の盾騎士団に所属する人間が救助する相手を殺したとなると、
教団の評判は地の底ですよね。
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