「火に油注いだのはお前等だろ!? 誠意を見せてりゃここまで怒らなかっただろうさ。『誠意は見せないけど信じて下さい』だなんて虫が良過ぎる話だよな!」
「だから、そもそも貴方が」
「お前等は、『正しいと思った事をやった』んだろ! それを教えて何が悪い!」
「言うべきじゃない場面で言ったのが悪いんですよ」

 ジェイドが、レオンを責めるように見て言った。

「『何も知らずに運命を呪って死んでくれれば、理不尽に責められる事も少なくて済む』って?」
「そういう意味ではありません!」
「最低! 何でそんなあたし達を悪者みたいに言う訳!?」

 アニスもレオンを責める。

「悪者だろ?! お前がルーク達にイオンを助けろって言ったから、救助隊がここへ来るのが遅れて何人も手遅れになったんじゃねーか! 知ってて態々ルーク達に頼んだんだから、救助妨害! 六神将と変わらねーよ!」
「あいつ等と一緒にしないで!」
「そうだな。善人面で被害を与える奴の方が性質が悪い! 『あの人がそんな悪い事する筈無いだろ』とか、『悪気があった訳じゃないんだろうから、そこまで責めなくても』とか、『責める方がおかしい』とか思われるもんな」

 レオンは、イオンを睨んでそう言った。

「まあ、この人達は、自分達の命の問題だから責めた訳だけど」
「イオン様が、何時被害を与えたって言うの!」
「そんな事も判らないのかよ! …お前等さ、ルークが次期国王候補筆頭って解ってるか?」

 アニス達は怪訝な表情になる。

「ナタリアは王家の特徴を持ってないから、その婚約者のルークの方が王になる可能性が高いって事だ。こんな事も判らないなんて、お前等ぐらいだろうな!」
「だから、何?!」
「そのルークを、殺そうとしているアリエッタやアッシュの呼び出しに応じてコーラル城へ連れて行ったなんて、『預言成就の為なら、キムラスカの次期国王候補が殺されようが、問題ありません。キムラスカの王族の命より、キムラスカの軍港を襲撃したアリエッタやアッシュの要求に従う方が大事です。陛下の甥の命はどうでも良いですけど、整備士が助かると言う預言を成就させますから、教団を許して下さい』って意味だろ? 『馬鹿で思い上がった』考えじゃないか!」
「ボ、ボクは…そんなつもりでは…」

 イオンは、悪し様な解釈に蒼褪めた。

「あんたねぇ…イオン様がそんな事考えてる訳ないでしょう!」
「そうよ! そんな風に考えるのは貴方だけよ!」
「そんなつもりじゃないから何なんだ?! 導師の命を軽視したルークは責められて当然で、王族の命を軽視したイオンは責めるなって? 大体、キムラスカは和平を受け入れたけど、教団には、ルークの命を危険に曝した分を含めた多額の賠償金請求しているんじゃねーの? それに加えて、寄付金の削減とか、寄付金の返還要求とかしてるかもよ?」
「ま、まさか…」
「何がまさかなんだ? 『キムラスカに対する敵対行動』なんだぜ」

 イオンはその言葉に考える。

「ですが、寄付金の返還要求なんて、やり過ぎだと思います。もし、そんな事になっていれば、今後、キムラスカに預言を詠む事は考えなければなりません」
「阿呆か! ルークには『キムラスカに繁栄を齎す預言』が詠まれてるんだろ?! それを、『秘預言を知っている筈の教団の導師』が危険に曝したんだ! 返還要求されて当然だぞ!」

 預言を守れと教えて寄付を受けながら、導師がその預言を蔑ろにしては、金返せと言いたくなるのも当然だとレオンは言う。

「あ…」
「なあ、ティア? お前、『預言を無視したら、ユリア様の教えに反する』って言ったよな? 言わないのか、イオンに? 『ルークの命が失われていたら、預言を無視してユリア様の教えに反した事になったんですよ!』って。…言える訳ねーか! 散々、ルークを戦わせたもんな! ルークが魔物とかに殺られて死んでたら、『お前が預言を無視して、ユリア様の教えに反した事になる』もんな!」

 謁見の間でユリアの預言を詠み上げたティアは、『ルークがキムラスカに繁栄を齎す』と知っていた筈だった。
 ルークが民間人と知っていて理解出来なかったように、ルークの預言を知りながら理解していなかったのだ。

「わ…私…」



「ちょっと! イオン様に、アホだなんて、言って良いと思ってるの!?」
「お前がルークに馬鹿って言って良いなら、オレがイオンに阿呆って言っても良いんだよ!」
「私は導師守護役だもん!」
「偉いのはイオンであってお前じゃねーよ! ったく、ガキはこれだから…で、お前はどうすんだ?」

 アニスは、何の事かとレオンを見る。

「『お前がルーク達にイオンを捜して助けろと頼んだ所為』で、『救助隊の出発が遅れて、大勢の人間が手遅れになった』…それをどう償うんだ? って聞いてんだよ!」
「償い?」

 アニスは、それを悪い事とは思っておらず、当然の事だから仕方ない事だったと思っているので、償いが必要だとは思わなかった。

「お前は『自分の仕事の失敗の尻拭い』を、『キムラスカの王族二人にやらせた』あげくに、『大勢の人間を手遅れにした』じゃねーか! 何様だよ!」

 それでも、アニスは、イオンの救助を免罪符にする。

「そうか。じゃあ、ピオニー陛下にもそう言えよ。『私が寝ている間にイオン様が攫われた』ので、『キムラスカ軍に頼む事も出来た』んですけど、知り合いの大佐がいるんだし、『イオン様の為ならマルクトの国民を助ける為の救助隊の出発なんて遅らせても構わない』から、『親善大使一行にイオン様を救助して貰った』んです…ってな! 後、インゴベルト陛下にも言えよ。『私が寝ている間にイオン様が攫われた』ので、『キムラスカ軍に頼む事も出来た』んですけど、知り合いのルーク様がいるんだし、『イオン様の為なら王族が命をかけて助けるのも当然』だから、『キムラスカに繁栄を齎すと預言に詠まれたルーク様だけじゃなく、陛下が溺愛されているナタリア殿下にも、六神将と戦って貰ってイオン様を助けて貰った』んですって! …陛下達、許してくれると良いな!」

 許して貰えるとは思えず、アニスは蒼褪めた。

「で、イオン? お前、ピオニー陛下にどう報告するつもりなんだ? 『神託の盾騎士団がマルクトの救助の先遣隊を皆殺しにした』り、『神託の盾騎士団幹部に誘拐された私を助ける為に、キムラスカの救助の先遣隊の出発を遅らせた』りした所為で、『手遅れになった人が大勢いる』アクゼリュスへ、『私が瘴気蝕害になったら、和平が台無しになるかもしれません』が、『陛下に救助の様子を報告したい』と思ったので、『私を狙う六神将が、もしかしたら、アクゼリュスの街中で襲撃してくる可能性がありました』けれど、行って来ましたって言うのか?」

 イオン達は最早言葉もない。

「『救助が遅れた理由を聞かれて、レオンが勝手に教えた為、彼等の死が秘預言に詠まれているから教団が和平の妨害をしたのかと疑いを与え、謝罪を要求されました』が、『彼等の疑いを否定したり謝罪したりするより救助が先だと思ったので無視し』、『救助より第七譜石の確認を優先した』為、『彼等の怒りを買い、暴動が起きたので、私の身を守る為、部下が彼等を殺害しました』。『悪いのはレオンなので、彼等の謝罪の要求を撥ね退けた事も、疑いを否定しなかった事も、救助より第七譜石の確認を優先した事も、正しかったと思います』って?」

 レオンは嘲笑を浮かべた。

「ピオニー陛下もそう思ってくれると良いなあ?」



「それから、ティア。お前、『ルークの家の罪の無い大勢の民間人にナイトメアをかけた』んだよな? ルークに聞いたけど、『その事謝罪していない』そうじゃないか! 傷害未遂罪か傷害罪か殺人未遂罪か知らないが、どう責任を取るつもりだ?」
「そ、それは…でも、ファブレ公爵に謝罪した時も奥様に謝罪した時も、何も仰らなかったわ!」
「そんなの、教団が多額の金を支払う事で示談が成立したからじゃねーの? 注意も何も無かったのは、よっぽどお馬鹿ちゃんだと思われたんだろ!」

 レオンはそう言うと、もう一度言った。

「で、どう責任を取るつもりだ?」

 ティアが答えられる筈は無かった。





「あ、あの…」

 遠慮がちに声をかけて来たのは、すっかり存在を忘れられていたハイマン――ティアに譜石の確認を要請した神託の盾兵――だ。

「え? 何? 『神託の盾騎士団は、人命より譜石を優先する組織』だって?!」
「…任務ですので」
「そうだよな! 『任務放って救助活動していた半端者』と違って立派じゃないか! 『任務遂行の為なら見殺しにする覚悟』、見習えよ!」

 レオンはティアをそう嘲ると、ティアをハイマンの方へ突き飛ばした。

「『任務を一つもまともに遂行していない』癖に、『一人前面していたお嬢ちゃん』! そろそろ軍人の自覚を持って、軍人らしくなってね! 同郷の人間として恥ずかしいから!」



 おしまい。




掲載日:2011.02.09

ご覧頂きありがとうございました。

↓レオンの性格

常に偉そうで、人を傷付けたり不愉快にする言葉選び。
偉い人にも態度が悪い。
腹が立ったら言い返す。知らない事を馬鹿にする。
自分の態度の悪さを相手の態度が悪い所為にする。
自分は悪くないと思っている。
傷付いている人に追い打ちをかける。

↑ティアの性格

レオンの方が性格悪いんですけどね。
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