「こういう事言ったら、失礼かと思いますがね、市長! 貴方、ティアに『人に迷惑かけたらいけません』とか、『悪い事をしたら、ちゃんと謝りなさい』とか、教えなかったんですか?!」
ユリアシティに辿り着き市長に面会し、アクゼリュスの消滅が預言に詠まれていたのか確認したレオンは、「話は変わりますけど」とそう詰め寄った。
「教えたが…ティアが何か」
「レオン! 人聞きの悪い事を言わないで! 私は何もしていないわ!」
テオドーロの言葉を遮って、ティアが、謂われの無い罪を着せられた被害者のように叫んだ。
「『キムラスカ王家と姻戚関係にある公爵家を襲撃』して、『王族である公爵子息を拉致』した癖に、『何もしていない』だと?! 『刑法にも軍法にも違反した犯罪者』が、ふざけんな!」
アクゼリュスが消滅した事で、それを責められた事などすっかり忘れていたティアは、屈辱気に口を噤んだ。
「何だと? それは、本当なのか、レオン?!」
「まさか、連絡が無かったんですか?!」
テオドーロが知らなかった事に、レオンは大げさに驚いた。
「じゃあ、ティアをアクゼリュスの消滅に巻き込もうとしたのは、大詠師モースの独断か」
「え? …どういう意味?」
ティアの疑問の言葉をレオンは鼻で嗤った。
「アクゼリュス消滅は秘預言に詠まれていたんだから、大詠師であるモース様は当然ご存じだろうさ。つまり、アクゼリュスへ行けって言うのは、死んで来いって意味だろ?」
「ま、まさか! モース様がそのような事」
「『教団とキムラスカの関係を悪化させる事を仕出かした』奴を守るとでも? お前がやった事は、『軍法でも刑法でも死刑』ものだろう?!」
「じゃあ、ルークはどうなの!?」
ティアの言葉に、レオンは益々軽蔑を表した。
「アクゼリュスに行く前の話で、何でアクゼリュス消滅の事が出て来るんだよ! 今、アクゼリュス消滅の話なんてしてないだろう!?」
そう言うと、ティアに人差し指を突き付けて言った。
「第一、お前、預言を成就させなければ『ユリア様の教えに反する』って言ったよな?! だから、ヴァン謡将は、ルークにアクゼリュスを消滅させたんだろう?! ルークの罪は教団の罪だ!」
「何言ってんの?! 教団に責任転嫁するなんて、最低―!」
アニスが怒鳴る。
「ふざけんな! 預言を守れって言うのは『教団の教義』で、『教団の大詠師』がアクゼリュスへ向かわせて、『教団の導師』が封咒を解いて、『教団の詠師』が騙したのに、『教団は責任が無い』だと?! それこそ、『無責任』・『責任放棄』・『責任転嫁』って言う『最低』な事なんだよ! 解ったら、馬鹿な子供は黙ってろ!」
アニスは、言い負かされて不満気に口を閉ざした。
「ティア、一体何故、公爵家を襲撃したのだ?!」
「それは…私も、どうしてあんな事をしたのか…兄さんが、外殻大地を消滅させようとしていると知って、止めなければならないと思って…追い詰められて我を失った獣だったのよ」
「ブハッ!」
レオンは思わず噴き出した。
「追い詰められた獣っ…マジ、ウケる…!」
腹を抱えて息も絶え絶えに笑うレオンを、ティアは傷付いたように睨んだ。
「はー…笑った。…つまり、お前、その程度の実力で謡将と戦って殺せるって思い上がっていたから、誰にも言わずに追い詰められて我を失ったって事か?」
「貴方に何が解るのよ! 追い詰められた人間の気持ちなんて、貴方に解りっこない!」
「じゃあ、お前、『謡将が来客していたってだけで』、譜歌で強制的に眠らされて、しかも、ダメージを与える効果もあるから人によっては死にかけて、大切な息子・守るべき公爵子息を拉致されて、碌に謝罪もされなかったファブレ家の人達の気持ちは解るのか?!」
ティアは、言い返せずに俯いた。
「知らない人間が勝手に家に入って来て、尊敬する師匠を殺されそうになって、気付いたら知らない場所に居て、馬鹿にされて戦わせられて盾にされたルークの気持ちは解るのか?!」
「戦う力がある人が戦うのは当然でしょう!」
「『犯罪加害者が犯罪被害者を戦わせる』のが当然な訳あるか! 事故だろうが、そんなつもりは無かろうが、お前はルークを『拉致した』んだよ! 『罪の自覚も無く』、ルークに『責任転嫁』とかしてるんだろ!? でなきゃ、そんなでかい態度取れねーよな!」
「それは、だって、ルークの態度が悪かったから」
「ルークから聞いたけど、お前、相手の都合も確認せずにファブレ家を訪問して、許可も取らずに夫人の寝室に入って、親子の再会の会話に割り込んで、病人である夫人の体調も考慮せずに許しを請うたそうだな?! まさか、夫人の態度が悪かったって言うのか?! どうせ、お前の態度が悪かったから、ルークだって態度が悪くなったんだろうが!」
しかし、ティアは認めない。
「ルークは最初から」
「最初から?! 第一声からか?!」
「兄さんを止めるのを邪魔したわ! ルークが邪魔しなかったら、こんな事にはならなかった!」
「邪魔が入るような所で襲ったお前が悪い!」
ティアは悔し気に黙ったが、反省などしていなかった。
何故ならば、邪魔が入るような所で襲ってしまったのは、『追い詰められて我を失った獣だった』から仕方が無い。人の気も知らないで邪魔する方が悪い…と思っているからだ。
黙って聞いていたテオドーロが、痛む頭を押さえながら口を開いた。
「ティア…お前は優しい子だったのに、何時からこんな風になってしまったのだ…神託の盾騎士団に入団する事を認めたのが、間違いだったのかも知れんな」
「お祖父様?!」
テオドーロの失望の言葉に、ティアはショックを受けた。
「わ、私は…」
「教団の自衛と国際紛争収拾の為の組織に属しながら、教団のキムラスカへの敵対行動と思われるような事を仕出かすとは…下手をすれば、教団の存続が危うかったのだぞ!」
「教団には関係無いじゃありませんか!」
テオドーロの言葉をまったく理解していないティアに、レオンが怒鳴る。
「お前は教団兵で、軍服着用で襲撃したんだから、『キムラスカへの奇襲攻撃という任務』だと思われて当然だろう! 少しは自分の頭で考えろ! 何時になったら、獣から人になるんだ?!」
「そこまで言う事無いだろう!」
女性に優しいガイが、ティアを庇った。
「良いんだよ! ティアはルークに、自分の頭で考えないなんてお人形だって言ったんだから。生き物なだけマシだろ!」
「マシな訳ないじゃないか!」
「何言ってんだよ! 獣だって言ったのはティア自身じゃねーか!」
「例えじゃない!」
「オレだって、例えですけど!?」
睨み合う彼等に、テオドーロは溜息を吐いた。
「ティア、お前は、最初からヴァンを殺すつもりで外殻大地での任務を希望したのか?」
「…はい」
「お前は、その為に軍人になりたかったのか?」
「それは、違います」
「しかし、任務を遂行するつもりは最初から無かったのだな」
「そんな事はありません! きちんと捜索していました!」
レオンが口を挟む。
「へー、じゃあ、『きちんと捜索』する為に、間違えた振りしてケセドニアとは逆方向の馬車に乗って、『きちんと捜索』する為に、徒歩でカイツールへ向かった訳か。ルークを送り届けるより、『きちんと捜索』する方を優先した訳だな。常識と理性だけじゃなく、誠意まで無いんだな! 判ってたけど!」
「徒歩でカイツールへ向かったのは、神託の盾騎士団がタルタロスを襲撃したからよ!」
掲載日:2011.03.24
ゲームでは、ルークと一緒にシュザンヌの所へ行ったけど、
アニメでは、勝手に入ってルークとシュザンヌの会話を中断させたらしい。
prev next
back