「ガイ…お前がティアを責めなかった上に友好的にしたから、ティアが自分の罪を自覚しなかったんだぞ! お前の職場を襲撃した犯罪者を甘やかすなんて、何考えてんだ?!」
ティアが自分の罪を認めていない事に気付いていなかった――それどころか、ティアがした事を罪とも思っていなかったガイは、目を逸らした。
「マゾか、ファブレ家に悪意有りとしか思えねーな! 或いは、鳥頭か!」
「鳥頭?」
「鶏は、物覚えが悪くて、『三歩歩いたら忘れる』って言われてるんだよ」
レオンは、疑問に思ったルークに教えると、ガイに向き直った。
「仮に、お前がファブレ家に悪意があったとしても、自分も攻撃されたのに責めもせずに、謝られた訳でもないのに許すなんて、マゾとしか考えられねーな!」
「オレはマゾなんかじゃ」
「恥ずかしがるなよ! 別に悪いだなんて言ってないだろ?」
レオンは、そう言うとナタリアに顔を向けた。
「で、ナタリア…お前は何でティアと仲良くなった? 叔母夫婦も従弟も嫌いなのか? おまけに、『キムラスカの民が攻撃された』のに、謝罪も無く許してやるとは、流石、思いやりに溢れていらっしゃる!」
痛烈な皮肉にナタリアは蒼褪める。
「なあ、ティア…『ユリアの譜歌は、譜術と同等の威力がある』のに、お前は、『巻き込まない為』に『攻撃した』んだぞ!」
「わ、私、知らなかったわ! ダメージを与える効果があったなんて!」
「『ユリアの譜歌は理解しないと使えない』のに、知らないなんてある訳ないだろ!」
『譜に込められた意味』を正しく理解していれば解らない筈は無いと、レオンは決め付けた。
「でも、まあ…『知らなかったとしてもナイトメアを歌った』のはお前だもんな。『誰も教えてくれなかったのは悪くない』んだから、情状酌量の余地は無いな! 『瘴気を中和するつもりだった』ルークが許されないなら、勿論、『ヴァンを討つ為に巻き込まないように歌った』お前も許されないしな!」
「私は許して貰えたわ!」
「お前は許して貰ったのに、ルークを許さないのか?」
「だって、ルークは…!」
「お前だって、『罪を認めていなかった』し、『ファブレ家の皆を譜歌で攻撃した事を悪くないと思っていた』のに?!」
ティアは、口を閉ざした。
「『口に出さなかったんだから、罪を認めなくても、悪いと思わなくても、責任転嫁しても良い』のよ! って言いたいのか?」
「責任転嫁なんてしてないわ!」
「じゃあ、何で、『自分が譜歌で攻撃した相手に偉そうにしていた』んだ? お前、ルークの家に勝手に入った事も、その結果ルークとの間に疑似超振動が発動した事も、『ヴァンが悪い事を企んでいた所為』だと、ヴァンに責任転嫁していたんじゃないのか?! じゃなかったら、普通、他人の家に勝手に入って、住民を強制的に眠らせて、その家の人間を危険な所に連れ出してしまった事を、申し訳無く思うだろ! 間違っても、馬鹿にしたり戦わせたり出来ねえよ! 普通ならな!」
「それは…ルークの態度が悪かったから」
「お前に迷惑掛けられたルークに責任転嫁かよ?! その言い訳が通用するなら、ルークがお前等に、『お前等の態度が悪かったから、アクゼリュスが消滅した事を悪く思わない』って言っても良い事になるぞ!」
ティアは、自分の態度の悪さを気付かされて口を閉ざした。
「さて、話がずれたな…仕切り直そうか。皆、席に付け!」
しかし、ティアがファブレ家を襲撃した事を知ったイオン達は、ティアを口々に問い詰める。
「後にして席に着いて静かにしろよ! あ! お前等、二歳だから、静かにするのは無理か?!」
その言葉に、渋々席に着いた。
「んじゃ、先ずは、ジェイドくん、ティアちゃん、アニスちゃん。君達は、確か軍人だったよね? どんな任務に着いているか、言えるかな?」
三人は、子供扱いし始めたレオンを睨む。
「そっか…二歳だから、判らないか」
「解ってるに決まってるでしょ!」
アニスがドンっと机を叩いた。
「じゃあ、判る子は手を上げてー」
苛々しながらも従う。
「はい、ジェイドくん」
「陛下の名代としての和平の使者の任と、アクゼリュス救助の指揮です」
「うん。じゃあ、次。ティアちゃん」
「…第七譜石の捜索よ」
「ふーん。じゃあ、最後、アニスちゃん」
「導師守護役! で、何が言いたい訳?!」
レオンは、それには答えずにガイに目を向けた。
「じゃあ、ガイくん。親善大使一行に同行している理由は何だったか、解るかなー?」
「…ルークの護衛だ」
「わあ! 解ってたんだ〜。偉いね〜」
棒読みでレオンは言った。
「イオンくんが、ダアトを出て来たのは、何でだったかな〜?」
「和平の仲介の為です」
「うん。そうだったよね。…ナタリアちゃんは、お父さんに、アクゼリュスに行く事を何て言われたっけ?」
「…行く必要は無いと」
「そうだったよね!」
この事はルークから聞いていた。
「はい、じゃあ、ガイくんとアニスちゃんに聞きまーす」
「その喋り方やめてよね!」
「はいはい。何で、『護衛の仕事しないで救助した』の?」
「救助の為に向かったんだから、当たり前だろう!」
「そうだよ!」
「じゃあ、そう報告するんだよな? 『六神将のアッシュとアリエッタがルーク様の命を狙っている』事も、『王族であるルーク様が殺されたら、マルクトと戦争になるかもしれない』事も解っていましたが、『救助の方が大事なので護衛をしませんでした』。『イオン様が、和平反対派の六神将に狙われている』事も、『イオン様に何かあったら、和平に影響があるかもしれない』事も解っていましたが、『救助の方が大事なので護衛をしませんでした』…ってな!」
ガイとアニスは、理解する間固まった。
「『六神将の上官であるヴァンが、和平反対派の可能性』は、『本人が違うと言った』ので考えず、結果、『ヴァンがルーク様を騙して超振動でアクゼリュスを消滅させました』が、それに関して、『私は全く悪くありません』! 仮に、『ヴァンの目的が、戦争を起こす事だったとしても』、もし、『ヴァンの狙いがアクゼリュスの消滅ではなく、ルーク様とイオン様の命を奪う事だったとしても』、『救助が必要な人を見殺しにする事は人道に反するので、護衛をしなかった事は間違っていなかった』と思います! 『キムラスカの王族の命も導師の命も、戦争が起きたら失われる大勢の命も、死に直面している人間の命より軽い』んですから。…と言う意味だよな! お前等の言動は!」
レオンは、尚も続ける。
「『護衛の仕事は、護衛対象を護る』事だと解っていましたが、『攫ったり、殺したりする人間が悪いので、護衛しなかった事は、悪くありません』。『勿論、報酬は頂きますよ。当然ですよね。護衛しなかった事は悪くありませんから』…って言ってみな! 激怒されるから!」
自分達の立場の不味さを理解して、二人は蒼褪めた。
「それを、お前等は、ルークやイオンが勝手に側を離れたからだなんて、『責任転嫁』してたんだよな? そんな、『最低』で『幻滅』されるような事をな!」
「次、ジェイド」
ジェイドは、視線を逸らすのをメガネを押し上げる事で隠した。
「さて、問題です。キムラスカの王族が、誰かに殺されたり等した場合、和平はどうなるでしょうか?」
「…破棄されます」
「そうだよな。では、第二問、導師が、誰かに殺されたり等した場合、和平はどうなるでしょうか?」
「…破棄される…かも、知れません」
レオンに、容赦する気などない。
「それが『解っていて、何故、ルーク様とイオン様の側を離れた』のか、答えなさい」
ジェイドは、答えられなかった。
「答えられるだろ! 『お前が離れた結果、ルークとイオンが犯罪に利用された事に責任が無いと思っている』ならな!」
掲載日:2011.02.18
要人警護って、見殺しにする覚悟が無いと務まらないでしょうに。
この話とは関係無いけれど、
ティアの衣装変更称号の『女性響士』の『響士』って、何だろう?
『響士』って、アッシュやディストの階級なのに、
『響長』のティアの『士官学校時代』の制服が、『女性響士』って…。
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