「ピオニー陛下に何て言うのかな? 『和平の為に、キムラスカの王族が世間知らずなのを馬鹿にして、人手が足りなかったので戦わせました』。『私が、キムラスカの王族を馬鹿にして戦わせたお陰で和平が結ばれたので、褒めて下さい』。それから、『和平を受けてくれたキムラスカが親善大使に任命した王族が役に立たないので、蔑ろにしました』。『導師様がアクゼリュスへ行きたいと仰ったので、例え、瘴気蝕害になって夭折する事になっても、来て頂いた方が和平の為に良いと思ったので賛成しました』。『キムラスカの王族が命を狙われているのが解っていましたけど、戦う力があるので放っておきました』。『導師が狙われている事も知っていましたが、キムラスカの王族が守ると思ったので、放っておきました』。『和平妨害を企む六神将の直属の上官であるヴァンは、本人が中立派だと言うので疑いませんでした』…って言うのかな?」
ジェイドは、疑うべきだったヴァンを全く疑っていなかった間抜けさを指摘されて、悔し気に顔を歪めた。
「『キムラスカの王族と導師を放置した結果、ヴァンに利用されてアクゼリュスが消滅しました』が、『放置した事もヴァンを疑わなかった事も全く悪くありません』ので、『アクゼリュスを消滅させた罪を認めず、私を責めた親善大使殿を馬鹿な事を言うなと叱っておきました』。『アクゼリュスの消滅に関して、私には全く非はありませんので、私を責めたり罰したりなんて馬鹿な事』はしませんよね? 『アクゼリュスが消滅したのはヴァンと親善大使殿の所為なので、キムラスカが和平を破棄して戦争になったら、悪いのはキムラスカ』ですから…って言うんだろうな。そうだよな?」
ジェイドは、馬鹿にされた怒りでレオンを睨みたかったが、疑うべき人間を疑わなかった事実が恥ずかしくて顔を上げられなかった。
「オレ、これまで、お前の『和平の使者』とは思えない数々の『馬鹿な言動に苛々していた』んだよ! オレの視界から消えろ!」
「さて、ナタリア。次はお前だ」
ジェイドを視界から外し、ナタリアを視界に収める。
「私が、アクゼリュスの消滅に何の関わりがありますの?!」
「うーん…あるような、無いような…。今頃、キムラスカでは、『アクゼリュスが消滅した事で、ルークとナタリアの生存も絶望視されている』だろうな」
「そうかもしれませんわね」
「『マルクトの仕業でしょう。キムラスカの王族を二人も殺害したのです。戦争するべきです』って、『戦争を望んでいるらしい大詠師』が唆しているだろうな」
「! 急いで外殻大地に戻り、お父様を止めなくては!」
ナタリアは焦った。
「お前がアクゼリュスに来なかったら、もっと早く止められたんだけどな。ここからじゃ、手遅れだろ」
「こんな事になるだなんて、普通思いませんわ!」
「何で? 『キムラスカがマルクトを信用していない事も判ってて』、『和平反対派がいる事も判っていた』だろ? 『開戦させる為にルークの命が狙われるかもしれない』なんて、王族のお前には当然想像がつくだろ?」
「ルークのように、世間の事を知らない訳でもないのに」とレオンは、嘲笑を浮かべる。
「それに、お前がアクゼリュスに来たのって…『王女である私を和平の為にアクゼリュスへ派遣しないだなんて、陛下の判断は間違っています』わ! 『代わりに私が正しい判断をして』差し上げなくては! 『陛下が選んだルーク』だけでは、『親善が上手く行く筈がありません』もの! …って事だよな? 自分の父親を愚王扱いか!」
「そんな事思っていませんわ!」
「でも、お前は『アクゼリュスへ行くのが正しい』と思って来たんだろ? それって、イコール『陛下の判断は間違っている』って事じゃないか」
「私は、ただ、過保護なだけだと思って…」
レオンはそれを鼻で笑った。
「でも…『私が勝手に抜け出した所為でメイドや警護の兵が罰せられようが、知った事ではありませんわ』! 『そんな事より、私が和平の為にアクゼリュスへ行く事の方が大事ですもの』! 『悪いのは、過保護にも私をアクゼリュスへ派遣しなかった陛下なのですから、彼等も私を怨む筈はありませんわ』! …って事だよな? ところで、公務の予定は一つも無いんだよな? 国民が払った税金が無駄になるような事、『民を思いやる心を持ったナタリア王女』はしないよな? それに、これまで、『王族としての役目を理解して果たしてきた』んだから」
『メイドや警護の兵が罰せられる』事を考えてもいなかったナタリアは、蒼褪めた。
公務だってあったのに、その事を思い出しもしなかった。
「さて、帰ったら陛下に何て報告するつもりだ? 『キムラスカの王族にして私の婚約者で陛下が選んだ親善大使が、マルクトの軍人やダアトの軍人に馬鹿にされましたけど、私が馬鹿にされた訳ではありませんし、怒りませんでした』わ。『導師の救助は、和平の為の親善の救助を遅らせて、マルクトの多くの民を手遅れにしてでも行わなければならないもの』でしたのに、それをルークは、『寄り道』だなどと仰いましたのよ! 『イオンがいれば、イオンを助ける為に救助を遅らせた結果、マルクトの民がどれだけ命を落としても、ピオニー陛下はイオンに敬意を払って戦争になどなりません』のに…。しかも、アクゼリュスでは病人に対して、汚いだの伝染るだの仰って…『キムラスカの次代を担う王女である私や次期国王となるべきルークが、仮に、伝染病で命を落とそうが救助の方が大事です』わ! 『陛下も大事な娘の私や、キムラスカに繁栄を齎す預言を詠まれたルークが、命を落としたとしても、イオンに敬意を払って戦争などしませんわよね』!」
そんな筈は無い。
『大事な娘が命を落とした』ら、戦争になるに決まっている。
「『陛下が親善大使に任命したルーク』は自己紹介すら満足に出来ませんでしたから、『代わりに私が親善大使のように挨拶しておきました』わ! 『私が行って正解』でしたでしょう! 『私が行かなかったら、どうなっていた事か!』 親善大使の『名誉』は頂きますけど、『責任』は要りませんから、『親善大使としてルークの罪に責任を感じたりはしません』わ! 親善大使はルークですものね! アクゼリュスは、『ヴァンに騙されて』ルークが消滅させたんですのよ! それなのに、悪くないだなどと仰るから、『キムラスカの王族を騙して罪を犯させたヴァンなんかよりもずっと、許せませんでした』わ! …って感じか? 王族としてのプライド低いな!」
「…伝染病なんて有り得ませんわ!」
ナタリアは、何とかそれだけを否定出来た。
「有り得ない? 何で? お前、チラッと見ただけで何の病気か判るのか? それに、あの様子じゃ、伝染病が発生しても、医者も気付けないだろ」
たった一人の医者と看護師に、一万人も住民がいる広い街の全員の体調の把握等出来る筈も無い。
瘴気蝕害の患者数人の世話で手一杯だったのから。
「『ナタリア王女』の評判とは、まるで別人だな」
何も言えなくなったナタリアに、レオンはそう言った。
「次はどっちに、し・よ・う・か・な? …じゃあ、イオン」
イオンはビクリと肩を震わせた。
「貴方、イオン様まで責める気!? 思い上がるのも好い加減にしなさい!」
自分の罪を知っても反省していていないのか、ティアがレオンを叱る。
「思い上がっているお前に言われたくねーよ!」
レオンは、イオンから視線を逸らさずに言い返した。
「さて、イオン。お前は、『パッセージリングを守る為にかけられていたセフィロトの封咒を解いた』んだよな?」
「え…ええ。迂闊でした」
「それって、つまり…『外殻大地を支えるパッセージリングを守る為にかけられている封咒』を『解けと言われたので、操作出来ないようにかけられている封咒が二つあるので解きました』。『パッセージリングを操作さえされなければ、誰かが壊そうが知った事ではありません』…って意味だよな? 無責任」
「ボ、ボクは…そんなつもりでは…」
イオンは、悪し様に言われて蒼褪めた。
「『ヴァンが、何か企んでいる六神将と同じように封咒を解くように言いました』けど、『中立派のヴァンが大詠師派の六神将と繋がっている訳は無い』ので、『封咒を解いて』、『教団の機密の場所に、部外者のルークを入れるのを黙認しました』…機密の重要性も知らないのか?」
イオンは、反論出来ずに俯いた。
「他に幾つ封咒を解いた?! 『軽い気持ち』で外殻大地を危険に曝しやがって! それでも、導師か!」
掲載日:2011.02.21
ヴァンが何も企んでいなくても、誰かが壊したかもしれない。
その事を、イオンは理解していたのでしょうか?
してないでしょうね。
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