「私は、ヴァンを倒そうとしました! ですが…」
ティアは、恨みがましくルークを睨む。
「ルーク殿に妨害されたと?」
「そうです」
「一度妨害されたぐらいで、ヴァンを倒すのを止めたのか? それでいながら、ルーク殿に責任転嫁の挙句逆恨みか」
「責任転嫁なんてしていません!」
「ならば、何故ルーク殿を睨んだ? 何故、一度だけで止めた?」
ティアは、視線を逸らして言い訳した。
「一度だけなんて…私は何度も…でも」
「オレが邪魔したの一回だけだし、お前が師匠を殺そうとしたのも、その時だけだろ?」
ルークがそう言うと、ティアはまた睨み付けた。
「何を見ていたの!? 私はカイツールでだって殺そうとしたわ!」
「ナイフ構えただけだっただろ。誰も邪魔しなかったのに」
「それは…でも、殺そうとしたわ!」
ピオニーは、呆れて言った。
「つまり、ヴァンを殺そうとしたのは二回だけで、二回目はナイフを構えただけで止めたと」
「それは…だって…」
「ところで、ルーク殿は軟禁されていたのではなかったか? 何故、邪魔出来たんだ?」
「ティアが家に勝手に入って来て、師匠を殺そうとしたからです」
ルークは、ティアを庇う事無く答えた。
「公爵家は警備が厳しいのに、よく侵入出来たもんだ」
「ティアは、眠りの譜歌を歌って皆を眠らせたんだ」
「何故、そこまでして公爵家で襲ったんだ?」
聞かれたティアは答えた。
「ダアトでは警備が厳重ですし、ルークに剣を教えている時なら隙が出来ると思ったからです」
「ダアトでは警備が厳重だから、警備が厳重な公爵家で王族に剣を教えている時なら隙が出来ると襲った? 嘘を吐くなら、もっとマシな嘘を付いたらどうだ?」
「嘘ではありません!」
ティアは否定するが、ピオニーの不審の視線は変わらない。
「当然、ヴァンの計画を誰かに相談したのだろうな? ならば、何故、アクゼリュス消滅を防げなかったのか?」
「教団の機密に関わる事ですし、巻き込みたくないのでしませんでした」
「巻き込みたくないから、阻止出来ずに消滅させられても仕方ないと黙っていた訳か? ふざけるな! 消滅計画の対象にされた時点で巻き込まれている!」
ティアは、「ヒッ!」とピオニーの怒声に怯えた。
「わ、私は、そんなつもりじゃ…」
「この期に及んで自己保身か!」
ティアは、蒼褪め黙り込んだ。
ガイ達は、ティアを責めるピオニーが間違っていると言わんばかりに睨み付けている。
ディストに確認すると、小型化に成功したかは分らないと言う事だった。
「誰一人、ルーク殿が超振動を扱えると証明出来なかったな。そして、消滅させたのは、ヴァンなのかルーク殿なのか、ルーク殿を操ったアッシュなのかも判らない」
「アッシュはそのような事を致しません!」
「誘拐前の話だろう? 洗脳され、ヴァンの為なら大量殺人も辞さない・平気で嘘を吐ける人間に変わったかも知れん」
「アッシュは、ヴァンを止めようと」
「芝居の可能性も否定出来ない」
「好い加減にして下さいまし! アッシュは洗脳などされませんわ!」
「願望は要らん」
ピオニーは、ゼーゼマンに話しかける。
「さて、原告である彼等は、ルーク殿がアクゼリュスを消滅させたと確証出来なかったが、この場合、どうなる?」
「は。証明出来なかった彼等は、死刑となります」
アニス達は、凍り付いた。
「そやつ等は死刑囚だ。連行しろ!」
命令を受けた兵達に囲まれ、アニス達は抗議する。
「どうして、私達が死刑なんですか! 理不尽です!」
「古代イスパニア法で裁けと言ったのは、お前等だろう?」
「証明出来なかったら死刑になるなんて、言わなかったじゃないですか!」
「マルクトの法を無視し、思い通りにしようとした奴等に、誰が親切に教えてやるか」
ピオニーは、冷たくそう言った。
「私は、キムラスカの王女ですわよ! こんな事許されませんわ!」
「そうですよ! イオン様は導師だし、私達だって教団の人間で」
ピオニーは、ゼーゼマンから書類を受け取る。
「あー、先ず、キムラスカ国王から、『我が娘ナタリアは病死した為、既に葬儀を行った。万が一、そちらにナタリアを名乗る偽者が現れ王女として扱われる事があってはならないと懸念し、この文を送る』と親書が届いている」
「わ、私が偽者? 嘘ですわ! 私は本人です! そうですわよね、ルーク!?」
「さあ? お前が本物なのかレプリカなのかそれ以外の偽物なのか、オレには判らねーし。でも、伯父上が本物は病死したって言うんなら、本当なんじゃね?」
「幼馴染だろう! その態度は何だ!」
幼馴染を死刑にしようとしておいて、ガイが叱る。
「何がおかしいんだ? ナタリアだって、アッシュが言うまでオレが偽者だって判らなかったし、アッシュが言ったら本当だって信じた。だから、オレがナタリアが本物かどうか判らなくても、伯父上が言う事を信じても普通の事だろ?」
「でも、庇うべきでしょ! 最低ー!」
「じゃあ、オレを庇わなかったナタリアも最低なんだな」
「貴方が責任転嫁をして、罪を認め無かったからですわ!」
ルークは言い返さず、しかし、ナタリアを庇いもしなかった。
「導師の方は、ダアトから、『導師イオンは、導師が空位となる秘預言の成就の為にマルクトに亡命した為、既に導師ではない』との文書が届いた」
「え?」
イオンは呆然とする。
「僕は、そんなつもりは…」
「つもりが無くとも預言通りなんだろう? アクゼリュス消滅も秘預言通りだろう? 何が不満だ、元導師殿?」
イオンは、震える声を絞り出す。
「ぼ、僕は、秘預言を知らないんです」
「即位の時に確認するらしいじゃないか」
「それは…」
「アクゼリュスへ行った事も・封咒を解いた事も・部外者を入れた事も、消滅の為でなければ何なんだ?」
「アクゼリュスへは、救助を見る為に…」
「アクゼリュスが消滅する前、キムラスカから抗議を受けた。和平の使者であるジェイドのキムラスカの王族であるルーク殿に対する態度と」
「抗議?」とジェイドは不愉快気な表情を浮かべた。
「キムラスカ王家を軽んじる導師を、何の意図があって仲介役としたのかとな」
「え? 軽んじる?」
イオンは不思議そうにした。
「ジェイドだけじゃなく、まさか、和平の意思を信用して貰う為に仲介を頼んだ導師の所為で、和平の意思を疑われるとは思わなかった」
「軽んじるだなんて…僕は何も…」
「何もしなかった? ルーク殿の命を狙うアッシュとアリエッタの元へ、行くように言ったらしいじゃないか」
「ぼ、僕は、そんなつもりじゃ…!」
「そんなつもりが無かったとしても、非を認めないのは悪い事なのだろう?」
イオンは絶句する。
「さあ、連れて行け!」
「ま、待ってください! 私はユリアの子孫です!」
「それが本当だとしても、ユリアの子孫を死刑にしてはならない決まりは無いし、血筋が絶えて困るなら、兄妹共に軍人になるなんて無いだろう?」
「ああ。最後に、ゼーゼマン。もし、ルーク殿が超振動を使ったと証明出来た場合の古代イスパニア法における罰を、あいつ等に教えてやれ」
「はい。ルーク殿は王族。王侯貴族が平民を殺害した場合に課せられる罰は、罰金刑です」
おしまい。
掲載日:2012.03.29
ご覧頂きありがとうございました。
ハンムラビ法は復讐を肯定する法ではありません。
『目には目を』は
目を奪われた場合、目を奪う以上の報復をしてはならないと言う意味。
ただし、同格の人間の場合。
人を死刑にしろと訴えて立証出来なかった場合、訴えた人間は死刑にされる。
家に侵入した場合、侵入場所の目の前で処刑し、埋める。
因みに、このSSのキムラスカは、ルークをアクゼリュスに行かせる為に救助隊は派遣。
和平を結ぶかどうかは、道中のPMのルークに対する態度を見て最終決定。
その任務を受けて同行していた者が、ケセドニアで報告しました。
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