ユリアシティに到着したルークの前に現れたアッシュは、ルークを責める言葉を捲し立て、ルークがレプリカだと言い放った。

「う…嘘だ…! 嘘だ嘘だ嘘だっ!」
「仇なす者よ、聖なる刻印を刻め。エクエールラルム!」
「何?!」

 ルークを責める事に気を取られていたアッシュは、レオンが詠唱していた事に気付いていなかった。
 そして、レオンの姿が目に入っていてもおかしくないティアも、アッシュがルークにレプリカと突き付ける事に気を取られ気付かなかったのか、アッシュに警告しなかった。

「レオン! 何をするの!?」
「はあ?!」

 アッシュを攻撃した事を責めるようなティアの言葉に、レオンは馬鹿にするような声を返した。

「敵を攻撃して、何が悪いんだよ!」
「アッシュは敵じゃないと思うわ!」

 そこへ、先に街の方へ向かっていたナタリア達が戻って来た。
 アッシュと擦れ違っただろうに、遅い。

「テメエ! 何しやがる!?」
「何があったんです?」

 ジェイドの質問に、ティアが答えた。

「アッシュが、ルークがレプリカで自分が本物だと…そうしたら、レオンがアッシュを攻撃して…」

 と、非難の目をレオンに向ける。

「ルークがレプリカ?! では…アッシュが、本物のルーク…?」

 ナタリアが、約束の言葉を覚えているかもしれない『ルーク』の出現に、期待に震える声を出した。

「はっ! 馬鹿馬鹿しい!」

 ショックを受けたルークの耳に、レオンの言葉が入った。

「敵の言う事を鵜呑みにするのか?」

 敵…そう、アッシュは敵なのだ。しかし…。

「アッシュとルークは同じ顔よ! 疑いの余地は無いわ!」

 とティアが言うように、ルークもそう思ったからこそ、自分がレプリカと言う現実を認めたくなかったのだ。

「百歩譲ってルークがレプリカだとしても…アッシュもレプリカじゃないって何故言える!?」

 その言葉に、ルークはハッとなった。
 同じ顔だからと言って、即ち、向こうが本物とは限らない。

「オレをレプリカなんぞと一緒にするんじゃねえ! オレには記憶がある!」
「あっそ! …オレは専門家じゃないからな、ルークのような記憶喪失が有り得ないとも判らないし、レプリカに被験者の記憶を複製出来るかどうかも判らない。だから、記憶があってもお前が被験者だなんて信じられない!」

 レオンがそう言うと、ジェイドが口を開いた。

「私は専門的な知識がありますが、レプリカに記憶の継承は出来ません」
「その知識は、何年前のものだ?」

 ジェイドはメガネを押し上げて、視線を逸らしたのを隠す。

「…何時の知識か知らないが、出来るようになっているかもしれないよなあ?!」
「ふざけるな! オレはレプリカなんかじゃねえ!」

 レプリカ扱いされた怒りと先程攻撃された恨みで、アッシュはレオンに斬りかかった。
 それを剣で受け止めたのは、ルークだった。
 レオンは、唯一ルークを馬鹿にしなかった。責めなかった。味方をしてくれた。

「邪魔するんじゃねえ! 屑が!」
「屑は手前だろうが!」

 レオンが剣を突き刺そうとした為、アッシュは飛び退った。

「誰が屑だと?!」
「自分の犯罪を棚に上げて人を責めたり、主犯の部下の癖に被害者責めたりする奴を、『屑』って言うんだよ!」
「そいつは被害者なんかじゃねーだろうが! それより、オレの犯罪だと? オレが何時犯罪を犯した!?」

 アッシュがそう怒鳴り返すと、レオンは、心底軽蔑して見下した目でアッシュを見た。

「ティアと同じでお粗末だな! ヴァンに育てられるとそうなるのか? 『脳味噌まで劣化している』『劣化人間』は、お前の方だ!」
「オレの何処が…!」

 ティアは傷付いて黙り込み、レオンを睨んでいる。



「神託の盾騎士団はタルタロスを強奪したそうだな?」
「オレは、導師を救出する為と聞いた!」
「導師の救出に、タルタロスを奪う正当性は無い。襲撃は兎も角、タルタロスを盗ったのは、強盗罪だ」
「オレが取った訳じゃねえ!」
「そんな言い訳が通じるか! お前もその場にいて止めなかったんだろ!? 幹部なんだから、共犯と見做されて当然だ!」

 アッシュは、止めなかったのは事実なので、言葉に詰まった。

「カイツール砦でルークを殺そうとしたな?」
「レプリカを殺して何が悪い!」
「レプリカに人権が無いって言うんなら、罪に対する責任も無いな!」
「そんな訳ないじゃない!」

 ティアが口を挟む。

「オレは今、アッシュと話しているんだ! 黙ってろ!」

 そう怒鳴られ、ティアは不承不承ながらも黙った。

「兎に角、殺人未遂罪だ」
「だから、あいつはレプリカで」
「それを信じるとは限らないし、信じても、『レプリカだからと言って殺して良い筈はない』と言うかもな! 皆が皆、お前に都合が良い考え方をしてくれる訳ないだろうが!」

 信じるに決まっているし、皆レプリカを人間と同じと思う筈が無いと思っているアッシュは、レオンを睨む。

「ルークをコーラル城へ呼び出した理由は何なんだ?」
「ヴァンを探る為だ」
「それで、ディストに何か細工させて、ルークを操れるようにしたのか?」
「そうだ」

 レオンは、あからさまに溜息を吐いた。

「そんな事の為に軍港を襲撃させたのか?!」
「足止めする必要があるだろうが!」
「ハッ! 『深く考えもしないで』…アリエッタの魔物でルークを攫えば良いだけじゃねーか! お前が『本物のルーク』だと言うのが本当なら、『本物のルークは、レプリカを操れるようにする為だけに、自国の軍港を襲撃させ・自国の軍人を殺害させ・自国の民の税金で作られた軍艦を悉く破壊させた…暴虐野郎』って事か! 良かったな、ナタリア! 『自国の民を苦しめるような奴』だけど、本物が現れて!」

 レオンの言葉に、アッシュもナタリアも蒼褪める。

「実行犯がアリエッタでもお前が主犯格だからなー、軍港襲撃は勿論罪だし、キムラスカの王族だって言うんなら、反逆罪だよなあ?」

 ナタリアは、アッシュにも事情がと言おうとして口を閉ざした。
 『レプリカを操れるようにする為だけ』なのだから、そんな事情で許される訳が無いと気付いたのだ。

「ところで、お前の話が本当なら、何で帰らなかったんだ?」
「…そこのレプリカに居場所を奪われたからだ!」
「へー、奪い返しもしなかったんだ?」
「…誰も、そいつがオレじゃないと気付かなかった!」
「お前と見比べても?」

 レオンの言葉に、アッシュは口籠った。

「気付かなかったからってヴァンの所へ戻ったのか? そもそも、『元凶はヴァン』なのに? 『誘拐した』のも、『レプリカを作った』のも、『レプリカをお前の代わりにファブレ家へ戻した』のもヴァンだろ? 『誘拐されても居場所を無くされても、まだ師匠』だった訳か! それを棚上げにして、よく、ルークを責められたもんだな!」
「オレは、ヴァンの『預言を無くす』と言う思想に共感しただけだ!」
「だったら、それに協力する為に、『奪い返すのを止めた』んだろうが! 『王族の地位も権利も義務も捨てた』んだ! 今更、奪ったなんて責めるんじゃねーよ! みっともねえ!」
「うるせえ! 屑が! お前に何が解る!?」
「お前の心情も事情も知った事か! お前がヴァンの思想に共感したのは、『居場所を奪われたから仕方なく』なのか!」

 アッシュは、何か言い返そうとしたが、それよりも、レオンの方が早かった。

「『王族が自分の意思で他国へ行って帰らないんなら、それは亡命』だ! 確か、亡命も反逆罪だったな」

 知らずに犯していた罪に、アッシュはそれでも、ルークの所為だと思う。

「『自分の意思でダアトへ行った』んだ! 『家も親も婚約者も、レプリカが自分じゃないと気付かないならいらない』! 『レプリカが自分じゃないって気付かなかったナタリアと結婚なんてしたくない』から、『レプリカがナタリアと結婚したって構わないし、国王になったって構わない』! 『自分を誘拐して居場所を無くしたヴァンに協力して預言を無くす方が、居場所を取り返すよりずっと良い』! って思ったんだろ!? 亡命した事をルークに責任転嫁するなよ!?」




掲載日:2011.02.26

ミュウも味方だけど言い返したり庇ったりはしてくれない。
イオンはティア達の味方。
prev next
back