「後は、導師誘拐か。誘拐罪な。…それから、『ザオ遺跡の封咒を解かせた』んだよな? 『何故、深く考えもせず』、封咒を解かせたんだ?!」
今の今まで忘れていたのか、アッシュは驚愕の表情を浮かべた。
「『ザオ遺跡のパッセージリングをヴァンが破壊したら、お前にも責任がある』からな! 勿論、それに関してはルークに責任は無いから、責任転嫁出来ないな!」
封咒を解いたイオンもまた、アクゼリュス消滅を目の当たりにしながら、ザオ遺跡やシュレーの丘のパッセージリングが破壊される可能性を考えもしなかったのか、愕然としている。
「オ、オレは…知らなかったんだ!」
「『ふざけた事を言うな』! それでも『悪いに決まってるだろうが』! …って、ルークに言ったのは誰だったかなー?」
「う…うるせえ! 屑が!」
逆切れするアッシュに、レオンは軽蔑の眼差しを向ける。
「『とことん屑だな』! ナタリア、お前、本当にこいつが『本物のルーク』だって思うのか? なら、言えよ! 『変わってしまいましたのね。…昔の貴方とはまるで別人ですわ』ってな!」
「…わ、私…」
ナタリアは、言えなかった。
ルークには言えたのに。
「どうした? 言わないのか? そんなに、『記憶を失ったルーク』が許せなかったのか?! 『カイツール軍港襲撃犯』より?!」
「わ、私…」
ナタリアは、俯いた。
言えない。
何故…『約束』を覚えているからも知れないからか? それとも、ルークがレプリカだと気付かなかった事で、アッシュに負い目があるのか?
「アクゼリュスのパッセージリングが消滅して、ザオ遺跡のパッセージリングがもし破壊されたら、『南ルグニカは崩落』するだろうな。あそこは、『キムラスカの領土』だ。カイツール軍港襲撃と言い、お前、本当、『キムラスカに害しか齎してない』な! おかしいなあ? 『ルークには、キムラスカに繁栄を齎す預言が詠まれている』のに! やっぱり、お前が『本物のルーク』だなんて嘘だろ!」
「そんなの、そこのレプリカがいる所為じゃないの?」
アニスの言葉に、流石にティアやジェイドも咎めるような視線を向けた。
しかし、叱ったりはしない。
「…生きていて、ごめんなさい」
アニスの言葉に、自分がいる所為でアクゼリュスは消滅した、ザオ遺跡も消滅するかもしれないと、イオンは罪悪感で卑屈になった。
「え? イオン様、何か言いましたか?」
「…いいえ」
顔色が悪いイオンを気遣う事無く、アニスは更に、ルークを責める。
「第一、そいつだって、アクゼリュスを消滅させたじゃない! どこが、『繁栄を齎す』な訳?!」
「アッシュが罪を犯した事を、ルークに責任転嫁か! イオン、そんな『導師を誘拐した人間を庇う最低な導師守護役なんて放っておいて』、行くぞ!」
レオンは、アニスのその言葉を無視してそう言うと、ルークとイオンを連れて街の方へと歩き出そうとした。
「…イオン様…?」
レオンに従うイオンをアニスは呆然と見遣る。
「何処へ行くつもり?!」
「市長の所だ!」
テオドーロに会うと、レオンはアクゼリュスの消滅が秘預言に詠まれていたのかを尋ね、テオドーロは預言を明かした。
「…イオン様…何故、アクゼリュス消滅の預言を成就させたんですか?」
テオドーロの手前、イオンに敬語を使う。
「え?」
「イオン様は導師です。『秘預言を御存知です』よね? 『セフィロトの封咒を解いたのは、秘預言成就の為』でしょう?」
レオンの怒りの視線を受け、イオンは身を竦めた。
「ち、違います! ボクは…秘預言を知らないんです」
「おかしな事を…就任の際に確認したでしょう」
テオドーロがそう口を挟む。
「あ…それは…」
イオンは何も言えずに俯いて黙り込んだ。
「『アクゼリュスへ行きたいと言ったのはイオン様』です。『アクゼリュスへ行き封咒を解いたのは、預言成就の為』ではないと、信じて貰えると良いですね、マルクトに」
その言葉に、ジェイドは考えを巡らせる。
イオンが封咒を解いた事を報告しなければ良い。
『ルークがアクゼリュスを消滅させた』。それだけならば、問題無い筈だ。
「『親善大使がヴァンに騙されアクゼリュスを消滅させました』→『一緒に助かったという事は、その場にいたんだな? じゃあ、何故止めなかった?』…さあ、答えは?!」
まるで心を読んだかのように、レオンがジェイドに言う。
「『駆け付けましたが、間に合わず…』→『王族放って何処行っていた、護衛!?』…さあ、答えは?」
レオンはガイに指を突き付ける。
「…救助を」
「『護衛が救助だと?! 護衛の重要性を理解していないのか?! アクゼリュスの消滅は、お前が護衛しなかった所為でもあるようだな?!』…に100ガルド賭けるわ」
護衛より救助を優先させた事を悪いと思っていないガイは、レオンを睨んだ。
「『ところで、ヴァンに怪しい点は全く無かったのか?』 …と聞かれたら?」
今度はジェイドを指差す。
「それは…」
無かったと答えようとして、口籠った。
「『神託の盾騎士団がタルタロスを襲撃したんだから、その責任者のヴァンは当然怪しい』だろう! …『本人が中立だと言ったから信じただと? アホか!』 『それで、ルーク殿から離れたのか?! アクゼリュスの消滅は、お前がヴァンをあっさり信じた所為でもあるようだな?!』…に100ガルド賭けるわ」
レオンはジェイドに嘲笑を向ける。
「せいぜい、根掘り葉掘り聞かれて、ぼろ出さないように気を付けな」
ジェイドは、そんな間抜けじゃないとイラつきを覚えた。
「もしかして、キムラスカは、この預言知ってたんじゃ…」
会議室を退出した所でレオンはそう呟き、ナタリアが否定した。
「でもなー…『ファブレ家を襲撃したティアを捕えずに、秘預言に消滅が詠まれていたアクゼリュスへ行かせた』んだぜ?」
「残念ね。私は、モース様からアクゼリュスに第七譜石があるらしいから行くようにと言われたのよ」
ティアが、レオンの言葉を否定出来るのが嬉しいのか、何処か得意げにそう言った。
「そうか。じゃあ、『秘預言を御存知の大詠師』であるモース様が、お前に『アクゼリュスで死んで貰いたかった』んだな」
「何を言うの! モース様はそのような方じゃないわ!」
「でも、『モース様は、秘預言を知っている』だろう? アクゼリュスに第七譜石があるんなら、『第七譜石が消滅に巻き込まれたら困る』んだから、『聖なる焔の光に同行させないで、もっと、早く着くように別行動させる』のが当たり前だろ?」
「それは…秘預言を御存知無いのよ!」
レオンは、ティアに見下しの眼差しを向けた。
「本気で言ってるのか? そんな事、ある訳ないだろう」
「私は、ルークのご両親に許して貰ったのよ!」
「それが? モース様は許さなかったんだろ?! お前みたいに、『ダアトからキムラスカへの敵対行動と見られる犯罪』犯した人間を…直属の部下に体面に泥を塗られて、御咎め無しで済ましてくれると思ったら大間違いだ! 世の中なめてんじゃねーよ!」
「『敵対行動』って…私は、ルークを巻き込んでしまっただけじゃない!」
「…ルークは王族なんだから、敵対行動と見られて当然だろ! そんな事も解らない馬鹿はお前ぐらいだろうな! それから、ナイトメアで眠らせて侵入したそうだが、士官学校行ったのにそれが犯罪だと判らないなんて、お前授業中何やってたんだよ!? 寝てたのか?!」
ティアは、言い返せずに黙りこんだ。
しかし、反省心ではなく、『そこまで言う事無いじゃない』と被害者意識を抱いていた。
掲載日:2011.03.01
アッシュって、パッセージリングの事、何時知ったんでしょうね?
誰が教えたんでしょう?
関係無い話ですが、史上最年少の殺人犯は、二歳だそうです。
レオンは、賭けに勝って100ガルドずつ徴収しました。
ジェイドは、きっと、根掘り葉掘り聞かれてぼろを出したでしょう。
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