「アクゼリュスの消滅は、預言によるとキムラスカの繁栄の切っ掛けだったな」
「でも! 犯罪じゃない!」

 アニスが怒鳴る。

「『預言を成就させるな』って? ティア、言ってやれよ! 『ユリア様の教えに反してしまうわ』って!」
「こんな預言は回避するべきよ!」
「『ユリア様の教え』とか言ってたのは、何だったんだよ!?」
「ユリア様が、こんな事望んでいた筈は無いわ!」
「じゃあ、教団が死の預言を隠すのは、『ユリア様の教えに反している』んだな? どうして、間違っているって言わないんだ?!」

 家族であるテオドーロもヴァンも詠師だし、導師であるイオンにも、ティアの性格なら言えない筈が無い…レオンはそう考えた。

「言える訳ないじゃない!」
「はあ?! 王族であるルークを馬鹿にしたり盾にしたりする『失礼極まりない』・『態度の悪い』・『身分制度にあからさまに反抗している』人間が、言えないだと?!」
「それは、ルークの態度が悪かったから」
「だから、ルークの態度が悪いからって、『王族でも関係無いと身分制度に反して馬鹿にするなんて、失礼極まりない態度の悪さ』になったんだろ!?」

 レオンの怒鳴り声を耳にしたユリアシティの住人が、ティアを指差してヒソヒソと囁き合う。
 それに気付いたティアは、余所者だからって此方が悪いと決め付けるなんて…と理不尽を覚えた。

「だって、ルークの態度が」
「もう良いよ! 何を言っても、自分に非があるとは欠片も思わないんだな!」



「ああ、忘れる所だった」

 レオンは、居住区へ向かおうとして足を止めた。

「アッシュ、さっき、アクゼリュスの事、ルークに責任転嫁しているって言ったよな?」
「ああ。どういう意味だ!? オレは責任転嫁なんてしていない!」

 ずっとレオンを睨んでいたアッシュがそう怒鳴る。

「お前…確か、あの時言ったよな? ヴァンが助けようとしていたティアを連れて来た…って」
「それが、どうした?!」
「ティアは、神託の盾兵に連れて行かれそうになったんだよな? 自力で逃げたのか?」

 ティアはレオンを無視したが、レオンは気にしない。

「お前、ティアを連れて来るなんて時間のかかる『余計な事をしなかったら、間にあった』って解ってるのか?!」
「…な…に…?」

 アッシュは愕然とした。

「お前は、『ヴァンを止める事より、ヴァンへの嫌がらせの為にティアをアクゼリュスの消滅に巻き込む事の方が大事』だったんだろ!?」
「!? ち、違う!」
「何が違うってんだ!? ティアを連れて来る必要性なんて無かっただろうが!」
「私がいなかったら、貴方も助からなかったのよ!?」

 必要無いと言われたからか、ティアがそう詰め寄る。

「結果論だ! そんなの、アッシュは知らなかっただろう!?」

 言い負かされて、ティアは不満気に口を閉ざした。

「お前が余計な事をしなけば、阻止出来たかも知れないのに!」
「五月蝿い! オレはそいつに奥へ行くなって言ったんだ! それなのに!」
「『自分を殺そうとしたり』・『自国の軍港を襲撃したり』・『知人を誘拐したり』・『身体を操って人殺しをさせようとしたり』した奴より、尊敬する人間の方を信じるのが人ってもんだろ!」
「ウルセー! ウルセー! レプリカはオリジナルの言う事聞くべきなんだよ!」

 レオンは、軽蔑の眼差しでアッシュを見てから、ガイに視線を向ける。

「おい、ガイ。自称オリジナルルークに、『幻滅させないでくれ』って言わなくて良いのか?」

 そして、ジェイドに視線を移す。

「ジェイド、お前もだ。『馬鹿な発言に苛々させられる』って言わないのか?」

 しかし、二人は俯いて何も言わなかった。

「そうか、そうか。お前等そんなにアッシュが好きか。ガイは『友達より、友達殺そうとした奴の方が好き』で、ジェイドは、『部下を皆殺しにしたタルタロス襲撃犯の一人が好き』か。よ! モテるね、色男!」

 レオンは、アッシュに棒読みでそう言う。


「お間はレプリカが、人形か何かだと言いたいのか? だったら、人形に責任なんてある訳ないから、アクゼリュス消滅の責任はお前に行くんだぞ!」
「消滅させたのは、レプリカだろうが!」

 レオンは、馬鹿にするようにワザとらしく溜息を吐いた。

「お前も二歳な」

 タルタロスで、ティア達に『お前、二歳な』と訳の解らない事を言っていたレオンは、アッシュにもそう言った。

「それ、何なんだ?」
「ん? ああ、子供並みって言いたいだけ。最初は、音素数に因んで年齢を七で割った数にしようと思ったんだけど、バラバラだと覚え辛いから二歳に統一した」

 ルークの疑問に答えると、アッシュに視線を向ける。

「オレが二歳並みだと?!」
「ルークがレプリカってのが本当なら、ルークは生まれて七年だろ? でも、ルークは人を殺すのが悪い事だってちゃんと解ってる。でも、お前は解らないから、『レプリカを操るという欲望』の為に、『カイツール軍港を襲撃させた』んだよな! だから、幼児並みなんだよ!」
「悪い事だって解ってるなら、責任転嫁する訳ないじゃん!」

 アニスがそう声を上げた。

「気が動転したんだろうが! 皆が皆、お前みたいに神経図太くないんだよ!」

 図太いと言われたアニスは、レオンを睨み付ける。

「おい! どうして、アクゼリュス消滅がオレの責任になるんだ! 百歩譲ってそいつに責任が無いとしても、責任はヴァンに行くだろう!?」
「お前から作られて、お前に従えってんなら、お前に管理責任があるだろ!」
「好きで作られた訳じゃ…!」
「お前の『道具』なら、管理責任があるだろうが!」

 アッシュは憮然とした。



「あ、そうだ! 今思い付いたんだけど…お前、何で預言を無くそうと思ったんだ?」

 レオンは、そうアッシュに尋ねた。

「…ND2018に死の預言が詠まれていて、キムラスカはそれを知りながら預言通りにしようとしている…と」

 アッシュは、律義に答えてやる。

「…へー。『命が惜しくて戻って来なかった』のに、『居場所を奪われた』ねぇ? 何、お前、本当は、『預言通りに死にたかった』の?」

 アッシュは、怒りにレオンを睨み付けるが、言い返す言葉が見付からなかった。

「『ルークを殺そうとした』もんな〜。そうか。やっぱり、『預言通りに死にたかった』んだな。だから、『ティアを連れて来る事で時間を稼いで、ヴァンを止めるのが間に合わないようにした』んだろ?」
「違う!」
「何が違うんだよ? ルークがレプリカだと言うのが本当なら、ヴァンは、『お前の代わりにレプリカに死んで貰おう』って言ったんだろ?」
「それは…レプリカが死んでも、オレがダアトに居る事を知らないんだから」
「お前、自分を誘拐したヴァンを良くそこまで信じられたな。ヴァンは、『レプリカが死んだら、仕方なくお前を預言通りに殺そうとする』とは思わなかったのか?」

 アッシュの言葉を遮って、レオンはそう言った。

「ヴァンは預言を無くすって言ったんだ! そんな事」
「だから、それが本心だと、よく信じられたな?」

 もう一度遮って、レオンは嘲笑を浮かべた。

「やっぱり、『裏切られても、まだ、師匠』だったんだな」





「さて、言いたい事は取り合えず全部言ったし、オレの家に行こうぜ、ルーク」

 ルークを促して居住区へ向かうレオンは、ふと足を止めて振り返った。

「あ、そうそう。オレは、ルークがレプリカだって信じてないから。…よく出来た作り話だったな!」



 おしまい。




掲載日:2011.03.04

ご覧頂きありがとうございました。

死の預言の少し前にレプリカに入れ替えれば良いとアッシュは思っていたんでしょうね。
まあ、その場合、超振動実験はずっと続けられたでしょうけど。
ヴァンが言うには、精神を蝕む実験らしいですし、
ND2017頃には、廃人になっているんじゃないでしょうか?
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