第三位王位継承者ルーク・フォン・ファブレをアクゼリュスへ送り出してから、数週間後。
 アクゼリュスは消滅せず、代わりに、ルークとイオンが何者かの襲撃を受け、ルークが命を落とし、イオンは直らない傷害を負った。
 犯人を目撃した者はいない。
 因みに、ナタリア達は赤痢になった。




「犯人の心当たり?」

 預言にアクゼリュスへ行くと詠まれ、ルークに同行を許されて現場にいたレオン・ハーミットの取り調べ。

「そうですねー…『ファブレ公爵家を襲撃した』らしい神託の盾騎士団兵のティア・グランツ、タルタロス襲撃時に『ルーク様に刃を向けた』らしい神託の盾騎士団幹部のラルゴ、同じく『イオン様に銃を向けた』らしい神託の盾騎士団幹部のリグレット、『ルーク様とイオン様を育ての母親ライガクイーンの仇と殺害宣言した』神託の盾騎士団幹部のアリエッタ、カイツールで『ルーク様を斬り殺そうとした』神託の盾騎士団幹部のアッシュ、『導師守護役でありながらイオン様を全く守ろうとしなかった』神託の盾騎士団兵のアニス・タトリン、『ルーク様が乗っていると知りながらバチカルへの連絡船を襲撃して来た』らしい神託の盾騎士団幹部のディスト、『七年前のルーク様誘拐の犯人だった』らしいヴァン・グランツ、『和平妨害の為かイオン様を誘拐した』らしい神託の盾騎士団幹部のシンク」

 次々と上げられる具体的な心当たりに、愕然とする取り調べ官達。

「それから、『和平の使者でありながらルーク様を戦わせた』マルクト帝国軍将校ジェイド・カーティス、『ルーク様の護衛でありながら全く守ろうとしなかった』ファブレ公爵家使用人ガイ・セシル、ルーク様に汚いと言われたアクゼリュスの住民達」

 そして、声を顰める。

「ここだけの話、『ヴァン・グランツがルーク様を誘拐したと耳にしながら捕えさせなかった』ナタリア殿下も怪しいんじゃないかと…」

 とんでもない事を口にしたレオンに不敬だと言ったものの、怪しくないとは言えなかった。

「ティア・グランツが襲撃したらしいと言うが、誰に聞いた? 本当なら同行させる筈がない」
「ルーク様に。…『大詠師モースが同行させたいって陛下に言った』とルーク様から聞きました。そもそも捕まえなかったし、キムラスカと教団で何か裏取引でもしたんじゃないですか?」

 後にティアに確認すると、巻き込まない為に眠らせただけ・狙ったのはヴァンだけと訳の解らない主張をされたが、それ等から襲撃は事実と判断された。

「…では、タルタロスはマルクトの軍艦だろう? ルーク様が何故そこに?」
「『ティアとの間に疑似超振動が発動して、マルクトに移動した』らしいですよ。『ジェイドに不法入国者として連行された』とか」
「誤解が解けたら謝罪をしたり…」
「いや、ティアが、疑似超振動は偶然起きただけだって言って、イオン様が、信用出来ると思いますし和平に協力して貰いましょうと仰って、ジェイドに、『断ったら軟禁する』とか言われただけらしいですよ。謝罪なんてされなかったって」

 後にジェイドに確認すると、不法入国は事実で謝罪するような事ではない・機密漏洩を防ぐ為に軟禁するのは当然と、事実と認めた。

「ルーク様とイオン様が、ライガクイーンの仇とは?」
「教団の聖獣チーグルが、エンゲーブの北のライガの生息地を火事にして、移り住んで来たライガに捕食されるのを防ぐ為に、エンゲーブの食料を盗んでいたらしいです。それを知ったイオン様が交渉すると、ルーク様とティアと『火事を起こしたチーグルを連れて』ライガ・クイーンの元へ行ったそうです。で、当然ライガクイーンが怒って、卵が孵る前に倒そうってティアが言ったらしいですよ」
「ルーク様が、魔物と戦わせられたと?!」
「後に、『神託の盾騎士団とも』ですよ。ティアに、『戦う力があれば子供だって戦うって言われた』らしいです」





 取り調べは、いよいよアクゼリュスでの事になった。

 殿下が率先して病人に駆け寄ったんです。
 それにルーク様が、汚い・伝染るかも知れないだろうって大声を上げられまして、殿下はそれに憤慨されてルーク様を非難されました。
 で、僭越ながらオレが、好きでこんな状態になった訳ではないのですから、そのような酷い事は、思っていても口や態度に出されないよう申し上げました。
 その後、オレが、ルーク様にカイツール軍港で買った手袋とマスクをさせました。
 ガイやアニス? 持っていませんでしたよ。
 オレ達がマスクをしたのを、ティア達は失礼だとか無神経だとか責めましたね。
 瘴気蝕害以外の病気も発生している可能性があるんじゃないかと言ったんですけど、そんな報告は受けていない・現地の医者も発生しているなんて言わなかったとか聞く耳持ちませんでした。
 医者の数? さあ? オレが見たのは一人だけですけど。
 そうですよね。把握しきれませんよね。

 三十分ぐらいして、ルーク様達が病気になって命を落とすような事になったら和平に影響が出ると思って、街の外へ出るように申し上げたんです。
 でも、ガイとかに、人手が無いのに何を言っているんだとか、突っ立ってないで何かしたらどうだとか言われたんですよ。
 え? ああ…ガイがルーク様の護衛しなかったんで、オレが勝手に代わりを。
 ルーク様達が病気で命を落として和平に影響が出たらどうするんだって聞いたんですけど、ティア達は、病気になる事を恐れたら何も出来ないとか・そんな簡単に病気にならないから2・3日は大丈夫だとか言いましたね。
 護衛しろと言わなかったのかって?
 言いましたよ、勿論。殺されたらどうするんだって。そしたら、有り得ない事気にするより救助活動をしろと言ったんですよ。
 え? アニス? アニスは、皆いるし、イオン様が勝手にどっか行かなかったら大丈夫って言ってましたよ。

 で、皆いて、イオン様が勝手にどっか行かなかったのに、有り得ない事が起きた訳です。

 その時、オレはトイレに行っていました。
 今思えば、ルーク様と一緒に行くべきでしたね…。





 民間人であり善意でルークを守ろうとしていたレオンは、御咎めを受けずに済んだ。
 ティアとヴァンは、公爵家襲撃の罪・王族誘拐の罪でそれぞれ処刑された。
 アニスとガイは、行方不明である。
 ナタリアは献身的な面が評価され、離宮を治療院として使用する事を許可され、そこで、病人や怪我人の看護に当たる事になった。
 六神将も其々の罪で処刑された。
 モースも病死した。
 そして、ジェイドの首と共にマルクトに宣戦布告が届き、アクゼリュスは孤立した。



 開戦を報告されたイオンは、病床で――神経が傷付いて起き上がれなくなった――後悔の涙を流した。
 アクゼリュスへ行かなかったら・アニス以外にも導師守護役を連れていたら・レオンの言葉に耳を貸していたら――。

「ごめんなさい…」

 謝罪の言葉は、誰にも届かない。




レプリカでも必ず死亡時乖離するとは限らないという設定です。

2011.04.07

ナタリアがどうなったかを書き忘れていたので追記。
ナタリアが望んだ訳ではありません。身分は王女のままです。
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