わたし、目覚める!(2)
「お姉様と一緒に貴族院へ行けるなんて、わたくしとっても嬉しいです!」
ニコニコと頬を赤く染め愛らしくはしゃぐシャルロッテの可愛さに、わたしの心は暖かく満たされる。
シャルロッテが天使すぎてツラい。
ここは天国かしら?
この笑顔が見れるなら、屈辱の留年扱いも耐えられる!!
・・・いや、留年じゃないけど。
ちゃんと事情を伝えて申請してもらうけどさ。
ユレーヴェに2年浸かってましたって・・・。
「私は一人で先に入学することになり少し不安だがな。まあ、準備不足でばたばた貴族院に行くことになっては、其方も辛いだろうから仕方ないな」
ヴィルフリート兄様が苦笑混じりにわたしを気遣ってくれる。一緒に入学するのを楽しみにしてくれてたのかな?それなら申し訳ないことになったね。
今日は兄妹三人で初めてのお茶会をしてる。
わたしがユレーヴェから目覚めて一月。
やっと神官長から登城が許された。
アウブである義父様から仰々しくシャルロッテを助けたことを感謝されたり。おじい様にお礼を言ったり身体強化の魔術を教えてもらう約束をしたり。
そして翌日には現在の子供部屋の様子を聞くため、シャルロッテ主催のお茶会に招待してもらった。
昨夜の夕食会でわたしが今冬の貴族院行きを断念したと聞いてから、シャルロッテはずっとニコニコしてる。薔薇色のほっぺが本当に可愛い。
「お姉様の目覚めが間に合わなくて入学を一年遅らせることになったのは、お姉様にとって辛いことだと分かっているのです。でもこの冬の子供部屋も奉納舞の練習もずっと一緒にいられるのがわたくしは本当に嬉しくて。あの・・・こんなに喜んでしまって、お姉様には不快でしょうか?」
自分のテンションが上がりすぎていることにようやく気付いたシャルロッテが、おそるおそると聞いてくる。
そんなことない!喜んでくれてるのは嬉しい!ぎゅーをして一緒に喜びたいくらいだが、まずは姉としての威厳を見せないと!
「不快なわけないですわ!わたくしもシャルロッテと一緒に北の離れで生活することが楽しみです。それにフェルディナンド様から、入学までの一年は淑女教育と社交の練習に力を入れるよう言われているのです。シャルロッテも協力してくれますか?」
「もちろんですわ!たくさんお茶会しましょうね」
うふふ、と微笑み合うわたしたち。
外は吹雪の寒さだけど、この空間だけ春が訪れ花が舞う幻が見えるような気がするよ。
「ヴィルフリート兄様は貴族院の様子をよく観察してきてくださいね。それと図書館の大きさや蔵書数、利用人数などの詳細もお待ちしておりますわ!」
最後の方は興奮してついつい声が大きくなってしまった。
後ろからリヒャルダがそっと肩をおさえる。
ヴィルフリート兄様は呆れた顔でため息をついた。
「期待しているところ悪いが、私は図書館に行く予定はないぞ。そもそも領主候補生は、自分で足を運ぶものではないそうだ。相変わらず其方の頭の中は本のことばかりだな」
「もちろんですわ!本のことを考えていないわたくしなど、もはやわたくしではありません!ユレーヴェから目覚めると、すぐ目の届く場所に新しく印刷された本が5冊も置いてあったのです。わたくしが眠っている間も印刷業が止まっていなくて本当に安堵しましたわ」
本と印刷業への愛を高々と語ったところで、シャルロッテが側仕えに視線を移し私へニコリと可愛い笑顔を見せてくれる。
「お姉様、実は・・・わたくしからお姉様へ贈り物があるのです。二年前わたくしを助けてくださったお礼をさせてください」
シャルロッテの側仕えからリヒャルダの手に渡るそれは・・・!
検分を終えて私の手元に置かれた、読み応えのありそうな本からもう目が離せない!
「シャルロッテ・・・!良いのですか!?本はとても高価なものですのに・・・!」
「もちろんです。わたくしお姉様に一番喜んでいただけるのもを用意したかったのです」
ニコリと笑うシャルロッテが光り輝いて眩しい。もはや目を開けていられないほどの神々しさだ。
「ありがとう存じます、シャルロッテ!本当に嬉しくて・・・わたくし、もう・・・・・・神に祈りを!」
体内をグルグル回る興奮の熱を祈ることで発散したら、私は案の定気絶した。
ああ・・・シャルロッテとヴィルフリートにトラウマを植え付けることになりませんように・・・。