わたし、目覚める!(3)

「口の中が苦いです」
「さもありなん」


目が覚めると北の離れの自室で寝かされていた。
・・・またやってしまった。

「倒れた時の状況は覚えているか?」
「シャルロッテに本を貰って嬉しすぎて感情の制御ができませんでした」
「やはり君は本に関わることが一番要注意だな。だが今回は良い機会だった。君の突然倒れる姿を兄妹に見せておくのは今後の布石になる」

神官長が悪い顔で笑ってるよ・・・。
二人にトラウマを植え付けたいわけじゃないけど、確かに知っておいてほしい気持ちはある。
貴族院に行ったら虚弱なわたしのフォローをお願いすることもあるしね・・・。

いつもの流れで神官長に診察される。

「腕輪の魔石がもういっぱいだな。交換してもらいなさい」
「かしこまりました」

腕輪についたいくつもの魔石が全て満たされている。
わたしは先程のお茶会で余程興奮していたようだ。


この腕輪はユレーヴェから目覚めてすぐの頃、神官長から渡されたものだ。
大きな魔石がいくつもついているごつい腕輪だが、重さをなくす魔法陣が刻まれているらしく、付けていて違和感は特にない優れものだ。

わたしは昔から無意識に魔力圧縮を繰り返していて、そのため体内に大量の魔力を貯め込んでいた。
ユレーヴェが長引いたのはそれも原因のひとつだった。

圧縮をしすぎると成長が阻害される。
体内に魔力の固まりがゴロゴロあった時は仕方なかったけど、今はもう圧縮は極力止めなさいと言われた。魔力が溢れそうになったら、圧縮するのではなくこの腕輪の魔石に流すのだ。そうすれば体内の魔力は薄くなる。

つまり!わたしの体が成長するということだ!!


来年の貴族院までに出来るだけ成長を促し、少しでも外見上のハンデをなくした方が良いと神官長は考えてくれたらしい。

・・・目覚めた時も感じた違和感がまた顔を出す。
なんというか・・・気を回しすぎてて不自然なんだよね。


「明日は子供部屋に顔を出すのだろう?夕食は部屋で食べて早目に寝なさい。起床時に問題ないようなら、予定通り行動して構わん。それと君の側近を決めなくてはならない。候補は決まっているが、貴族院に行く見習いの者ばかりだ。子供部屋で相性の良さそうな者がいないか見ておきなさい」
「候補の者たちは教えてもらえますか?」
「あとでリヒャルダに確認するといい」

神官長の後ろに控えていたリヒャルダに視線を向けると、軽く頷かれた。
明日には新1年生のヴィルフリート兄様も貴族院へ行くので、子供部屋にいるのは10歳未満の30人ほどらしい。
お話好きの文官志望の子がいるといいなー。


そして翌日。

体調に問題がなかったので、ヴィルフリート兄様を見送るため転移陣のある部屋へ来た。領主夫妻とシャルロッテも一緒だ。

「ローゼマイン、ここまで来て大丈夫なのか?昨日は突然倒れて驚いたのだぞ」
「ヴィルフリート兄様、昨日は失礼しました。興奮すると気絶しやすいのは以前と変わらないようですの。シャルロッテも驚かせてごめんなさいね」
「いえ、お気になさらないでお姉様」

わたしたちの会話を眺めていた義父様が「その体質は治らなかったのか・・・」と呟いている。


「ヴィルフリート、体に気をつけて。良く学び、領主の息子の名に恥じない行いを期待しています」
「かしこまりました、母上」

「貴族院でのお話を楽しみにしておりますわ、お兄様」
「うむ。其方も子供部屋を頼むぞ」
「はい」

「フェルディナンドにもしつこく指導されていたが、貴族院内の目立った情報は細かに報告するように。体に気をつけて楽しんできなさい」
「かしこまりました、父上」

義父様との話を最後に、ヴィルフリート兄様は転移陣へ乗り込んだ。
・・・神官長からの指導って何だろうね?

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