10歳の冬(2)

話が一段落したところで、盗聴防止の魔術具を返すよう促される。

「さて、本題に入ろう。君の側近についてだ。君から聞いていた子供部屋にいた二人は背景の調査が終了した。側近の打診をしたところ、両家とも色良い返答があったので希望通り側近に加えよう」
「二人とも大丈夫だったんですね!貴族院へ行くのに見知らぬ人ばかりでは不安ですから、安心しました」
「君と同学年になるからな。長く支えてくれるだろう」

子供部屋に行く前に相性の良い子を探すよう言われていたので、わたしなりに信頼できそうな子を選んで精査をお願いしていた。
文官見習いと騎士見習いを確保できたね。

「あとは貴族院に行っていた見習い達だが、選出は我々に任せるということで良いのだな?」
「はい。リストは見せてもらいましたが、名前だけ見ても分からない人ばかりでした。わたくしの希望としてはフィリーネ、ローデリヒ、ニコラウスの三人でしたけど・・・」
「ローデリヒとニコラウスはダメだ。フィリーネは下級貴族なので本来領主一族の側近にはなれないが、君の印刷業を補佐することを考えたら丁度いいのではないか。側近の打診をしておこう」
「ありがとう存じます」

フィリーネとローデリヒはわたしが眠っている間もお話を集めてくれていた。本を増やすうえで是非とも抱え込んでおきたい人材だったんだけどなぁ。

ニコラウスは明るい栗色に薄青い瞳の可愛い弟。
派閥が違うから近付かないように言われてたけど、そもそも子供部屋を居心地のいい場所にしようと思ったら特定の誰かを避けて話すなんてわたしには無理だった。
「ローゼマイン様は私の姉上なんですよね?」とお父様そっくりの瞳でキラキラ見つめられたら、無視なんて絶対無理!冬の間に少しずつ仲良くなってしまった。
だから側近希望のリストに一応名前を加えておいたんだけど、ニコラウスとローデリヒはやっぱり無理だったね。派閥って面倒くさいなー。

「春を寿ぐ宴までに側近を決めて顔合わせをする。君が目覚めたことは冬の社交の中で広まっているが、宴の席で正式に顔を出すことになるので周りを側近で固めて守らせたい」
「ではあまり時間がないですね。わたくしの方はいつでも構いませんから、顔合わせの調整はお任せします」



そして数日後、側近の打診を承諾してくれた子達がわたしの部屋に集められた。

護衛騎士はコルネリウス兄様、アンゲリカ、ダームエルが以前からの続投。そして女性騎士のユーディット、レオノーレが加わった。
子供部屋からは中級貴族のマルセルが来てくれた。赤茶の髪に青い瞳の男の子だ。
マルセルは活発な男の子達を上手く誘導し、外の訓練場へ連れて行ったり勉強の場に戻して座らせたりと、目立たないながら皆のまとめ役をしていた。その働きぶりがダームエルと重なりわたしの目に止まった。親は中立派だったので、側近の打診を受けてもらえたようだ。


側仕えは成人のリヒャルダ、オティーリエに見習いのブリュンヒルデ、リーゼレータが加わった。
ブリュンヒルデには流行りの衣装について情報提供してくれていたお礼をする。流行を作りたいのだと熱心に訴えていたので、全面的にお任せしよう。
そしてリーゼレータはアンゲリカの妹だった。アンゲリカが無事に卒業できたのはわたしのおかげだと大変感謝された。ギリッギリの成績でも卒業できて良かったねアンゲリカ・・・。


文官はオティーリエの息子のハルトムート、下級貴族のフィリーネ、子供部屋からヘートヴィヒに来てもらった。
ヘートヴィヒは黒い髪に茶色の瞳をしたつり目の美人さんだ。黙々と子供部屋に置いてある本を読み込んでいる姿に好感を抱き声をかけた。わたしが新しく始める勉強法にいち早く食いつき横から手伝ってくれていたので、周りからは既に側近入りしたように見える働きぶりだったと思う。


子供部屋にいた二人は本当に顔合わせだけで、部屋に戻ってもらった。
正式に側近として仕えるのは貴族院に入ってからだからね。


「改めて皆様お集まりくださってありがとう存じます。わたくしが目覚めるのを待っていてくださった方もいて、嬉しく思っています。来年は一緒に貴族院に行くことになるので色々と教えてくださいね。この後の予定として、春を寿ぐ宴に出た後は神殿へ移ります。わたくしには神殿長としての仕事がありますから。わたくしの生活拠点は神殿ですから、忌避感が強い方は今のうちに仰ってください。お互いのためになりませんから、側近入りは取消しましょう」

わたしの言葉に集まっていた皆が息を飲む。お互いの反応を伺うように目線を動かしていたものの、発言する者はいなかったので神殿も大丈夫みたいだね。側近として歓迎するよ!

・・・わたしはまず皆の顔と名前を一致させないと。

側仕えの教育をリヒャルダに、文官をまとめるのをハルトムートにお願いし、騎士のことはダームエルにお任せした。



宴の衣装選びには早速ブリュンヒルデとリーゼレータが張り切って意見を交わしていた。
冬の間にもちょっとだけ背が伸びていたので、お直しついでに花の飾りをつける提案をするとブリュンヒルデが食い付いてきた。
流行を作りたいと言っていたので、花飾りを使った衣装作りを考えてもらうことにした。

「ローゼマイン様のこちらの衣装は目覚めてから新しく作ったと聞いておりましたが、冬の間に背が伸びたのですか?」

リーゼレータが不思議そうに聞いてきたので、わたしは胸を張って答える。

「そうなのです!フェルディナンド様に言われたことを実践したら、止まっていた成長が一気に進んだようです。貴族院に行くまでにシャルロッテに並ぶのが今の目標ですわ」

実際シャルロッテに追いつくにはまだまだだけどね。「そんなに伸びるのですか?」と驚いているリーゼレータが可愛いので、期待していてくださいませと返しておく。
冬の間は奉納式でたっぷり魔力を使ったのと、意識して魔石に魔力を流すようにしていたので成長に効果があったらしい。



「ローゼマイン様、シャルロッテ様からお茶会のご招待が届きました。明日の午後とのことですが、いかがしましょう?」
「特に予定はなかったわね?参りましょう」

この前約束した兄妹のお茶会だね。
ヴィルフリート兄様から貴族院のことを教えてもらおう。

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