母娘のナイショ話(1)

神官長室で執務のお手伝いが終わり、そういえばと気になっていたことを聞く。

「シャルロッテから聞いたのですが、わたくし魔術訓練をする予定があるのですか?それも貴族院の予習の一貫でしょうか?」

神官長はこめかみをトントンと軽く叩くと、盗聴防止の魔術具を渡してきたので握りこむ。


「予習とは関係ない。君には近々エルヴィーラのもとで淑女教育を集中的に学んできてほしい。魔術訓練の必要性はその後話そう」

やけに口が重い神官長の態度に眉が寄る。何か隠しごと?

「社交の方の教育は少しずつ進めているようだが、母娘が二人きりで教える類の教育もある。私には口出しできない分野だ」
「あぁ、なるほど」

いわゆる閨教育とかその辺?
たしかに日本での知識しかないし、魔力があるこの世界では事情が変わってくるのかもしれない。
常識のすり合わせは大事だ!


「君が勘違いしないよう教えておくが。君がアウブ夫妻の養子になった時点で教育の責任者はフロレンツィア様になっている。普段の生活の場が神殿なので通常の教育は後見人として私がみているが、淑女教育などはフロレンツィア様の領域だ。しかしあの方は既に三人の実子の教育に手一杯で、君に割ける時間がなかった。そのため、フロレンツィア様からエルヴィーラへ教育を依頼するという形になっている。あまり外聞の良い話ではないので、周囲に口外しないようにしなさい」

要は実母から淑女教育を受けるってだけなのに、外聞的にはアウト?
養子縁組すると実家の影響力が及ばないようにするのが貴族社会の普通なのかな。
わたしとしてはフロレンツィア様は二人きりで話したこともないし、母親って感じはしないんだけど・・・。


「かしこまりました。人には話さないよう気をつけます」


養母と養女の仲に亀裂を入れるような行いは慎もう!

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