小山を消すよ(3)
領主会議中に神官長とノルベルトが何度か貴族院の寮まで呼び出されていたけど、大きな問題は起こらなかったようだ。
報告会をするとのことで、領主候補生三人も呼び出された。初めての報告会に緊張して頬を赤くするシャルロッテが可愛い。
領主一族とその側近、騎士団と文官の上層部が集まって報告会が始まった。
今年の順位は12位。まだ目立った流行の発信はしていないけど、子供達の成績向上が評価されて一つ上がった。
神官長が政変前と後で講義の過程について変化があったことを説明する。
要約すると質が低下したから、各部署は新人をしっかり鍛えてあげてねってことだ。
流行のアピールは手応えを感じたようだ。問い合わせの多かったリンシャンと植物紙は、次の年から取り引きを開始しますと答えて退散したという。予想以上の領地に関心を持ってもらえたらしく、会食やお菓子作成の手が足りなくて急遽料理人が追加される騒ぎだったみたい。
「次に・・・次期ツェントが正式に発表されたので伝えておく。候補が二人いたことを知らぬ者もいるだろうから、大まかに説明しておこう。今のツェントには第一夫人が生んだ王子が二人いて、能力的に甲乙つけがたかった。そのため、順位が第1位の大領地クラッセンブルクに全属性の年頃の姫がいるので、姫と婚約した方が次期ツェントと言われていた。この度の領主会議で弟のアナスタージウス王子と姫君の婚約が発表され、アナスタージウス王子が次期ツェントと決まった。兄のジギスヴァルト王子は中領地のアウブとなるそうだ」
義父様の長々とした話を聞いても、王族の事情なんて他人事すぎて、へーそれで?といった感じだ。
周囲の大人も皆そんな反応だったけど、隣に座っていたヴィルフリート兄様は「アナスタージウス王子か・・・」とちょっと嫌そう。何かあったのかな?
「アナスタージウス王子について補足説明をしておく。ヴィルフリートが親睦会で対面した際、エーレンフェストは養女を聖女に仕立てないといけないほど困窮しているのかなど貶めるような言葉を掛けられている。王族はエーレンフェストに対し悪印象をお持ちの可能性がある。そのため、今後ローゼマインの功績を称える時に聖女の言葉を用いることを禁ずる。入学前からローゼマインに注目を集めてしまったのは悪手だったな」
そうだったー!ヴィルフリート兄様からそんな話を聞いてたね。すっかり忘れてたけど。
そんな性格の悪そうな人が次の王様なんだ。なんか嫌だな・・・。
「最後にこちらも婚約の話だ。アーレンスバッハから二人の花嫁がやってくる。ランプレヒトとフロイデン、二人の親兄弟は準備しておくように」
えっ!ランプレヒト兄様にアーレンスバッハからお嫁さんが来るの!?
旧ヴェローニカ派もザワついている。また派閥争いが再燃しないといいけど・・・。
不穏な空気のまま報告会は閉会した。
「フェルディナンドとローゼマインは私の執務室へ移動だ。神殿長と神官長に話がある」
義父様に呼ばれたので移動する。
執務室までは側近達もぞろぞろ着いてきたけど、人払いがされ部屋に入るのは義父様、お父様、神官長とわたしの四人だった。
義父様はスイッチが切れたようにぐてーっと座った。今回はアーレンスバッハに振り回されて大変だったのだと、お父様が苦笑している。
「花嫁のゴリ押しも凄かったが、ヴィルフリートを婿にと求められたのだ。私は何て反応すれば良かったんだ!?」
「そんな話もあったのですね。義父様はヴィルフリート兄様が婿入りするのは反対ですか?」
「む?反対かと言われると・・・従姉だしなくはないだろうが・・・。今までのアーレンスバッハとの関係、ゲオルギーネ姉上の娘ということを考えると、とても賛成する気にはなれん」
政治的判断というより、個人的な悪感情からきてる感じかな?
お父様はやれやれって反応だし、神官長は・・・いつも以上に徹底した無表情だけどどうしたの!?
「神官長?凄い顔してますけど何かありました?」
「凄い顔は余計だ」
ひんやりした笑顔が近づいてきて、ぐにっと頬をつままれた。
「ヴィルフリートの婚約話は保留にしておけば良いのではないか?魔力が釣り合うかもまだ分からんだろう」
「でもお相手のディートリンデ様は四年生でしたよね?年齢的に何年もお待たせするのは不実と責められるのではないでしょうか。ちなみにですが、ヴィルフリート兄様はディートリンデ様をおばあ様に似て美しい、優しく思いやりに溢れた方とかなり好意的でした。婚約の話をしたらきっと前向きに考えると思いますよ」
わたしは話ながら、ヴェローニカ様に似てるという話は神官長の地雷だったと気付いた。顔色を伺うと小声で「なんと愚かな」って言ってる!冷気が漂ってきて寒いよー。
「あーフェルディナンド?其方はディートリンデ嬢と面識はないよな?」
義父様も神官長の様子がおかしいことに気付き慌てている。
「面識などあるわけなかろう。会ったことも話したこともない。・・・わたしのことは気にするな」
面識ないなら何でそんなに不機嫌になっているんですかー!?
「とにかく!ヴィルフリートの婚約はまだ早いので保留!二人は境界線で星結びの儀式を行ってもらうので、その予定でいるように!」
「かしこまりました」
義父様が強引に話を終わらせた。
明らかに神官長はディートリンデ様に思うところがありそうだったけど、怖いから薮をつつくまねは止めておこう。