星結びと情報共有(1)

城の魔術訓練場は前回使った時とは違い、わたし、シャルロッテ、神官長の側近がいるので人でいっぱいだった。前はダームエルとブリギッテしかいなかったのにね。
ちなみに、私が魔術訓練をする理由はちゃんと皆に話してある。溶けきらなかった魔石の塊をユレーヴェで治療したからだと。
もちろん、誰のユレーヴェかなんてことは話題にしてない。それは勝手に想像してもらおう。


「まずはシャルロッテ、こちらの魔石に魔力を吸わせて染めなさい。気分が悪くなったら言うように。ローゼマインは騎獣を出して、魔力の動きを試してみるといい。何が起きるか分からぬので側近は後ろに下がり、盾が出せるように心構えをしておきなさい」

それぞれ指示された通りに動き、わたしは誰もいないことを確認してまずは普通にレッサー君を出した。

「いつもの大きさなら問題なく出せます」
「では、大きさを変えてみなさい」
「はい。まずは倍くらいの大きさにしてみますね」

後ろに四人乗せるくらいの大きさを想像してレッサー君に魔力を流したところ・・・。

「あっ!」
「きゃあ!」

想像の三倍くらいまで大きくなってしまった!
慌てて巻き込まれた人がいないか確認する。

「誰もぶつかっていませんか!?」
「大丈夫です。後ろに下がっていて良かったです」

コルネリウス兄様がすぐにレッサー君の周囲を確認してくれた。
魔力の流れが良くなりすぎてるってこういうことかぁ。
蛇口がゆるゆるの水道をになってるみたいで、思ったように加減ができない。

「フェルディナンド様、ちょっと流したつもりがどばっと流れてしまうのはどうしたら良いのでしょう?」
「こればかりは何度も繰り返して感覚を掴むしかない。魔力を細く絞るイメージで今度は小さくしなさい」

言われた通り魔力を流す。今度は小さくなりすぎ。また大きくする。
何度か繰り返すうちに、細く絞りながら魔力を流す感覚は掴めた。


「叔父様、魔石が染まりました」
「では石に魔力を注ぎ、膨らませる様子を想像しながら石を変形させなさい。最初は大きさが変えられれば良い」
「はい」

シャルロッテが魔力を注いでいるようだけど、中々大きさは変わらない。わたしが最初に形を変えたとき進みが早いと神官長は言っていた。シャルロッテの進み方が領主候補生の平均なら、確かにわたしは目立ちそうだ。ちょっと加減した方がいい?早く貴族院の図書館に通うためには、早く終わらせる方がいいのかな。あとで神官長に確認しよう。


「フェルディナンド様、騎獣の大きさはなんとかなりそうです」
「そうか、では次に移ろう。ユストクス」
「はっ」

ユストクスが魔石の入った袋を持ってきた。

「この魔石を大きいものから順に染めていきなさい」
「大きい方からですか?」
「君は無造作に魔力を叩きつけるのは得意だが、繊細な動きは苦手だろう。金粉化させないよう染めていきなさい。ハルトムート、補助を」
「かしこまりました」

わたしの横にハルトムートが立ち、ユストクスから袋を受け取った。

「一番大きいのはこちらですね。・・・とてもすぐには染まらなそうな大きさですが」
「そうなのですか?」

わたしの拳ほどの大きさの石に魔力を流すと、透明だった魔石が薄い黄色に染まった。

「・・・できました!」
「は、はやかったですね!さすがローゼマイン様です。シュツェーリアの御力を強く感じさせる貴色に染まる魔石が大変美しく完璧な仕上がりです!」
「ありがとう存じます?」

ハルトムートの大袈裟な褒め方に疑問を感じて、周囲を伺ってみる。

わたしの側近は誇らしげに胸を張っているけど、シャルロッテの側近は「あの魔力量は・・・」とざわついている。

場の空気がおかしなことになってしまい神官長に視線で助けを求める。

「ローゼマインはその魔力量と流行を作り出す力を評価されて領主候補生となったのだ。一目見て真価が分かる能力が備わっているのは当然だろう。理解したら続きに取り掛かりなさい」

ひんやりした声で皆を黙らせると、さっさと続けろと態度で促す。

「わたくしはお姉様を目標に頑張りますわ」

シャルロッテが空気を読んでにっこり宣言してくれたおかげで、側近達も貴族らしく表情を取り繕った。


ハルトムートに次の魔石を渡してもらい染めていると、シャルロッテが手から離して魔石の形を変えれるようになっていた。

三つ目の魔石にも同じ要領で魔力を流すとパァン!と魔石が弾けた。

「ローゼマイン様!?」
「大丈夫ですか?」

慌ててハルトムートがわたしに怪我がないことを確認し、護衛騎士達も駆け寄ってくる。

「大量に魔力を流しすぎるとそうなるので、魔石の大きさによって流す魔力の量を加減するようにしなさい。始めは少なくして様子を見ながらだ」
「はい」

神官長に言われた通り、同じくらいの大きさの石に今度はもっと慎重に魔力を流す。今度は成功したけど、もう一回り小さくなるとまた失敗した。何度か成功と失敗を繰り返しているうちに感覚は掴めてきたけど、とにかく小さめの魔石になるとすぐ金粉化してしまうのには困った。

「シュタープが得られれば細かい調節もしやすくなるので、それまでは自力で制御できるようにしておきなさい」
「はい・・・。シュタープとはそういう役割もあるのですね?」
「神の意志・・・シュタープとは、己の魔力を扱いやすくして神に祈りを届けやすくするためのものだからな」
「あぁ、聖典にも初代王が神に与えられた話が載ってましたね」

自分の魔力を持て余していた王に神が与えたって書いてあったね。まさに今のわたしと同じ。多すぎる魔力は扱いに困るんだよ!

わたしが金粉を作成してしまっている間に、シャルロッテは魔石の大きさを自由に変えれるようになっていた。

「今日のところはここまでだな。シャルロッテは自分の騎獣をどのような形にするか考えを固めておきなさい」
「シャルロッテ、わたくしのレッサー君の中に乗ってみませんか?後ろの座席も使いやすいよう工夫がありますから、ぜひ参考にしてもらいたいの」
「まぁ!よろしいのですか、お姉様?」
「もちろんでしてよ。それにわたくしと同じレッサー君にするのはどうかしら?姉妹でおそろいなんてとっても可愛いと思うのよ!」

レッサー君は可愛いよ!二台並んでたら遊園地みたいでもっと可愛いんじゃない?という思いを込めてお勧めしたのだけど、シャルロッテの側近が飛んできて「シャルロッテ様にお似合いの騎獣は熟考を重ねられた方が・・・」「グリュンを乗りこなせるのは、ローゼマイン様だけです」「我が家にシュミルがおりますから、参考のために連れてきましょうか」と、レッサー君を回避しようと必死になっている。

皆ひどくない?わたしの側近にレッサー君を擁護してもらおうかと思ったけど、そっと目を逸らされた。なんで!?


「シャルロッテ、君の騎獣をこんな醜悪な形にすることは許可できぬ。もっと周囲に受け入れられる動物にしなさい。君は領主の子だから獅子でも構わんがな。よく考えるように」
「かしこまりました、叔父様」

シャルロッテは神妙に頷くと、わたしに向かってにっこり笑った。

「お姉様、わたくしのことを気遣っていただいてありがとう存じます。参考のために中を見てよろしいですか?」
「えぇ、どうぞ!座ってみてくださいませ」

護衛のマリアンネと一緒に乗り込んだシャルロッテは、物珍しそうにあちこち視線をやっては、自分の中に落とし込んでいるようだった。騎獣を作る時にしっかり想像できないと反映されないからね。
その後一度降りてもらい、大きさを変えて再び乗ってもらう。
シャルロッテの乗り込み型が上手くできれば、エーレンフェストの流行として堂々とできるね。頑張って、シャルロッテ!



後日。

可愛いシュミルの乗り込み型ができましたと報告され、複雑な思いをするわたしだった。

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