星結びと情報共有(2)


星結びの季節。
下町ではフーゴとエラが星結びの儀式をするので、当日はニコラが一人で調理を行うとあって少しバタバタしていたようだ。
儀式の後は新郎新婦からたくさんお礼が返ってきてほっこりした。


そして貴族街での星結びの儀式前にわたしは驚きすぎて呼吸が止まるかと思った。

「えっ!?アンゲリカとエックハルト兄様は婚約しているんですか?本当に?いつから?」
「・・・なぜ今頃そんなことを知ったんだ。誰も教えてなかったのか?」

エックハルト兄様がもの凄く呆れた顔をしている。
アンゲリカは可憐に微笑み首を傾げているけど、これは何も考えてない時の顔だよね!
報告くらいはしようよ、アンゲリカ!

「申し訳ございません、ローゼマイン様。姉の性格を知っているわたくしがお話しておくべきでした」

リーゼレータがとっても恐縮している。まさか婚約の報告をしていなかったとは、思いもよらなかったようだ。

報告しない方もそうだけど、側近達と話をしてても一切その話題が出なかったことも凄いよね!?

「気が利かなかったわたくしにも非がありますわ。卒業式のエスコートは、エックハルト兄様でしたのね?」
「はい、その通りです。わたくしも卒業式当日に知り驚きました」

頬に手を当て斜め下を見ながら微笑むアンゲリカ。
まるで恋する乙女が思い出を語ってくれてるような情景だけど、言ってることおかしいからね!なんでアンゲリカも当日まで相手を知らなかったの・・・。

「・・・聞きたいことはいくつもありますが、今は時間がありません。とにかく、アンゲリカは婚約者がいるから社交の場には参加せず、わたくしの護衛をするということですね」
「はい、そうです!婚約者がいるって素晴らしいですね」

アンゲリカとエックハルト兄様は上機嫌で護衛の任務についていた。二人が満足してるなら、もうそれでいいよ・・・。

貴族街での星結びの儀式は何事もなく終わった。


そして翌日。ランプレヒト兄様から花嫁について話をしておきたいとオルドナンツが届いたので、何度かやりとりして家族会議という形になった。
婚約者ということでアンゲリカも参加できて嬉しそうだった。あくまで、護衛ができることを喜んでいるのであって、婚約者待遇には何も感じていないところが残念なところだよ。


ランプレヒト兄様の話としては、お嫁さんは悪い娘じゃないからフロレンツィア派に入れてあげてってことだった。

そしてわたしは接触しちゃダメって家族から厳命された。迂闊にポロポロ情報を落とされても困るからって。
どんなお嫁さんなのかは、あとでお母様に教えてもらおう。



境界線上で結婚式をするため、大きくしたレッサーバスに人や物や神具など大量に載せて出発する。
ライゼガングに泊まるため側近は親戚筋を優先した。

領主一族からは領主夫妻、ヴィルフリート兄様、シャルロッテも参加する。

それぞれの護衛騎士や側仕え、もちろん新郎の家族もいてそのための人や荷物も増える。
とても大規模な移動をしたうえでの儀式となるようだ。


境界門に着き、フラン達が急いで祭壇の準備を整え終えた頃、エーレンフェスト、アーレンスバッハの人達が到着した。
領主同士の長ったらしい挨拶を眺めながら、アーレンスバッハの領主一族を観察する。

アウブ・アーレンスバッハの後ろにいた派手な美少女が微笑みながらヴィルフリート兄様に挨拶をする。

「ヴィルフリート、お会いしたかったですわ。婚約の打診を断られたと聞いて、わたくしユーゲライゼの加護をいただいてしまったのかと驚きましたのよ」
「一年生の私にはまだ早すぎると、アウブ・エーレンフェストが判断されたのです」
「そうですの」

美少女のディートリンデ様が悲しそうな顔をすると、悪いことをしているのはこちらだという気分になる。
義父様はそっと目を逸らしていた。

その後、わたしとシャルロッテも初対面の挨拶を交わす。
わたしの心配をしていたと聞いたけど、特に声を掛けてくることはなかった。



神官長の采配で星結びの儀式は始められ、わたしは待合室に残された。
そこで初めてアウレーリアと独り言と言い訳して会話をしたけど、領地の情勢に不安を抱えているのは我々だけではなく。当然、花嫁二人も不安を感じながら嫁いでくるのだと、当たり前のことに気付いた。

「神殿長、ご入場ください」というフランの声を聞き、わたしは花嫁達にニコリと笑い扉へ向かった。
せめて本物の祝福をすることで、二人の幸せを願う気持ちに偽りはないと知ってもらおう。


「高く亭亭たる大空を司る、最高神は闇と光の夫婦神よ 我の祈りを聞き届け 新しき夫婦の誕生に 御身が祝福を与え給え 御身に捧ぐは彼らの想い 祈りと感謝を捧げて 聖なる御加護を賜わらん」

最高神の夫婦神の祝福を祈れば、金と黒の光が渦巻き重なって弾けた。
派手にならないよう予め魔力を入れて調整しておいた魔石を使ったものの、祈りの込められた美しい祝福になったと思う。



「素晴らしい祝福であった、エーレンフェストの聖女」
「恐れ入ります」


アウブ・アーレンスバッハが笑みを見せたけど、その視線は神官長へ向けられていた。

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