改革と親睦会(2)

夕食の時間が近付き、わたくしも隠し部屋を出て支度を整えました。
お兄様とヒルシュール先生が一緒にいた状況について情報収集をお願いしていたのですが、お兄様の側近はあっさり教えてくださったようです。
叔父様からヒルシュール先生へ届いた手紙に書いてあるお姉様評があまりにも意味不明だったので、応接室にてお兄様に確認をされていたそうです。

・・・先生のお気持ちも分かりますね。お姉様の情報を箇条書きされたら、存在を疑ってしまいそうですわ。

理由が分かってスッキリしたところで、移動しましょう。




「夕食の後は、わたくしとお姉様の側近を発表します。その後わたくしから皆様にお話しておきたいことがございますの。ですから、食後もその場に残ってくださいませ」

夕食のために食堂へ集う皆様に伝え、席に着きました。


「幾千幾万の命を我々の糧としてお恵み下さる高く亭亭たる大空を司る最高神、広く浩浩たる大地を司る五柱の大神、神々の御心に感謝と祈りを捧げ、この食事を頂きます」

お兄様のお祈りに続いて、皆が祈りを捧げます。食事の美味しさにあちこちから感嘆の声が上がっていますね。お姉様の料理人はさすがですわ。

「わたくし貴族院での食事が毎年とても楽しみですの」
「今年は一段と工夫がみられますね」

わたくしの側近もここでしか食べれない味に興奮気味です。気持ちは分かります。


食事の後は側近の発表です。既に分かっているでしょうが、こういうものは形を見せて側近の自尊心を満たすことが重要です。
わたくしとお姉様の側近を発表し落ち着いたところで、再び声を上げます。


「先日わたくしは、アウブ・エーレンフェストより次期領主の内示をいただきました。そのうえで、皆様にお話しておきたいことがございます」

突然の発表に寮内がざわつきます。
お兄様、お姉様とその側近は落ち着いていますね。動揺しているのは情報伝達に障りのある派閥の方々のようです。

「エーレンフェストは少し前まで大きく派閥が分かれ水面下での争いが繰り返されたため、貴族の数も大きく減りました。ですが、旗頭は既に失われ、不毛な争いを終息する転換期が今は訪れています」

わたくしは意識して旧ヴェローニカ派を親に持つ子供達の座るテーブルに目を向けました。

「ここにいる皆様は、少なからず子供部屋で学んだはず。派閥を越えた競走の楽しさと充実感を。領内に戻れば親の目があり難しいこともあるでしょうが、ここは子供だけの貴族院です。わたくしはここにいる全員が一丸となって、エーレンフェストの影響力を上げるため成績に反映させていきたいと考えておりますわ」

急に派閥を忘れろと言われても、納得できない方は多いでしょう。主にライゼガング派と旧ヴェローニカ派から反発の声が上がります。

「彼等を信用などできません!」
「この寮内の空気をみて一丸となれと言われるのか!?」

少なくない非難の声が上がったところで、お姉様が立ち上がりました。

「皆様はずいぶん派閥争いがお好きですのね。ですが、国内ではエーレンフェストなど見るべきものもない片田舎と扱われていることは当然ご存知でしょう?その小さな領の中でいがみ合っている場合ではないと考えることはできませんの?」
「それは・・・」
「貴族ならばその時の利を考え、敵と手を組むことも出来なければなりませんわ。次期領主が今後のエーレンフェストを良きよう改革しようとしているのに、歯向かうばかりなんて・・・」

ねぇ、シャルロッテ?とお姉様は艶やかに微笑まれます。わたくしを立てるため、敢えて煽るような物言いをしてくださっているのですわ。迫力にのまれ、皆が押し黙ってしまいました。


「そうだわ!各々が成績を上げるためにチーム分けをしませんか?」
「チーム分けですか?」

お姉様の提案に自然と皆が耳を傾ける姿勢をとります。

「一年生、二年生、騎士見習い、文官見習い、側仕え見習いで分かれて一番成績の良かったチームには、カトルカールのレシピを進展するというのはどうでしょう?」

今まで自由に食べることのできなかったお菓子のレシピとあって、皆の目の色が変わりました。
まずはやってみましょうと、成績の判断基準や勉強方法など話し合っていると、段々派閥に関係なく意見が飛び交うようになりました。

わたくしが見たかった光景がここにありますわ・・・。


「明日の朝、対策会議を行う。勝利は二年生チームのものだぞ!」

お兄様がどこか吹っ切れたように二年生を鼓舞します。

「領主候補生が二人いる一年生チームの勝利は揺らぎませんわよ」

わたくしも同期の一年生を煽ります。お姉様がニコニコ頷き、皆にも笑顔が浮かびました。


こうして新たなエーレンフェスト寮の歩みが始まったのです。

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