連続します、一発合格(3)

座学が全て終わっていると、午前の時間を持て余すのだと知りましたわ。図書館に行きたいと心から嘆いていたお姉様は、手慰めにと来年の参考書を作り始めてしまいました。もちろん、他の一年生も便乗します。
来年も好成績が残せそうですわね。


昼食後は初めて騎獣服を着ての実技です。
わたくしとお姉様は乗り込み型の騎獣ですからスカートでも構いませんが、周りに合わせることが大事ですからね。
騎獣用の魔石を忘れずに腰に下げ出発です。


小広間に集まった生徒達がお互いの魔石を見せ合っています。わたくしとお姉様は互いの魔石を既に見ていますから、小広間の様子をなんとなく眺めていました。


「はいはい、お静かに!」

騎獣作成の実技はフラウレルム先生という女性教師が担当のようです。高めの声が特徴的な、アーレンスバッハの寮監ですね。
エーレンフェストへの心象が不明ですから、注意を払っておいた方が良さそうです。

初めは魔石の大きさを変えるところから、それができれば自由な形に変えるという流れで進みます。

周りの様子に合わせながら、わたくし達も形を変えていきます。


「大きさを自由に変えられるようになった人は、騎獣の形に変化させていきましょう。ご自分の家の紋章に使われている動物を使うことも多いですし、乗りやすさを考慮して、馬の形の騎獣も多くみられます」

わたくしは魔獣のシュミルです。可愛いからと勢いで決めてしまいましたが、大丈夫でしたかしら?

「シャルロッテ様とローゼマイン様は、もうどの動物にするか決めましたか?」

後ろから声を掛けられ振り向くと、ギレッセンマイアーのルーツィンデ様でした。

「まぁ、ルーツィンデ様、ごきげんよう」
「ごきげんよう」

ニコッと笑ってご挨拶してくださいます。上位領地の横柄さは感じられないお人柄に安心しました。

「実はわたくしとシャルロッテは、領地ですでに騎獣に乗っていましたの。ちょっと変わった形なので、皆様の様子を伺っておりましたわ」

お姉様の返答に、ルーツィンデ様の目が好奇心からか輝きます。

「まぁ!すでに作っていらしたのね、凄いわ。わたくし参考のため見せていただきたいのですけど、よろしいかしら?」
「えぇ、それではわたくしの方から・・・」

お姉様の魔獣は少し独特なようですから、まずはわたくしのシュミルからお見せしましょう。

魔石をシュミルの騎獣に変えると「可愛い!」と、ルーツィンデ様だけでなく周りにいた女の子達も集まってきました。

「シャルロッテ様、こちらはどうやって乗るのでしょう?」
「翼がありませんけど、騎獣なのに飛べないのですか?」

次から次へと質問が続き慌ててお答えしていると、フラウレルム先生が目を釣りあげて近付いてこられました。

「12番!何を騒いでいるのですか。ここは遊び場ではありませんのよ!」

甲高い声で怒鳴られ、わたくしは困惑します。何も遊んでいたつもりはないのですが・・・。

「フラウレルム先生、お言葉ですがシャルロッテは遊んでなどいません。わたくし達は領地で実用性の高い騎獣を考案したので、披露させていただいていただけです」

お姉様がすかさず言い返します。乗り込み型を作ったお姉様としては、遊びと言われて黙っていられなかったのでしょう。

「んまぁ!ローゼマイン様は騎獣を出してすらいないではありませんか!」
「では、今わたくしの騎獣を出します」

お姉様がいつもの騎獣を出すと、わたくしの周りにいた女の子達が困惑した空気を出します。

「・・・ローゼマイン様はシュミルではありませんのね?」
「確かにシャルロッテ様と形は同じですけど・・・」
「乗れない騎獣など認められませんよ!空も飛べないではありませんか!」

フラウレルム先生は変わらず甲高い声で怒鳴るので、取り敢えず乗れることを証明しようとわたくしは乗り口を開きました。

「まぁ!開いたわ!」
「そうやって乗り込みますのね」

ルーツィンデ様がキラキラした瞳で覗き込んでこられます。
好意的に見ていただけているようで嬉しいですわ。

「フラウレルム先生、飛んでご覧に入れてもよろしいですか?」
「・・・よろしくてよ」

憮然とした声に大人げないものを感じながら、わたくしは上に飛びました。そのまま近くをぐるりと周ると後ろからお姉様も着いてきます。

静かに同じ場所に戻り「いかがでしょうか?」と、フラウレルム先生に聞こうとしたのですが。

「素敵だわ!フラウレルム先生、わたくしもこの形の騎獣を作りたいのですけど、よろしくて?」
「わたくしもシュミルにしたいわ。とても可愛いと思います」
「私は領地の紋章にしようかな・・・」

いつのまにか小広間にいた生徒達の注目を浴びていました。

「スカートのまま乗れて、でも武器は使えないので騎士には向かなくて、後ろに荷物も載せれますし・・・」

お姉様は嬉しそうに乗り込み型の利点と注意点をアピールしています。領地の大人達は苦い顔を見せるばかりでしたが、魔獣の姿を知らない一年生にはお姉様の騎獣でも強い抵抗はないようです。良かったですね、お姉様。


「・・・もう、よろしいです!シャルロッテ様、ローゼマイン様、騎獣で貴族院の上空を一周できれば、騎獣作成は合格です!」

わたくし達の騎獣を周りが先に受け入れてしまったので、フラウレルム先生は何も言えなくなってしまったようです。
・・・そもそも、何故そんなに敵意を向けられていたのでしょうか?

「参りましょう、シャルロッテ」

お姉様の美しい微笑みに応え、わたくしは騎獣を飛ばしました。二人で並んで冬の貴族院の空を翔けます。

初めて見た貴族院の全景に感激しました。高い山の上に突如として存在する貴族院は外界からの侵入を拒んでいるようにも見えます。各領地の建物や講堂も確認できました。横を飛んでいるお姉様もキラキラとした瞳であちこち視線をとばして楽しんでいるようですわね。


「騎獣作成は合格です」


図らずも、わたくしとお姉様は騎獣作成の講義を一発合格してしまいましたわ。

そして乗り込み型の騎獣が、女子生徒と一部の男子の間で流行ることになりました。

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