CASE5
国語準備室。
「終わりにしよう」
「……ぇ?」
銀八は教鞭を取る時と同じ口調でそう言った。
「…な、んで?」
辛うじて出た言葉はタバコの煙に紛れて消えてしまった。
秒針の音と校庭から聞こえる部活に励む声。
長い沈黙を破ったのは銀八だった。
「おめぇさ、俺のこと好きか?」
「っ、好きだよ!じゃなきゃ…」
あんな…と今までの事が脳裏をよぎる。
呼び出されれば何処でも服を脱いだ。
教室でもトイレでも公園でも、ここでも。なんでも。
「じゃあさぁ」
口から吐き出された紫煙が窓の隙間から外へ逃げていった。
そのまま煙草を灰皿へ押し込むと、ガタンと椅子を蹴って歩み寄ってくるから反射的に身を縮めたが後ろは本棚で退路はなかった。
目線だけは逸らしちゃダメだ!
本能がそう告げる。
「お前は、俺のこと愛してんの?」
「あ、い?」
「そ。お前は俺に愛されようと俺の頼みは全部聞いてくれたし尽くしてくれた。けど、お前は?俺の事愛してたか?」
「そんな、の!愛してるに決まって…」
どうしてだろう。
目を見てその言葉が言えなかった。
「だろ?」
そう言いながら頭をポンポンと撫でて優しく、でも拒否することを許さない手つきで腕を取り、廊下へ続くドアへと背中を押した。
「っ!せん、」
ドアを潜って振り返ろうとしたらピシャリと閉ざされてしまった。
二人の関係を絶ち切るかのように…。
溢れる涙が止まらない。
「せ、んせぇ…、せんせぇ…っうぅ」
ドアにすがり付いても声はおろか物音ひとつ返っては来なかった。
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