その日、コナンは朝から機嫌が悪かった。

 それは小学校に登校してからも変わらない。彼は机に頬杖をつき、不格好な座り方で、不貞腐れたような表情をしながら携帯の画面を眺めている。


「……ったく、放火に誘拐にひき逃げ……よくもまぁ毎日こんなに色々事件が起こるもんだ……」


 画面には、ネットのニュース欄が表示されていた。眺めるようにそれを見ながら、コナンは矢印キーを押して下へスクロールしていく。


「呑気なものね」

「ん?」


 そんなコナンを見て、隣の席に座っている灰原が、彼に冷たい視線を向けた。


「貴方の家に居候しているあの男。あんなに簡単に信用しちゃって大丈夫なの?」

「ああ。沖矢昴さんって言ったっけ? 大丈夫だって!!」

「だといいけど……それより、どうするつもりなの?」


 コナンが笑って受け答えをすれば、畳みかけるように質問を重ねる灰原。


「あ? 何が」

「皐さんよ。貴方、あの人を家から遠ざけるために、あの男を利用するとか言ってたけど……上手くいかなかったんでしょう?」

「あー……まぁな」


 灰原に言われたそれは、コナンが不機嫌な原因でもあった。

 普通の人が一人暮らしをするならまだしも、皐は睡眠障害を抱えて生活している。コナンも灰原も、皐が廊下や床で倒れて眠ってしまっているところを何度か目撃しているので、彼女が工藤邸で生活しているのは気が気ではないのだ。

 以前から一人暮らしをする皐を心配していたコナンは、何度か有希子と共に皐をロスへ行くよう説得しては失敗していた。昔から物静かな人で、どことなく儚い印象が強い人だから、二人で頼み込めば折れてくれると思っていたが、彼女は決して首を縦に振らなかった。

 だからと言って、諦めきれるわけもなく、今回、火事で家をなくした沖矢を工藤邸に居候させれば、コナンと同じように過保護な有希子が動いてくれると踏んだのだが――


――父さんに先回りされて、母さんを丸め込まれちまったんだよなぁ……


 そんな事を心の中で呟きながら、コナンは昨日の事を思い出していた。





 コナンが丁度、探偵事務所に一人でいる時だった。珍しく、新一の携帯に優作から電話がかかってきたのだ。


『もしもし?』

『ああ、新一か。皐の事で話があるんだが、少しいいか?』

『皐さん? ……ああ。あの人、ようやくロスに行く事にしたのか』


 父からの連絡と言うのには何か引っかかりを覚えたが、ようやく自分の努力が実を結んだかと思いきや。


『いいや、彼女はあの居候の青年と共に住むそうだ』

『はぁ!?』


 予想とは全く違う返答をされ、コナンは引きつったような声で叫んでしまった。

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