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愛=煩悩

05



食後の家族団らんは、絵麻が好きな時間。
それぞれ思い思いにくつろぎながら、ゆったりと会話を楽しんでいる。
絵梨も妹に付き合うように家族全員が余裕で収まる大きなソファに座って、適当に寛いでいた。
そんな時、椿が思い出したように話題をみんなに振った。

「そーいえばさー、きょーにー。今年ってどうなってんのー?」
「…はあ。ちゃんと主語を付けてしゃべりなさい、椿。」
「はいはーい。」
「島のこと、だよね?」
「さっすが、梓♪よくわかってんね!やっぱ俺らって一心同体?」
「…椿の考えていることなら大体わかるよ。」
「ちょうど、私もその話をしようと思っていました。」

『島』という単語に絵梨と絵麻は首を傾げたが、兄弟達は慣れた様に一斉にカレンダーを眺め出した。

「ああ、あなた達は初めてでしたね。私達は毎年夏休みになると、母所有の別荘へ行くのが恒例になっているんです。」
「べ、別荘ですか…!?」

右京の説明に、絵麻が驚いた声で聞き返す。

「ええ、離島にあるんです。ここからは少し遠いのですが、その分静かでいいところですよ。」
「ああ、それでさっき梓さんが『島』って言ってたんですね。」

一緒に驚いていた絵梨も漸く合点がいったように、島という単語で確認する。

「そーなの♪その島には海もあってねー!とーってもきれーなんだよ!」
「その島の一部をプライベートビーチとして、母さんが所有しているんだ。きっと君達も気に入ると思うよ。」

弥や受験勉強の前に一息ついている祈織も、絵梨達に島の素晴らしさを説明してきた。

「というわけで、旅行の日程をみんなで調整しようと思います。あなた達のご都合はいかがですか?」
「あの…私達も行っていいんですか?」
「何を言っているんですか。当然でしょう。」
「そーだよ!おねーちゃんがいないとつまんないよー!」

あなた達もという言葉に戸惑って聞き返した絵麻に、弥を先頭に兄弟達が参加するのが当たり前だと言う。
絵麻は嬉しそうな笑顔を見せた。
そんな妹を絵梨は優しい眼差しで見る。
男兄弟に戸惑っていた妹に、朝日奈の兄弟達は初めから家族だったように接してくれている。
それが絵麻にとってはとても嬉しいことのようで、積極的に家事をしたりたくさんコミュニケーションを取ろうとしたりしていた。
昴や侑介のようにあまり会話にならなかった兄弟達とも、今では自然と会話ができるようになっている。
そんな妹をすごいなと思う反面、羨ましいとはあまり思わなかった。
絵梨は、意識して兄弟達との間に壁を築いている。
相手にバレないように、だけど壊されることのないように。

だって、私は…

「…絵梨さんはいかがでしょうか?」

ぼんやりと妹との違いを考えていた絵梨に右京が確認を取ってくる。
どうやら絵麻は自分の予定を話し終わったようだ。

「私は…バイトがあるので、今回は…」
「えっ!?絵梨、行かないつもりー?」
「…」
「えー!?りぃちゃんも一緒に行こうよ。」
「…んー…でもねぇ…」

旅行に消極的な絵梨に、絵麻が不満そうに頬を膨らます。

「ねえ、絵梨ちゃん。」
「はい?」
「うちは兄弟が多いから、全員が集まるのが難しいってことは分かるんだ。だけど、調整がつくようなら是非一緒に行こうよ。君達がここに来て初めての家族旅行なんだし、絵麻ちゃんも弥も楽しみにしてるんだし。ね?」
「…はい。」
「よかった、ありがとう。」
「わーい!りーちゃんもいっしょ!!」

長男の雅臣に言われてしまったら、断れない。
絵梨が承知すると、弥が嬉しそうに飛びついてきた。
その体を受け止めながら頭を撫でる。
一層嬉しそうに笑顔を向ける弥に、絵梨も笑みを返した。


2014.10.09. UP




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夢幻泡沫