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問答無用の魔法

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「汐音ー!」
「椿さん。」
「ちょっといい?」
「はい、何でしょうか?」
「この後さー、暇?俺の部屋へ来ない?」
「…え?」

夕飯の片付けをしていた汐音に椿が声をかける。
突然部屋に誘われたことに驚いてマジマジと椿を見ていると、椿はニヤっと笑って彼女を見た。

「あ、汐音がえっろい顔してる★お楽しみな妄想してるとこ、悪いんだけどー。割と健全なお誘いなんだよねー。」
「え、えろい顔なんてしていません!妄想もしていません!!」
「あれ?してないんだ?まあ、俺としてはしてくれても全然問題ないんだけどねー★なんならその妄想、いつでも現実にしてやんよー?」
「つ、椿さんっ!!」
「ははっ、汐音の反応っていちいち面白いよねー♪…出会った頃と大違い。こんなに表情がコロコロ変わるなんて思いもしなかった。」
「…」
「いろんな汐音が見れて、俺は嬉しいけど★誘ったのは、アニメ。梓が主役の声を当ててる新作アニメが、今日から放送するんだよね。良かったら、汐音も一緒に見ないかなーと思って。」
「分かりました。お部屋、行きますね。」
「おー。ありがと★」

カチャカチャと食器を片づける汐音を、椿は嬉しそうに眺める。

いつまでも壁を作っているような雰囲気にもどかしく思ってたけど、いつの間にかそれも感じなくなったし。
きっと、ようやく俺に慣れてくれたんだよなー。
ただ話を聞いて頷くだけじゃなくて、自分の考えをはっきりと意見するようになったし。
俺のことを叱ったり、励ましたりしてくれたもん。
ホント、汐音ってばかーいいしイイコだよな。
猫っ可愛がりたいのはもちろんだけど、もうそれだけじゃない。
誰にも渡さない。


2015.11.12. UP




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夢幻泡沫